7鬼 暴走
クランハウスで一泊し、意外とここで暮らすのも悪くないと思えてきた。
ということで、次に確認しておきたいこととして、
「近くのダンジョンを見てみるか。圧推、一緒に行こうぜ」
「へい!お供させていただきやす!」
ダンジョンがどういうタイプのものか、と言うことの確認だ。
だいたいの強さは書類で確認したが、田舎で人気のない場所のダンジョンだからそこまで詳しい情報が入ってきているわけではないんだよな。とりあえず定期的に職員が来て安全かどうか(ダンジョンの難易度が急激に上がっていたりしないか)などは確認しているみたいだが、詳しく何のモンスターがいるかなんていうこともあまり分かっていないんだ。
もちろん、素材が高いモンスターが何種類かいることは記載されているけど(これがないと誰も攻略しようとはしない)。
ここでついでに、火車の圧推もダンジョンに入れてステータスを確認させておく。
ただ、乗り物枠だし圧推に攻略の参加はさせる気なんてなかったんだが、
「ひゃっはぁぁぁぁ!!!!!」
「おいおいおいおいお!!????もうちょっと安全運転で頼、って、飛んだぁぁぁぁ!!!!????」
たまたま選んだ初心者用の難易度が低いダンジョンが広いフィールドのものだったため、圧推が暴れまわることができてしまったんだ。
軍隊とかにありそうなトラックに変化した圧推は俺を乗せたまま全速力で走り、次々にモンスターを引いて行く。
もちろん、そんなことをされたらこの難易度の低いダンジョンのモンスターであれば生き残ることは不可能。
次々に弾き飛ばされながらポリゴンになって消えていく。
そんな状態が10分ほど続いて、
「あれぇ?モンスターがもういなくなってしまいやしたねぇ」
「ぜぇぜぇぜぇ…………そ、そりゃそうだろ。途中でボス倒したからクリア扱いになったんだよ。転移ポータルまで出てきたのに気づきやしないし…………ウップ。気持ち悪」
「ちょっっと!?気分悪いならあっしの外でやってくだせぇ!…………いや。本当に頼みやす。ここでするのはやめ、ギャアアアァァァァァ!!!!????」
俺たちはいろいろな物を代償にして、初めてのボス討伐まで終わらせてしまった。
まさか初めてがこんな形になってしまうとは予想外だったな。せめてもうちょっと自分の実力がついてきたことを感じられるような状態でやりたかった。
ただ、これのお陰で大量のモンスターも倒せたし、レベルが上がったことも間違いない。
ボスまで倒したんだから相当の経験値が入っていて。俺の身体能力はそれなりに強化されていた。
「ただ、これに耐えられるだけの三半規管の獲得には至らなかったか」
「何を格好つけてるでさぁ。もうちっと耐えてくだせぇ」
「誰があんな中の人間のことを考慮しない運転を耐えられるか!そっちに気をつけてたら途中でどこかぶつけてケガしてたぞ?」
俺と圧推は文句を言いあいつつボスを倒した地点へと向かっていく。
ある程度離れてしまったから探すのも時間がかかると思ったんだが意外とすぐに発見できて、
「おっ、宝箱まであるじゃないか」
「ほぅ?そんなものまで?」
ボス討伐の報酬だろう宝箱、そして帰還用の転移ポータルもその横には置いてある。
宝箱の中身は無難に武器。それも、誰でも使いやすいようななんの目立った特徴もない剣となっている。普通の物よりは切れ味が良くて攻撃力が高いんだろうな。
一応俺の武器にしておくか。多分使う機会はないだろうけど。
「特に討伐者に合う装備が出てくるってわけでもいないんだな」
「そうですなぁ。ただ、あっしに合う装備って何なんでさぁ?」
「軍用車に取り付けできる機関銃、みたいな?」
「そういうのでしたらあっしの方で勝手に生み出せるので必要ないものでさぁ。さすがに、弾まで無限とはいきやせんが」
「…………お前優秀過ぎるだろ」
危険な運転をして俺をボロボロにしたことを許してしまいそうになるくらい驚きの情報が出てきた。
まさかそんなことまでできるとは。
逆にこいつ、何ができないんだ?
もしかしてこの先のダンジョン攻略、俺とか必要ないのでは?
「それじゃあ、もう1周してきやす。そちらも楽しんで来てくだせぇ」
「え?お前ついてこないのか!?」
後の攻略も全部こいつに任せようと思ったんだが、どうやら圧推はこのダンジョンが気にいったようで他のダンジョンの入り口の前に俺を置いてまた走って行ってしまう。
1人でダンジョンに挑めということらしい。
「仕方ない。やるか…………ダスト、頼むぞ」
「プルプルッ!」
とりあえず俺だけだとどうしようもないので、スライムのダストを出して一緒に戦ってもらうことにする。
今日もダストは元気いっぱいだ。
どうでもいいい事なんだが、そういえば圧推は倒したモンスターの素材とか回収するつもりはあるんだろうか?
さっきは轢くだけ轢いて走ってしまっていたから俺が頑張って回収できるものは回収したが、今度は放置していくとかそんなことはないよな?もしそうならものすごくもったいないんだが。
「ちゃんと拾ってくることを祈っておくか。もしダメでも、宝箱くらいは開けて中身を回収してくるだろうし赤字にはならないだろ…………たぶん」
「プルッ!!」
俺の不安を払しょくするように、もしあまりそっちで利益を出せなくてもこっちが頑張ればいいんだよとばかりにダストが激しく跳ねる。
本当に頼もしい限りだ。
「このダンジョン、俺たちの力で最後まで攻略しきるぞ!」
「プルプルッ!!」




