≪本論・十傑集の躍進9≫
余談であるが、この一騎打ちを目撃して、私はオウタの新たな一面を知る事となった。
彼は三人を打ち倒した後、いずれも嗤[わら]ったのだ。
笑い、ではなく、嗤い、である。
嗤いとは、加虐性愛者がその嗜虐心を満たそうとした時、または満たした時に浮かべる笑いである。
要するに殊勝な人柄であるオウタに、サディストの面があったのである。
私に嗤顔[えがお]を見られてしまった彼は、
「僕、強者を倒すのに興奮しちゃう性質[タチ]なんですよね。あの御三方はなかなかのものでした。けど、うちの嫁さんに比べたら、まだまだです。だって、うちの嫁さんは僕のミラクルパンチを真面に食らってもダウンするどころか、血気盛んになって逆襲してきましたから」
と語っていた。
更に余談だが、敗北したコトゥーゲ、キューセンドルフ、ファルケンは、全員約束を守り、大人しく退散していった。
去って行く彼らに向かってオウタは、
「僕の地元にこういう諺があります。【タイマン張ったらダチ公じゃ】と。だからもう、僕とあなたはダチ公、つまり友達ですから」
と一方的に主張したのであった。
当然、相手から同意の返答がある訳が無かったのだが、無差別仲間収集家であるイェンが、
「オウタの友達って事は、友達の友達は皆友達だから、俺の友達だ。すなわち、もう仲間って事だな」
と大喜びしていた。
私は、タイマン張ったらダチ公じゃ、となる異世界の理屈が全く理解できなかったので、オウタに尋ねてみたところ、
「うちの嫁さんが言ってたんですけど、暴力はコミュニケーション、なんです。通常、友達になる時はコミュニケーションを取るでしょ。だから同じように、暴力という形でコミュニケーションを取り合って友達になるんです」
という奇抜な答えが返ってきたのであった。




