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その恋、賭けですよね? ~地味OLは全部知った上で三ヶ月後に叩き潰す~  作者: ぶるどっく


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第二十話



 猫が飼い主にじゃれつくように。


 喉を鳴らし、マタタビに酔う。


「葵……せんばぁい……」


「えっと……兼子さん、そろそろ……」


「イヤですぅ……もっと、撫でてくださぁい……」


「(ほんとに……猫みたい……)」


 ゴロゴロと喉を鳴らし、擦り寄る。


「……でもね、兼子さん……今、仕事中だから……」


「華乃です」


「え……?」


「華乃って呼んでくれなきゃ……離れません……」


「…………」


 アーモンド型の目がジッと葵を見詰める。


「……華乃、ちゃん……?」


「っ……はいっ!

 葵先輩って、私も呼んでいいですか?

 良いですよね……!」


 幼い子供が母親へ宝物を見せるように。


 母猫に甘える子猫のように。


「…………もう、しょうがない子ね。

 良いも、悪いも……呼んでいるじゃないですか。」


 葵は苦笑して、受け入れる。


「葵、先輩……」


「……なぁに、華乃ちゃん?」


「っ……!

 なんでもないです……!」


 名前を呼べたことに。


 名前を呼ばれたことに。


 瞳を輝かせ、頬を上気させる。


「…………あー……そこのお二人さん。

 先輩後輩の愛を育んでいるところ悪いんだが……」


「悪いと思うなら、帰ってくださーい」


「はーい…………って、コントじゃないんだが。」


「すみません、よしもと課長。」


「……吉村だからな。」


 吉村は華乃とのやり取りに深いため息をつく。

 いつの間に近付いて来たのか、吉村の背後には彰良の姿もあった。


「……兼子さん。」


「……失礼しました、吉村課長。」


「勤務時間中に失礼しました。

 以後、気を付けます。」


 上司への態度について華乃を窘め、素直に謝罪する華乃と一緒に葵も頭を下げる。


「あー……まぁ、良いんだけどな。

 それよりも、本題に入ってもいいか?」


 鴉の巣のような頭を搔いて、やる気のない声音で問い掛ける。


「来月の広報誌を兼子さんと犬飼君に頼むことにしたんだが……」


「吉村課長ぉ……犬飼さんと一緒なんてムリですぅ。

 だって、私に対して塩対応すぎて空気が凍っちゃいます。」


「自分もお断りします。

 兼子さんとは分かり合える未来が見えません。」


 互いを指さし、拒否し合う。


「…………と、言う訳なんだ。

 新人の頃は先輩と組ませたが、二年目だから互いにフォローしながら……」


「互いにフォローをする関係性では有りませんので無謀かと。」


「威圧感たっぷりの人が側に居たら、怖くて仕事になりませんよぉ……」


 吉村の言葉を遮り、互いを拒絶する二人。


「……一応な、俺も色々考えたんだ。」


「……あの……私は関係ないのでは……」


「考えた末にだな……佐山君を補佐に付けようと思ったんだが……」


「(……今、スルーされたような……まあ、良いけど。

 でも……気のせいかな……?

 犬飼君……機嫌が悪い……いや、苛立ってる……?)」


 睨み合わない程度に、視線で応酬する二人。


 その片割れである彰良へとチラリと視線を向け、首を傾げる。


「佐山君からな……拒否されてしまった。」


「佐山さんがですか?

 ……それは……珍しいですね。

 佐山さんは、卒なく何事もこなす方なのに。」


 葵は同期の佐山が吉村の指示を拒否したことに驚く。


「佐山曰く、自分は猛獣使いでは無いそうだ。」


「…………は……?」


「狼とライオンを両方相手にして生き残れる内臓も、精神力も、持ち合わせていないと言われてな。

 まぁ……その気持ちは分からんでもない。

 分かってしまうから、強制はできなくてなぁ……。」


「狼……?

 ライオン……?

 それは……犬飼君と兼子さんのことですか?」


「それ以外に誰かいるか?」


「…………」


 無言を返す。

 それが答えだった。


「さて、此処で犬飼君、兼子さん。

 二人にクエスチョンだ。」


「「…………」」


「来月の広報誌の担当を二人だけでするか……それとも、立花さんを補佐役に三人でするか?」


「やります。

 立花先輩がいるならば、是非もありません。」


「やります、やりまーす!

 葵先輩が一緒なら頑張れます!」


「え……いや、何で私の名前が出るんですか?」


「逆に、何でこの流れで出ないと思う?」


「…………」


「じゃあ、頼んだぞ。」


 グッドラックの幻影が見えた。

 良い笑顔を残して、吉村はさっさと退散するのだった。


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