45鬼 振り返り
さすがに大手のクランのボスからわびとしてもらったものなだけあって、俺たちがもらった装備品の質は違った。
それはもう、今までの装備がカスのように思えてしまうくらいだ。
「これ、成長につながってんの?武器の性能のごり押しじゃない?」
「さぁな。まったく成長しないとは言わないが、俺たちの実力に見合ってないことは確かだろう。だが、それでも物は使いようだ。わざわざ強いアイテムを縛る理由なんてない」
「いくらアイテムが強くて相手を倒せても、いつかは実力面で壁にぶつかるっすからね。きついと感じたらそこから頑張ればいいんすよ」
「実力をつけるのは大事だけど、それにばっかり固執するのも良くないからね。今1番必要なのを考えたらいいでしょ」
「今必要な物ねぇ…………なんだろう?」
メリーが今のやり方に疑問を覚えてしまうのも無理のない事だった。
始めたての頃は転移による無双に武器の性能によるごり押し、更には麻痺と言う力も相まってっ敵などいないに等しい状況だった。
しかし、少しずつ敵は強くなり自分たちの実力不足を感じ始め、先日の対人戦でそれは絶対的なものとなった。
相手との実力差を感じたにもかかわらず、その実力を上手く上げられそうにないと思うわけだな。
ただ、俺たちに必要なものが必ずしも実力だと言い切ることもできない。
それこそ、新しい仲間が来ればさらに安定感は増すかもしれない。それこそ増華に頼っている探知系統はやはり本職の仲間を作って任せるべきだとも思うんだ。
「本当に必要な物は、戦ってれば見えてくんじゃないか?それに、俺たちが全員そろっているからこうして難易度の高いダンジョンに潜っているだけで、自分の実力を鍛えるのは個別に潜るときで良いだろ」
「そうかな?そうかも」
メリーはなんとなく俺の説明で理解した気になってくれた。
ただ、俺としてはメリーの言葉には思うところがある。かなり強く、俺の心には残っているな。
「必要で言えば、圧推との連携も一度練習してみる必要があるのではないかと思ってる」
「圧推と?」
「そう言われてみると、確かに一緒に何かするってことは今までなかったっすね」
「ああ。だが、この間みたいに圧推でも逃げられない状況になった時、俺たちだけで戦うよりも圧推も一緒に戦ってもらった方が楽になることは間違いないと思うんだよな。圧推のあの質量による突撃は、俺たちとは比べ物にならない火力になるはずだからな」
「確かに。あの大きい悪い人に止められちゃったからそう思えなかったけど、圧推の体当たりが弱いわけがないもんね」
「その発想はなかったっすね。言われてみれば、連携がとれるようになったら格段に変わるのは間違いないように思うっす」
俺は今までずっとダンジョン内でどう戦うかだけを考えてきた。
だがこの間ブラッドオーシャンズに襲われた時のことを考えると、ダンジョン以外での場所の戦い方も考えた方が良いと思ったんだ。
特に乗り物に乗っている相手との戦い方なんて、考えたこともなかった。圧推に乗っていない状態でバイクや車に追いかけられたりすれば、俺たちがは咄嗟に最適な行動をとれるか分からない。
「それで言えば、結局まだメリーの転移の事もまだ理解を深めないといけないんじゃない?他の人も一緒に転移できることは分かったけど、それだけが気づいてないことだとも限らないし」
「そうっすね。他のメリーさんに接触とかできれば情報収集ができるかもしれないっすけど」
こんなダンジョンの中で話すことではないが、それでも俺たちに足りないものが見えた気がした。
やっぱり、ある程度全体で話し合いをしてみる事って大事だな。
今度、また圧推やモベヤとも話をしてみよう。
「オイラは圧推と模擬戦もしてみたいっすね。多分、ベビーカーとかになってもらえればそこまで危険はないと思うんすけど」
「連携の事を考えるとある程度圧推の実力も把握しておく必要があるし、悪くないかもな。圧推にも聞いてみよう」
色々と考えることがあった。
だから今日は、
「よし。切り替えて全力で攻略するぞ!変なことをごたごた考えてて負けるなんて目も当てられないからな」
「了解!」
「それもそうっすね。今できる全力を出すっす」
「ふはははっ!アタイが全部倒してやるんだから!!」
全力でダンジョン攻略に挑むことにした。
メリーの転移能力は確かに有用だが少し奥に進むと数も増えてそれだけではどうにもならなくなる。
そうすれば廻場もタンク役として動ける機会ができれるし、ダストの捕食の時間もある。
増華だって剣を振り下ろすタイミングがあったし、俺も妨害に徹することができた。
「どんどんこ~い!!」
「全滅させてやるっすよ!」
「私の攻撃を防げるとは思わないことだね!!」
「お前ら、テンション高いな。あんまり大声を出してると、モンスターが寄ってくるぞ?」
「「「1人だけ冷静みたいなこと言うのやめてくれる(っすか)!?」」」
簡単に倒せるとはいえそれなりに強い相手だからレベルも上がるし、基礎的な力自体はついたな。
後はこれを上手くいかせるように調整していくことにしよう。
焦らず、じっくりとだ。
内省の時
それは嵐の前の静けさ(キリッ!)




