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ヤマメとの生活  作者: kanisaku
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縛っちゃう 続

  ケン「なぁ、縛らせてくれ」

  ヤマメ「良いわよ」

両手で持ったロープをビシッと張るケンの質問に、ヤマメはケンに後ろから抱き着いた状態で了承する。

  ケン「とりあえず離れてくれない?縛れない」

  ヤマメ「アナタの温かみを…あと1時間は感じてたいの…」

  ケン「そんな、『あと5分寝かせて』とかじゃないんだから、1時間も寝ちゃったら遅刻確定だよ?」

  ヤマメ「話しが変わってるわ。私を縛りたいんでしょ?いいわ。ケンが私を大事にしてくれてる証拠だもん」

  ケン「縛るのが大事かどうかは分からないけど…まぁ…そうじゃない?」

  ヤマメ「でも、1日に1時間以上はかならずアナタを抱いてないと、落ち着かないの。ケン依存症とでも名付けて、流行病にでもしようかしら」

  ケン「でも、それだとヤマメが言う他の女に自分が取られちゃうかもしれないぞ」

  ヤマメ「…それは、絶対にダメ」

  ケン「大丈夫。俺もヤマメを見捨てたりはしないよ。脱走はしようとするけど」

  ヤマメ「ハムスターみたいね。でも、逃げて抵抗するケンも可愛いわ」

  ケン「うーん…可愛いって言葉はそんなに嬉しくないかな。男はやっぱりカッコいいって言ってほしい」

  ヤマメ「そうね。ケンはカッコいいわ。私が見てきた男の中で一番…」

  ケン「そうだな。じゃあ、縛らせてくれ」

  ヤマメ「もうっ、唐突なんだから…。もっとアナタを感じさせてくれてもいいじゃない」

後ろから抱き着いたままのヤマメは、艶めかしく体を摺り寄せてくる。服同市の擦れ合う音が、その空間の雰囲気をより妖艶な物にしている。

  ヤマメ「それに、まだ10分しか抱けてないもの。あと50分は…。アナタの温もり、アナタの感触、アナタの匂い、アナタの存在…全部抱いてたいの…」

  ケン「そうか…じゃ、縛らせて」

  ヤマメ「…」

  ケン「時間稼ぎはもういいだろ?」


数分後、両手を後ろに回し、ロープで拘束する。

  ヤマメ「だって…ケンが持ってるそれ、目隠しでしょ?ケンが見えなくなっちゃうじゃない」

  ケン「ヤマメなら、俺を体温で感じてくれる筈だ。信じてるよ」

  ヤマメ「そ、そう…?なら、頑張ってみるわ」

そっとヤマメの目を黒いアイマスクで覆い、音を立てずに後ろに回り込む。

  ヤマメ「…?ケ、ケン?どこ?」

  ケン(バレてない、バレてない…。しばらく、放置してみよう…俺が居ないとどうなるか実験だ)

  ヤマメ「ケン?なにもしないの…?」

ソロリソロリと玄関に向かい、扉を開ける。ガラガラという音に反応して、ヤマメは少し焦っているようだ。

  ヤマメ「ケン?何処かにいくの?私も…」

ヤマメが言い終わる前に扉を閉める。もちろん自分は扉を開閉しただけで、外には出てない。音を立てずに部屋に戻り、息を殺してヤマメを観察する。

  ヤマメ「ね、ねぇ?ケン行っちゃったの…?いないの?」

焦るヤマメはロープを外そうと動くが、固く結ばれたロープは妖怪の力でも外すことができなかった。寝室に移動し、遠目でジッと見つめる。

  ケン(『居なくなっても。私帰ってくるのを待ってるから…』とか言うのかな?)

しかし、数分も見ているが、「ケン…ケン…」と言うばかりで、特に変化はない。

流石に暇になってきたので漫画を取り出し、寝転がって読むこと40分…。


変化は突然に起こった。


  ヤマメ「うあー!ケン!帰ってきてよおおー!うわああああああ!!」

  ケン(!?)

驚いてヤマメの方を見ると、髪を振り乱しながら、暴れるヤマメが居た。アイマスクのせいでどういう表情をしているのかは分かりにくいが、アイマスクの隙間から流れる涙を確認し、泣いていることは理解できる。

  ヤマメ「お願い!帰ってきて!ケン!ケン!ああああああああああ!」

叫ぶヤマメを見ていると、何故か心の底から湧き上がってくるのがわかった。

  ヤマメ「ケン!戻ってきてよぉぉ!私を置いて行かないで!帰ってきてぇぇぇぇ!」

どんどん涙が溢れてきているのが分かる。その姿を見ていると、ゾクゾクしていく。

  ケン(もうちょっと…。見てよう)

  ヤマメ「ケン!ケン!ケン!戻ってきて!お願いだからぁ!」

無理やりロープを千切るために両手を広げようとするが、物言わぬロープは只々ヤマメの動きを封じ続けている。

  ヤマメ「うああああああああ!あああああああああああ!」

  ケン(そろそろ良いかな)

暴れるヤマメにゆっくりと近づく。一歩進むごとにヤマメの悲痛な叫び声が耳を刺激する。

そして、顔を両手で掴み、グッと顔を近付けて互いの唇を合わせる。

  ヤマメ「っ!?」

  ケン「ん…」

  ヤマメ「んん…ん…」

一瞬でキスの相手がケンだと理解したヤマメは今までの寂しさを全て振り払うようにネットリと、丹念に舌でケンの口の中を舐めまわす。嬉しさからなのか、今までの恐怖からの安心感からなのかは分からないが涙はより一層流している。

ピチャピチャと唾液が混ざる音が小さく響く。数十秒にも思えるキスを止め、ヤマメの目を覆っているアイマスクを外す。

  ヤマメ「えへへ…ケン…戻ってきてくれたのね…嬉しいわ」

  ケン「ずっと部屋に居たよ。ヤマメがどんな反応するのか見てたけど、中々良かったよ」

  ヤマメ「意地悪…今夜は絶対に離さないわよ…」


涙で赤くなった目元と、安心しきって泣き止んだ子供のような表情がまたそそる。縛られたままのヤマメを抱きしめ、未だに息の荒いヤマメを落ち着かせる。

ケン依存症ですね。ケンへの呼び方が「ケン」「アナタ」と、まとまらない呼び方ですが、気にはしていません。



読者様につかの間の安らぎを

            「kanisaku」

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