表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷の様式美に泥をぶちまけろ!  作者: velvetcondor guild


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/10

6

制作発表会が終わった夜。


ドラマ制作陣は、恒例の“打ち上げ飲み会”へと流れ込んだ。


場所は――

江南の高級焼肉店「黄金鉄板」。


店の前には、

黒塗りの車がずらり。

芸能人御用達の店として知られ、

「ここで焼肉を食べたらドラマが当たる」と噂されるほど。


ユミは、

ヨギョンに腕を引っ張られながら店に入る。


「ちょっとヨギョン、なんで私まで来なきゃいけないのよ。

私は作家よ? 飲み会は苦手なのよ?」


「せんせ、韓国ドラマの世界ではですね、

“飲み会に参加しない作家は、存在しない脚本”なんですよ!!

ここで人脈作らんと、次の仕事来ませんよ!!

あと、ジュニオッパも来ますよ!!」


「最後の一言が余計なのよ!!」



店に入ると、

すでにスタッフたちが盛り上がっていた。


「ユミ作家、こちらどうぞ〜!」


案内された席は――

ジュニの真横。


「ちょっと待って。

なんで私がここなの?」


「せんせ、席順は“ドラマの神”が決めるんです。

つまり、運命です!!」


「ヨギョン、あんたが決めたんでしょ」


「はい!!」


開き直りが早い。


ジュニは、

少し照れたように微笑む。


「……隣、いいか?」


「もう座ってるじゃない」


「そうだな」


二人の会話は、

妙にぎこちない。


その様子を見て、

スタッフたちがざわつく。


「え、二人って本当に昔付き合ってたの?」


「絶対そうだよな。

あの空気、ただの知り合いじゃない」


「うわ〜、ドラマよりドラマじゃん」


ヨギョンは、

誇らしげに胸を張る。


「そうでしょうそうでしょう!!

うちのせんせとジュニオッパはですね、

大学時代にですね――」


「ヨギョン、黙りなさい」


「はい!!」


そこへ、

主演女優の チョン・セリム が登場。


「オッパ〜♡

席、ここでいい?」


ジュニの反対側に座る。


ユミの眉がぴくりと動く。


セリムは、

わざとらしくジュニの腕に触れながら言う。


「オッパ、今日の制作発表会、

すっごく素敵でしたよ。

“タイトルの意味は秘密です”って言ったとき、

私、ドキッとしちゃいました♡」


ユミは、

焼肉のトングを握りしめた。


「……焼くわよ」


「えっ、せんせ、

なんでそんな“殺意のこもった焼き方”なんですか!?

肉が泣いてますよ!!」


「黙りなさい」


飲み会が進むと、

恒例の“自己紹介大会”が始まった。


プロデューサーが言う。


「では、今回のドラマの共同制作者である

マ・ユミ作家、

一言お願いします!」


ユミは立ち上がる。


「……えーと、

私は――」


ヨギョンが突然立ち上がった。


「ちょっと待ってください!!

作家はですね、

謙虚すぎて自分のこと全然言わんけん、

わたしが代わりに紹介します!!」


「やめなさい!!」


「ユミせんせは、ですねぇ!

大学時代から文章がめちゃくちゃ上手くてですねぇ!

わたしなんか、初めて読んだとき、

“この人は天才や!”って叫んだんですよ!

ばあちゃんも言いよったんですよ!

“この子は絶対売れる!”って!

でもですねぇ!

つまりですねぇ!

ユミせんせは――」


「ヨギョン、黙れぇぇぇ!」


店内が爆笑に包まれる。


ジュニは、

苦笑しながら言う。


「……相変わらずだな、ユミ」


「うるさい」



飲み会も終盤。

スタッフたちは酔い始め、

店内は騒がしくなってきた。


そんな中、

ジュニがぽつりと言った。


「……ユミ」


「なに?」


「今日の制作発表会、

ありがとう」


「別に。

仕事だから」


「でも……

お前が隣にいてくれて、

よかった」


ユミは、

一瞬だけ言葉を失った。


そのとき――


セリムが割り込む。


「オッパ〜♡

私にも言ってくださいよ〜

“隣にいてくれてよかった”って♡」


ジュニは、

苦笑しながら言う。


「……セリムさんは、

隣じゃなくても、

十分目立ってるから」


セリムの笑顔が固まる。


ヨギョンは、

ユミの耳元で叫んだ。


「せんせ!!

今の聞きました!?

完全に“ユミせんせだけ特別”って言いましたよ!

これはもう、

ハッピーエンド確定です!」


ユミは、

顔を赤くしながら言った。


「……別に、

嬉しくなんかないわよ」


でも、

その声は、

ほんの少しだけ震えていた。


飲み会が終わり、

店を出ると、

冬のソウルの空気が冷たく澄んでいた。


ジュニが言う。


「……送っていくよ」


「いらない。

タクシー呼んでるから」


「そうか」


少し沈黙。


ジュニが、

ふと空を見上げた。


「……ユミ。

俺、

あのとき――」


「言わなくていいわよ」


ユミは、

ジュニの言葉を遮った。


「今さら“あのときの理由”なんて、

聞いても仕方ないでしょ。

私は作家。

あなたは脚本家。

今はそれで十分よ」


ジュニは、

少しだけ寂しそうに笑った。


「……そうだな」


タクシーが到着する。


ユミは乗り込む前に言った。


「でも――

仕事はちゃんとやりましょう。

あなたが逃げても、

私は追いかけるから」


ジュニは、

驚いたように目を見開いた。


そして、

ゆっくりとうなずいた。


「……ああ。

逃げないよ。

もう二度と」


タクシーのドアが閉まる。


ユミは、

窓越しにジュニを見た。


ジュニは、

静かに手を振った。


ユミは、

ほんの少しだけ微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ