濃厚なお食事
ヤマメとそんなことをしてから1時間後。ヤマメは昼ごはんを机の上に並べていた。
ヤマメ「嗚呼…激しかったわ、ケン」
ケン「言い方が卑猥だな。あとその動きちょっと気持ち悪いからやめてくれないか?」
頬に両手を当てて、クネクネと腰を動かす。それを指摘されたヤマメは頬を膨らませていう。
ヤマメ「じゃあどんなのならいいの?」
ケン「ご飯食べさせてくれる態勢」
机に置いた茶碗に
ヤマメ「はい、アーン」
ケン「あーん」
箸先に乗せたご飯が口元まで運ばれてきたので、それを遠慮なく頬張る。
ヤマメ「どう…?美味しい?」
ケン「お、結構おいしい!」
ヤマメ「そう、それは良かったわ…」
ニッコリほほ笑むヤマメの目をジーッと見つめる。
ケン「…」
ヤマメ「…」
ケン「…」
ヤマメ「ケン…私を見てくれるのは嬉しいんだけど…」
ケン「…」
ヤマメ「ご飯何十回も噛みながら見つめるのは止めて。すっごい顎動いてて気になるから」
ケン「ん…そうだな」
やっとごはんを飲み込み、コップに注がれていた水を一気に飲み干す。
ケン「ふぅ…オカズとかは?」
ヤマメ「私を…」
ケン「食べ物でお願い」
ヤマメ「…今作るわ」
ケン「一緒に作ってくれててもいいじゃないか…」
ヤマメ「忘れてたのよ」
ケン「忘れないで欲しかったな~。オカズは大事なのにな~できれば肉類が食べたいな~」
する必要も理由もないが、頭を左右にカクカクと動かす。しかし、ヤマメはそれに気づいていない。
ヤマメ「野菜も食べないとだめよ」
ケン「えー」
5分程して、ヤマメが持ってきたのはステーキと、キャベツやプチトマトが飾られた野菜の集団だった。
ヤマメ「ちゃんと食べてね。明日もがんばりなさい」
ケン「は~い。そしていただきます」
ヤマメ「味の感想、教えてね」
ケン「………。全部美味しい」
ヤマメ「野菜に手を付けてないじゃない」
ケン「トマト嫌い。ナスビならいけたのに…」
それを聞くと、横に座っていたヤマメは何を思ったのかプチトマトを一つ掴んで口に入れた。そして、自分の頭を両手で固定し、突然キスをしてきた。
ケン「ちょっと…」
ヤマメ「ん…」
キスついでに、ヤマメの口から半分ほど潰されて食べやすくなったトマトが流し込まれてきた。ヤマメはそのままジッと動かない。「完全に食べるまで離さない」と言っているようだ。
ケン「んん…ん」
仕方ないので、多少苦さを我慢しながも半潰れのトマトを胃に流し込む。それと同時に口同士を離す。小さく細く、蜘蛛の糸のようなよだれが一本の線になって互いの唇をつないでいる。が、それをすぐに拭いとる。
ヤマメ「ぷふぅ…どう?美味しいかしら?」
ケン「唾液の味がする…でもなんかちょっと甘くなってた」
ヤマメ「ふふ…。本当は一緒に熱も感染させたんだけれど…」
ケン「俺に病気は効かないんじゃなかったか?」
ヤマメ「試しよ…その様子だと、本当に効いてないようだし」
ケン「どのくらいの熱だったの?」
ヤマメ「ん~。人間だと、発症して2時間後には死んじゃう超高熱」
ケン「ワォ…」
ありきたりな驚き方をする自分に、肩を竦めるヤマメは机に向かって箸を握る。
ヤマメ「…食べましょう」
ケン「おい、それ俺の箸だぞ」
ヤマメ「貴方のだから使うのよ?」
ケン「ふーん…じゃあ新しい箸頂戴」
ヤマメ「素手で食べて…ちゃんと拭いてあげるから」
ケン「はぁ、わかったよ…」
逆らっても持ってきてくれ無さそうだ。それに、取りに行くために立つのも少し面倒だし、箸がおいてある場所が分からない。諦めて、素手で食べる。
ケン(大丈夫。インドの方々だって素手でカレーだが、俺なら素手でステーキを食えるっ!)
熱々のステーキに手を伸ばす。タレがかかっていて、ユラユラと水蒸気を上げる肉塊を鷲掴みにして、獣のように噛り付く。
ケン「熱っ!熱熱熱!水水!」
ヤマメ「んっ」
ケン「!?」
水を口に含んだヤマメがまたもキスを迫る。自分を通して飲めとのことだそうだ。本当なら、それを無視してコップに水をついて一気飲みするところだが、水を入れた容器はヤマメの後ろに置いてあって、取りに行く余裕が無い。背に腹は代えられない、ヤマメを抱き寄せ、さっきよりも深いキスをする。と同時に水も頂く。
ヤマメ「んく…ん…」
口の中で冷たく、でもヤマメの体温で少し温くなった水が、暴れていた熱々の肉汁を鎮火する。
まさか、食事の度にこんなことをするのか?変な女性と出会ったしまったものだ。自分は、普通に水が飲みたい…。
実際に口移しってどうなんでしょうね。あと、二次創作ということで、あまり気にはしていませんでしたが、本家とこの作品のヤマメの口調がかなり違うんじゃないかと、今更になって思っています。
読者様につかの間の安らぎを
「kanisaku」