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47鬼 早期離脱

「おっ、丁度いいところに来たな。一緒に潜ろうぜ」


週末。

パーティーメンバー全員でダンジョンを探索していると、俺たちは見知らぬ奴らに声をかけられた。

当然警戒するわけだが、


「ブラッドオーシャンズのメンバーか?」


「ああ。ほら。会員証だ」


「なるほど。なら軽く組んで試してみた後、相性がよさそうな一緒にやってみるか」


俺たちもそれの対応はある程度慣れている。

向こうが狙ってやってるのかはよく分からないがこの間から来ている100階層もあるという噂のダンジョンには必ずと言っていい程ブラッドオーシャンズのメンバーがいて、俺たちに共闘を持ちかけてくるんだ。

こっちとしてはデメリットがないため受けることが多いんだが、今日の組んだ相手は珍しいことにそれなりに攻略を進めると、


「すまん。俺たち、用事があるんだった。離脱して良いか?」


「まだ俺たちだけでも対処できる階層だから構わないぞ。気にせず行ってくれ」


「悪い。助かる」


早々に去って行ってしまった。

その背中を見送ると俺たちは首をかしげて、


「何が狙いなんだ?」


「さぁ?今までも何がしたいのかよく分からなかったもんね。勧誘は良くされるけど、それが目的だとも思えないし」


「明らかにさっきの人の動きは不自然だったっすし、何かが起きることは間違いないと思うっす」


「どうする?いったんダンジョンから出るか?」


「えぇ?ここまでわざわざ来たのに」


向こうの目的は分からない。

だが、だからと言ってそれを理由に帰りたくもないというのがパーティーの相違だった。

もちろん、個人個人でその思いの強さは違うけどな。特に、メリーなどはものすごく嫌そうな顔をしている。

それには当然理由があって、


「このダンジョン、毎回1階層から進まなきゃいけないのは確かに疲れるよな」


「戻りたいと思って戻れるようなものでもないしね」


「メリーは歩幅が小さいっすし、ここまで歩いてくるのも大変そうっすもんね。転移して移動していければいいんすけど」


「人が多すぎて、そんなことしてたらバレるでしょ。アタイもできるならそうした~い」


「気持ちはよく分かるが勘弁してくれ」


このダンジョンには、転移なんて便利な機能は搭載されていない。

どの階層まで行くのにも足を使って入り口から向かう必要があるし、それこそ噂の100階層なんてところまで行くことになれば相当な距離を移動しなければならなくなる。

それだけでかなり時間は取られるはずだし、実をいうと下層の方はあまり利用する探索者が多くなかった。


「ここまで来たんだからもっと倒したいって思っちゃうよね」


「だな…………あまり考えたくはないが、そう思わせることがブラッドオーシャンズの連中の目的だったりするか?」


「どういうこと?アタイたちにそう思わせて、あいつらに何か利益があるわけ?」


「そうだな。例えば、圧推に接触したかったとかは考えられるぞ。俺たちがいない間に、あの運転技術を持つ人間をスカウトしたいと思ったのかもしれない」


「あぁ~。決行運転技術が高いことはバレてるもんね。実際、向こうは追ってきてた車とかバイクとか軒並み引き離されたわけだし」


そう考えると、向こうの作戦は上手くいっているように感じる。

そうと決まったわけではないが、何にしてもあいつらが考えることはろくな事ではないだろう。


「でも、アタイたちに敵対しないんじゃなかったの?この間のわびでそういう話になってなかった?」


「確か、あいつらが出した条件は俺たちに害をなすような依頼を受けないということじゃなったか?あいつらが個人的に敵対するようなことは特に何も制限していなかったような気がする。それにそもそも、圧推の勧誘に関しては明確な敵対行為とも言い切れないからな」


「スカウトを敵対行動ととるかどうかはやられた側次第だからねぇ」


それこそ探索者のクランで引き抜きやらはよくあることだ。

それを明確な敵対行為だと言って通用するのかは分からない。


なんて、俺たちは様々なリスクを考えていた。

いや、考えていたつもりだった。

しかしそれは甘かったと言わざるを得ない。


なぜならば、


「あれ?人の気配がかなり近づいてきてる。相当な量だよ」


「大量の人?」


それがどうかしたのか、と言うのが俺たち全員の気持ちであった。

大量に人が来るなんて珍しい事ではあるが、俺たちへの影響はよく分からない。

しかしすぐに感知した増華は気づくことがあり、


「っ!人同士で争ってるっぽい!このまま降りこられると、もしかしたら私たちも巻き込まれるかも!」


「おいおい。人同士の争いって、ブラッドオーシャンズの連中くらいしか考えられないぞ」

「さっきの人たちがすぐに戻って行ったのって、これを思い出したからなのかな?」

「何にしても厄介っすね。早めに人が少ないところにメリーの転移で連れて行ってもらった方が良い気がするっす」


リスクはあるが、メリーの転移で上の方の襲撃に関わってなさそうな階層に飛ばしてもらった方が良いのではないかと思えてきた。

これをした場合増華の探知が通用しないくらいには上の方の階層に行って即座に近くのモンスターを排除しなければならないんだが、それには当然人に見られるというリスクが伴うわけだ。


「背に腹は代えられないか。あいつらも、やるなら教えてくれって話なんだが」


「だね…………あれ?」


「ん?メリー?どうかしたか?」

「メリー、早くしてくれないと鉢合わせちゃうっすよ?」


「分かってる。けど、転移が上手く発動してくれない」


「…………なんだと?」

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