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新学期が始まる少し前。
そろそろ中ボス戦の時期だな、とか帰ってきたミーシャさんと戦々恐々としているとリオンハルト殿下が元気になる代わりに陛下がお亡くなりになった。そんなシナリオあった?
いえ、なかったはずです。どれだけ原作がブレイクしているんですの。
亡くなった、と聞いたその日は美しい青空が広がっていた。妃殿下は葬儀中は悲しげに俯いていたが、王宮内ではケロッとしていた。
「やらかしが色々増えた時点で愛情が冷めてたんだろうねぇ」
「はぁ……」
どうやら、息子……クラウス殿下にリオンハルト殿下の殺害をおっかぶせて王妃腹の王子の継承権を下げ、新しく子供をこさえようとしていた形跡もあったらしく大層御立腹だったという。
リオンハルト殿下は「まぁ、もうすぐ死ぬだろう」と放置されていたが、もう一人と請われそうだったソフィア様はホッとした顔をしていた。
クラウス殿下が即位できるだけの事を引き継ぐまでは、先王陛下が王の代理を務めるそうだ。
「卒業を待たずに結婚して、できる限り公務に関わるようにするんだって」
「わたくしたちへの影響は如何程になりますでしょうか?」
「暫定で王太子とその妃としての教育は
を駆け足で学ぶ必要がある、ということかな」
まぁ、スペアは必要ですよね。
クラウス殿下の子供が立太子できる年齢になるまでは私達も必死に駆け抜けなくてはいけないでしょうね。
一方でリオンハルト殿下は長年身体を病んでいたせいで生殖機能がなくなり、一代限りの公爵として国に仕えることになったそうだ。それに伴い、側妃ソフィア様は元の婚約者様に下賜されるとのことです。
…陛下が死んでからトントン拍子に物事が進みますね。あの方、諸悪の根源だったのかしら。
「それで、レオナールがシュトレーゼ領で行方不明って本当?」
「ええ。なんでも妖精婚とやらをする許可がどうのこうのと書き置きにあったらしいですわ」
妖精婚とは何かしら、と思ってお父様に聞いたら「お前は知らなくて良いよ」と言われてしまった。代わりに大量の隣国の薬師が家にくるようになった。
「父が死んだのに誰も悲しまないというのも不思議な感覚だね。祖母が亡くなった時の方がお葬式という感じがしたよ」
「笑い事ではありませんわ」
「そうですよ、お二人とも」
エドワルドがしれっと「明日からのスケジュールです。ご確認を」と出してきた紙。
超絶過密スケジュールだった。
「レティシア様が数年かけて学んできた内容を詰め込むのですからそうなりますわね」
私もクリスもその辺りはもう諦めている。
平和の代償がそんなものだというのならば、頑張るしかないです。
「フィー。キツいスケジュールで申し訳ない。それでも君が良い」
「そうですね。わたくしも、それでもあなたの隣に立ちとうございます」
手と手を取り合い、笑い合う。
乙女ゲームの片隅で、私達も幸せになろうと誓い合った。