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氷の様式美に泥をぶちまけろ!  作者: velvetcondor guild


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3/10

3

  制作発表会の会場は、

「ここで結婚式したら人生勝ち組」と言われるほどの高級ホテル。


照明は金色、

壁は大理石、

空気は香水と緊張で満ちている。


ユミは、

新しい眼鏡と黒のワンピースで、

“泥のリアリズム系作家”とは思えないほどの気合いを入れて立っていた。


その横で、

ヨギョンは、

緊張しすぎて方言が暴走している。


「ユミせんせ、深呼吸してくださいよぉ……

わたし、緊張しすぎて胃が逆流しそうですけど、

それでもせんせのために、今日だけは倒れんように頑張りますけん……!」


「倒れないで。

あんたが倒れたら、私が救急車呼ぶ羽目になるでしょ」


「救急車より、まずは“化粧直し”をお願いしたいです……

倒れたら顔が崩れますけん……!」


「知らないわよ」


そんなやり取りをしていると――


会場の空気が、

ふっと変わった。


スポットライトがひとつ、

ゆっくりと動き、

ある人物を照らす。


ハ・ジュニ。


黒いスーツ、

落ち着いた笑顔、

ハリウッド帰りの余裕。


記者たちが一斉にカメラを構える。


「ハ・ジュニ作家!

アメリカでの経験を、今回のドラマにどう活かされますか!」


「韓国に戻ってきた理由は!?」


「“眠たい目に、愛を込めて”というタイトルの意味は!?」


ジュニは、

落ち着いた声で答える。


「……このタイトルは、

ある“人”を思い出してつけました」


会場がざわつく。


ユミの心臓が、

ドクン、と跳ねた。


ヨギョンは、

ユミの腕をつねった。


「ほらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

絶対ユミせんせのことですよこれ!!

“眠たい目”って、せんせの代名詞じゃないですか!!

あの男、全国ネットで告白しよったんですよ今!!」


「落ち着きなさい。

あれは“作家としての比喩”よ。

私のことなんて……」


と言いかけた瞬間。


ジュニの視線が、

まっすぐユミに向いた。


ユミは固まる。


ヨギョンは、

口を押さえて震えている。


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!

完全にロックオンされてますやん!!

せんせ、逃げて!!

いや逃げたらドラマにならんけど!!

でも逃げたい気持ちは分かる!!」


「うるさい」


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