表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/38

ただいま

 何かに抱かれ、その揺れを感じながら微睡の中にいるのに気が付く。

 

 あぁ、そっか。

 俺倒れたんだっけ。

 そりゃそうだ。異世界に来てからずっと、一息つく間もなかったように思う。

 何も食べてないし、寝てもいなかった。

 そのことにすら気づかないほど怒涛の展開にセーブを忘れてしまうくらいだ。

 ゲームならコントローラーを手放させないほどの物語なら良作なんだろうけど、

 現実で経験するのは、もういいかな……。


 そんなことを思っていると。揺れが急に激しくなる。

 いやいや、もう勘弁してくれって思ったところなのにッ!?


 事態を把握しよと目を開ける。

 俺は妹の腕に抱えらているらしい。

 妹に抱っこされる兄といはいかに?って。


「うおッ!?」


 前後左右に動かされ、あやされているとは言い難い。

 

「もう白主殿のご実家についたぇッ! もう抱えささんなんしッ!」

(白無垢ちゃんが無理やり取ろうとするからでしょ!? 言われなくても降ろしますッ!)


 どうやら、白無垢が妹を不信がって俺から遠ざけたいらしい。

 妹には悪いけど、それは分かる。ごめんね。


「妹。お兄ちゃんを降ろしてくれ」

(あ、お兄ちゃん)


 俺の言葉に気づくと、ゆっくりと地面に降ろしてくれた。すると。


「お前様ッ!?」


 と白無垢に抱きつかれてしまった。

 白無垢の膂力をしっているので、つい身構えてしまう。


「よかたどすぅ……。気配が無くなってしまったさかいに、死んでしまったのかと……ぐす」


 と、子供みたいにぐずり出すと、

 俺がちゃんといるのか確かめるように顔をペタペタと触ってきた。

 

「俺も死んだかと思ったよ」

(ワタシが助けたんだよ! おに、弟よ感謝するがいいッ!)


 と腕を組みふんぞり返る妹。

 

「ありがとう」

(えへへ)


 礼をしっかり述べる。

 全身の眼はまだふんぞり返っている様だ……。

 服を剥ごうとしてくる白無垢を押しとどめつつ、白無垢にもお礼を言う。


「白無垢さんもありがとう」


 すると、ぴったと手が止まり。

 しどろもどろになりながら聞いてきた。


「お、おおお、お前様。あの。うちの、うちの名前は……」

「え? いや白無垢さん、ですよね? 」

「本名……」

「う~ん」


 考えてみるが思い出せない。

 いや、正確には覚えているんだけど感じんな場所だけ覚えてない……。

 ふと、妹を見やる。


(……)


 やったな?

 妹のことは、この世界で出会ったところから覚えている。

 妹の主人格があるだろう本来の位置にある目が泳いでいる。

 なるほど、そうい器用なこともできるのか。

 改ざんされないだけいいのかもしれないけど……。

 って、言い訳を考えてる時点で妹に甘いのか? 俺。


「……うぅ、お前様が生きていはるなら、それだけでいいどす」


 と、涙目で微笑んでくれた。

 当然のように助けてくれているのに、ちょっと後ろ暗い思いになる。


(いつまでくっついてるつもりなんですか? お兄ちゃんも離れてッ!)


 と、巨大な掌が間に割って入ってくる。

 白無垢には他人行儀に話すんだな。

 この二人も馬が合わないらしい。

 

「はぁ……」


 また口論が始まってしまい、ついぞため息を付いてしまう。

 そういえば、実家に帰ってきたとか白無垢が言ってたな。

 空気も粉っぽくないないし、澄んでるような気がする。


 やっと、我が家に帰ってこれたわけか。


 取っ組み合いになりそうなほど面を突き合わす二人から距離を取ろうと立ち上がり、

 辺りを見渡すと―――。


「なんじゃこりゃッ!?」


 目の前に光景に驚愕する。

 俺は実家の敷地内、庭園にいるわけだけど。

 おそらく。白無垢とニセ第一村人の戦いで飛んできたのだろう。

 あの大噴火が原因に違いない。

 飛んできて地面を跳ねた末に俺の家に落ち着いたらしい。

 大きな噴石が実家を押しつぶしていた……。


「どうすんだよ……これ」


 と茫然と立ちすくむ。

 これ、帰ってきた意味ないよね。

 だって家ないんだもん。

 そのまえに龍が投げ込まれ、すでに半壊だったのに。

 白無垢に対しての評価を下方修正する。


「大御神ッ!」


 心ここに在らず。といった心持でいると声をかけらる。

 振り返るが誰もいない。


「はて?」


 頭に?を思い浮かべていると。


「こっちじゃッ!?」


 と、怒り気味に言われ、声の方へ顔を下げる。


「大御神。諫言を奏上させていただきたいのじゃッ」


 と、ピンクゴールドの髪の幼女に割と真面目な顔で言われてしまう。

 なんだろう? 難しい言葉つかうなぁ。

 すると、後ろからん同じ色の髪を少し濃くしたようなおとなしめの女性が控え、

 頭を下げてきた。

 なんとなく頭を下げ返す。


「……どうぞ」

「では、一つ。荒神を即刻殺すべきだと諫言させていただく」

「荒神?」

「知らぬまま助命したのか? あちらにおる黒髪の女子(おなご)じゃ」


 ニセ第一村人か。

 荒神とかいう物騒な呼び名らしい。


「でも、もう助けちゃったしなぁ」


 何をしたのかぼんやりと覚えている。

 妹に記憶をいつのまにか返上した際に、一部記憶が欠けたりしてしまっているが。

 ニセ第一村人の方を見ると、チャラ男が少女とニセ第一村人を庇っている。

 ニセ第一村人も目を覚ましている様だが、目がうつろで覇気がまったくない。

 俺的には正直、安心なのだが、少女の顔がすぐれないていないのはそのせいだろう。


「しかし、大御神」


 なおも、不安げに言い募ろうとする幼女。てか、


「……どこの子?」

「なッ?」


 と、驚愕。といった表情になる。


「龍ッ! 龍なのじゃッ!?」

「あ~……」


 そうだ、そうだった。

 俺が気絶している間に衣服を着たのだろうけど、

 一見は百聞にしかず! と言わんばかりに衣服を剥ぎ尻尾を見せつけようとするのを、

 後ろに控えていたおとなしめの女性が慌てて止めだす。

 龍形態の時の方がかっこよくてよかったなぁ。

 女性が頭を下げながら、龍を宥めようとこの場を離れていく。


「そう、どす。……ッ、なぜ、あの雑神の器を! 助けた、のどすか?」


 と、入れ替わる様に聞いてきた。

 口論が発展し、まだ妹とじゃれ合っている白無垢はホッペをむにゅっとされながらそう聞いてきた。


「ほっぴょをつまむなぁんしッ!? んッ、あの器を魔王にしゅるなんて……あッ! この!!」


 と、肝心なところで妹につかみかかっていった白無垢。

 え? なに? 魔王? 助けたい一心で転生させてしまったけどそんなことになってしまってるの?

 それって、荒神よりマシなのかな?


 ついつい、ニセ第一村人。元荒神で現魔王種らしい女性をみる。

 その虚ろな目と目が合う。

 思わず二度見してみたが結果は変わらず。

 いつからか知らないが、見れていたようだ。

 まだ、状況説明を出来るような体調じゃない以上、

 あの虚ろな目の奥で俺を殺そうと考えているかもしれない。


 怖いので目をそらす。


 家が全壊、魔王を敷地に招き入れてしまった現在。

 だからと言って、何がで出来るわけもなく。

 

「大御神ぃ~! 我は龍じゃし、荒神をなとかしてたもれッ!」

「あ~、あ~、聞こえない。聞こえないよぉ」


 大人しめの女性が頭を何度となく下げながら龍を抱きかかえており、

 なおも食い下がらず懇願してくる。

 

 無理だって。

 もう記憶返しちゃったし。

 いや、でも俺がピンチだたわけでもないし、

 なぜあの時、記憶を返してくれたのか? という疑問もでてきたなぁ。

 妹という認識とこの世界での出会いの記憶だけ残しているんだから、

 そういうことなんだろう。

 寂しかったとかそんなところのような気がする。

 きっかけはなんでもよかったのかもしれない。


 ひとつ、納得できたところで、他の記憶は持って行ってしまったんだから、

 また返してくれることはそうそうないだろう。

 俺かから言い出したことっぽいし、約束は約束はだからな。

 よって、再考の結果も、やっぱ無理。

 魔王とかどうにもできない。

 

 と、なるとだ。

 家をどうにかするとか、明日の事を考えるとか、

 そんな所が現実的だろうか。

 そういものの、全開した家が庭園に山積してる惨状にため息が出る。

 うんうん、唸っていると正門の方から声が聞こえてきた。


「ユリリアートッ! やめよ……ッ!?」


 と、タバサだったかな?

 彼女の声が聞こえきた。

 まだうかがい知れないが、軍人さんもいるらしい。


 近所で有名な襤褸家に探索にきて、一人腰が引けているみたいな感じだ。

 重い正門の門扉が押し開かれる。


 ひょいっと扉越しに軍人さんの顔が覗く。

 よかったぁ……ッ。生きてたんだ。

 じゃぁ、ニールも?

 そう、思った次には傷つき、疲労困憊らしいニールが重い足取りで門を潜ってきた。

 後にタバサと彼女の鹿が続いた。


 首を廻らし、全壊した家屋と敷地内を見回す軍人さん。

 ふと、軍人さんと目が合う。


「少年ッ!?」

「あ、ほんとだッ! クs、少年がいるッ!?」


 と、驚かれた。 

 まぁ、ただのガキがよく生き残ったな。とは思うよね。


 そういうと、駆け寄ってくる。

 まだ、じゃれ合う白無垢たちを、

 まだやってるのかみたいな視線で横目にしていた。

 あの場に二人もいたのかな?


「少年ッ。大丈夫か?」

「え、えぇ、この通りです」

「そうか」


 安堵の表情をしてくれた。

 出会って間もないのに、それなりに心配してくれていたようだ。

 ちょっと、以外でビックリした。

 だって俺、捕虜だったからね。


「というか、クs、少年は何者なの?」

「何者? と言われても。てか、さっきからクソガキいいそうになってません?」

「え? いや 」

 

 と、しどろもどろになる。

 そういえば、軍人さんにも聞かれたな。

 その時は人間です。って答えたけど、

 軍人さんは信じていなかったのか、この話題に関心がある様子。

 今度は庇ってくれないらしい。


「え~と、人間だと思うんですけどね……」

「なんで、大御神は嘘をつくんじゃ? 大御神は大御神であろうに?」


 と、いつの間に傍まで来ていた龍。

 女性の拘束を解いてきたらしい。


「えっとこの御子は?」


 と、タバサさんに聞かれる。


「御子じゃない! これを見ろ! 尻尾が生えているじゃろうがッ!?」


 と、いつの間にか衣服を脱ぎ棄てており、可愛いお尻から欠けた尻尾が見る。


「すみませんっ! ほんと、すみません! 」


 非常に腰の低い人らしい。

 なんども頭を下げながら、龍を抱えて似たような衣装に身を包む数人の集団のもとへ戻ていった。

 今更ながら、出会った当初の満身創痍といった面影がどこにもない。

 白無垢か妹の御蔭かな? よかった、よかった。


「まだ、話はおわってないのじゃぁ~!」


 と、泣きわめきながら離れていく。

 

「龍人の民……。じゃぁ、本当に……」


 と、タバサさんがつぶやく。

 ほぉ、あの人たちが龍人という人達らしい。


「わかったは。これ以上、追及はしません」

「いいの? 一番話が通じそうな証人なのに」

「少年がよくても、あそこにる神格が許してくれそうにないもの」

「うげぇ……」


 確かに。

 この中で一番の強者だ。


「そうだ、少年。返す物があるわ」


 そう言うと、ニールの元まで歩み寄り、後部の金具から荷物を取り外す。

 あ。あれは……。


「俺のカバンッ」

「えぇ、もう私たちに必要のないものだから」


 そういうと渡してくれた。

 まぁ、一応捕虜にされましたからね。

 物証としてほしかったのかもしれない。

 それを必要ない。ということは俺は見逃されたのかな?

 ほっとひと一息をつき、中学の時使っていた通学カバンを開ける。


 どれどれ。

 カップ面に、食器類。あとは、ひしゃげた簡易ガスバーナーか。

 ちょっと、腹が減ってきた様な気がする。


 というか、日常の行動を取り戻したい気分だ。


ブクマ・評価おねがいします!

作者のやる気スイッチをONできます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ