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クリス様と一緒に図書室にいると、銀髪の男性を連れたクラスメイトが隣に座ってきた。
「あら、あなた方いつも一緒ね?いつもいる元気なのは一緒ではないの?」
「セーラ様のことでしょうか?今日は兄君とお出かけだそうですわ」
元気なの、と言われているのか…。クリス様の返答に微妙な顔をしてしまった。これって褒め言葉ではないんだよなぁ。めちゃくちゃ遠回しの「うるさいやつ」という意味合いである。
そして、隣国の皇女様としれっとお話しできるクリス様もなんというかただものではないなって。
「あら、わたくしが隣にいるのは嬉しくないのかしら?リリアナの妹」
嘲るような笑みすら彫刻のような美しさだ。というか、リリアナお姉様ってばこれ好かれてるのか嫌われてるのか、どっちなのかしら。
「いえ、いきなり隣にいらっしゃったので驚いただけですわ」
とはいえ、これ喧嘩売られているのかしら。ジャブ代わりに困った顔でそう言うと、面白そうな顔をした。作り物めいた美しさの少女に人間味を感じる。
「へぇ……」
その瞳に映る光が剣呑で近寄りたくない。
でも、私の言いたかったことは伝わったようである。
「あの子が言ってたより全然マシじゃない。わたくし、気の強い子は嫌いではなくってよ」
特に気が強いわけじゃないんだけれどなぁ!?むしろ気は弱い。
リリアナお姉様これ絶対皇女様と仲良しですね。…リリアナお姉様、そんな理由で皇女様と仲良くならないでほしい。私は小心者なので。多少淑女教育でマシになったとしても私ってばわかりやすい性格しているので。
「わたくしはアナスタシア。セレスティアの第二皇女ですわ。そうね、ナーシャと呼ばせてあげても構わなくってよ」
「アナスタシア」
呆れたような声が彼女の隣から聞こえてきた。頬杖をついてつまらなさそうに本を開いている。
長めの銀髪を紫色の飾り紐で結んでおり、紫色のアメジストを思わせる瞳はあくまで本に向けられている。
「無理強いは良くない」
「無理強いはしておりませんわ、お兄様」
「聞いていたよりはしっかりしているが、シュヴァルツ公爵夫人が心配していた通りの臆病で小心者の箱入り娘のようだ。お前が振り回すには酷だろう」
酷い言い様である。
ちなみにシュヴァルツ公爵夫人は姉のリリアナである。お母様に似ているけれど、目元がお父様寄りだからか少しキツめに感じる美女である。
フィーネが拗らせたのは彼女の自分にも他者にも厳しい性格ゆえなのだろうけれど、自己評価底辺のフィーネもとい私は「嫌われている」と思い込んでいた。お兄様たちの様子を見た感想なので本当に嫌われている可能性も全くないではないけれど、もしかしたら嫌われているんじゃなくて心配ゆえに口うるさくいわれていただけという可能性も出てきた。
「少し振り回されてくれる程度の方が良いのではなくって?」
振り回す前提で声をかけるな!
それはそれとして、こてんと首を傾げる彼女は非常に愛らしい。
「お前は私にとっては可愛い妹だが、それが通じるのは身内にだけだぞ」
溜息を吐きながらの言葉に、クリス様が微妙な顔をしていた。こっそりと「うちの兄上は気付きすらしませんけど」と呟いていて、お兄様がいる事を知った。




