第1話:一歳から二歳――「神童」と呼ばれた異端児 ①
生まれた瞬間から、私の視線は『天井』ではなく『その先』に向いていた。
(……まあ、正確には『前世の記憶を持ったまま生まれた』からなのだが。)
前世の私は、四六時中ゲームの攻略動画やプロのプレイ動画を貪り見る重度の動画勢・攻略オタクだった。
まさか剣と魔法、そしてダンジョンが存在するファンタジー世界に生まれ変わるとは思わなかったが、物心ついた私を狂喜させるには十分すぎる環境だった。
一歳。
まだ足元もおぼつかず、言葉もまともに話せない時期から、私はリビングの大型魔導モニターに釘付けだった。
画面に映し出されているのは、ダンジョン最深部で荒れ狂う巨大な魔獣。
そして、それを一閃で討ち払う『SS級探索者』の姿。
血が湧き立つ、という感覚を人生で初めて知った。
かっこいい。ただ純粋に、胸の奥が熱くなった。
「アレク……見ろ。あれが我がヴァルハイト家の血が至るべき『圧倒的な力』だ」
父は嬉しそうに私の小さな頭を撫でた。
我が家――ヴァルハイト家は、代々強力な『剣聖技』や『極大爆炎魔法』のスキルを輩出してきた、探索者の名門中の名門だ。
元A級探索者である父の期待は、優秀な兄に続く次男である私にも集中していた。
普通の一才児なら、画面の中で動く光や音に反応して喜ぶだけだろう。
だが、私の視線は違った。
前世で培ったゲーマーとしての分析癖が、勝手に作動してしまうのだ。
探索者の足運び。
魔獣が攻撃を繰り出す前動作(予備動作)。
空間の距離感。
(――いまの右脚の踏み込み、わずかに流れたな。)
(魔獣の顎が上がる瞬間、首元に隙ができる。)
赤ん坊の頭で、私は真剣に戦闘の組み立てを行っていた。
「見ましたかあなた……アレクのあの目を! あれはただの赤ん坊の目ではありませんわ!」
母が驚いたように息をのむ。
「あんな真剣な顔で映像を見つめる一歳児がおりますでしょうか……! この子は生まれながらにして、戦いの才能を秘めておりますのよ!」
……いや、本能というか、単純に攻略動画を見る感覚で分析していただけなのだが。
周囲の勘違いは、ここから加速していくことになる。




