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64 [終幕】人生何があるか分かりませんわね

「本当に、あっという間でしたわね」


 大きな三面鏡のドレッサーの前に座り、溜息が漏れる私。

 私の側には、専属侍女の二人。


「フィオラさまぁ~、晴れの日にそのお顔はいただけませんよ~」

「まったくです。今日はフィオラ様を国の内外に見せびらかす日ですのに、憂鬱そうなお顔はいけませんわ」


 ララミーとカトレアは元気ですわね。

 私は朝からの支度に、既に疲労が凄いと言うのに。

 夜会などのパーティー準備なんて足元にも及びませんわ……この一日のためにどれだけ動き回った事か。


「ねぇ、おかしなところはない?」


 鏡の中の自分をマジマジと見ながら、おかしな所がないかチェックする私。

 そんな私に、楽しそうに笑う侍女達。


「大丈夫ですわ。フィオラ様は世界で一番素敵ですもの」

「はい!フィオラ様は神です!」


 相変わらずの「私至上主義」の二人ですわ。

 そう言えば、二人とも私の事「お嬢様」と呼ばなくなりましたわね……仕方ないとは言え、ちょっと寂しいですわ。



 さて、この流れから、皆様既に察していらっしゃるとは存じますが、本日は私とアシェリーの婚姻式ですわ。


 健国記念パーティーがあったあの日、私は見事に陛下の手の平の上で踊らされ、アシェリーに想いを打ち明けました。

 だいたい、あのような寸劇がなくてもちゃんと気持ちをお伝えするつもりでしたのに。

 私の努力を返してって感じでしたわ。

 まぁ、あの後、アシェリーに文句を言っていいと言われていたので、散々陛下に小言を言わせて頂きましたけど。


 あの日から今日までの二年間は、あっと言う間でしたわ。


 パーティーの翌日には婚約し、私は準王族に。

 これは、元々お父様が継承権持ちだったと言うのもありますわね。

 そして、王太子妃教育は必要ないと、城の先生方から早々にお言葉を頂き、後は学園生活を存分に楽しむ日々でしたわ。


 それと、あの日私がワタリビトであり、光の精霊の契約者だと分かった神殿側から、なんと「聖女」認定。

 かなりありがた迷惑なお話でしたが、アシェリーいわく「今後のためにも肩書きは多い方がいい」と言う事で、仕方なくその地位を頂戴いたしました。


 そうそう、因みにあの三馬鹿のお家とマーシャル家ですが、ラングレー家以外の当主は皆処罰されました。

 そして、アレクシス家、カジラエル家はお家取り潰し。マーシャル家はウルド様が後を継がれ現在ご当主になっていますわ。


 ウルド様が陛下より当主を任された時の嫌そうなお顔、あれは記憶に残りますわね。

 しかも、任命されてすぐ生家を破壊(物理的に)した挙句、土地を売却し、王城近くの小さな屋敷を購入されてましたわ。

 よほどあの場所に帰りたくなかったのですね。


 そしてラングレー家のユリウス様。

 私との婚約破棄が成立しましたのに、あの寸劇。

 後目を継がれるユリウス様のお兄様が大激怒なさって、侯爵と相談後速攻で勘当されましたわ。

 そして、平民に落とされ、そのまま城に拘束。

 各国の方々そして自国の王の前でやらかしましたからね。自業自得ですが、その後裁判により炭鉱送りとなりましたわ。


 全てが解決した時の陛下の表情、とても「いい笑顔」でしたわ。




「フィオラ様、お時間です」



 ノックと同時に入ってきた、我が家の侍女長。

 やはり彼女も「お嬢様」とは呼ばなくなりましたわね。


 ………やっぱり、ちょっと寂しい。


 分かっていますのよ?

 もうドロッセルの姓は名乗らない……しかも、王太子妃ですもの。だから、お嬢様と呼ばれる事もなくなるのは分かっていますわ。


 でも。


 マリッジブルーとか言うものかしら。


 なんて難儀な。


「やれやれ、「お嬢様」そんな事では先が思いやられますわ」

「そうですよ「お嬢様」!お嫁に行かれても、フィオラ様が私達のお嬢様なのには変わりありませんよ?」


 え、私の気持ち。


「気づいてたの?」


 私の驚いた表情に、してやったりの二人。


「何年側にいるとお思いですか?」

「そ~ですよ!それに、これからもずっとお側にいますからね!」


 まったく。

 できた侍女達だわ。


「………ふふっ、ありがとう」





 教会内に響くパイプオルガンの音色。

 我が国の貴族をはじめ、諸外国のお客様が多数。


 私はお父様にエスコートされ、祭壇前で待つアシェリーの元へ。


「本当に、まさか王家にお前をやる事になるなんてな」

「あら、お父様。私も予想外でしたわ」

「まぁ、相手がアシェリーでなかったら認めてなかったな」

「………お父様、アシェの事本当に好きですわね」

「まぁ、アズにそっくりだからな」


 長い道を進みながら、たわいもない会話。

お父様、結局陛下の事大好きなんじゃありませんか。


「幸せにな、まぁ、お前なら自分から幸せをつかみに行くだろうが」

「あらお父様、当たり前ですわ」


 まだ式は今から。

 ですのに、こんなたわいのない会話に視界が霞みますわ。

 今世で出会った両親には、本当に感謝しかありません。


 沢山愛して頂きました。


 迷惑も沢山かけましたし、手のかかる娘だったに違いありませんわ。


「お父様……愛してますわ」

「……フィオ、始まる前に泣かすな」


 お父様の空いた右手が私の手にそっと乗せられ、優しく握られました。


「さぁ、婿殿に交代だ」




 お父様からアシェリーに。

 離れるのが寂しくて、力が入る私に優しく微笑んでくれるアシェリー。


 いつもと同じ、昔から知る優しい表情。


「殿下、娘をお願いいたします。後……(不幸にしたら消しに行くからそのつもりでな)」


 お父様………小声で何言ってますの。


「は、い!………必ず一生をかけて」


 アシェリー、ふぁいとー。




 誓いをたて、お互いの基本属性を模した指輪の交換。

 私からアシェリーには光の指輪を、アシェリーから私には水の指輪を。


 そして誓いの口付け。


「アシェリー、貴方の事は私が幸せにして差し上げますわ」

「……それ、普通私が言わなきゃいけないセリフ」


 ハニカミながらベールを上げ、その優しい手が私の頬へ。


「愛してる」

「はい、私もですわ」


 落ちてくる唇に幸せを感じながら、頬を涙が伝いました。




 転生して、自分が作ったゲームだと知って、あまつさえ、悪役令嬢に勝手にされて。

 慌ただしい日々でしたわね。


 そして、今日からまた新しい人生が始まります。


 あれだけ「要らない」と言っていた王太子妃と言う立場。

 いずれは国母の地位に立つ私。

 一社会人だった前世の私が聞いたら腰を抜かしそうですわ。


 本当、人生なにがどうなるかなんて分かりませんわね。


「フィオ?」

「ふふっ……本当に、貴方に逢えて良かったですわ」

「え!」


 予定にない、私からの口付け。


 慌てるアシェリーに、苦笑いの神父様。

 笑を耐える陛下と王妃様の横で、額に手を当てるお父様。

 呆れ顔のお兄様と弟に、諦めたようなお母様とベルバラ。


 みんなみんな、大好きですわ!



end


これにて終幕になります。

書き始めてかなり時間が経ってしまいました。

最後までお付き合いくださった全ての方に感謝致します。


( *・ω・)*_ _))ペコ

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