決着のティーパーティー②
「アイリーン。僕の可愛い人。どうか僕に貴方に心を捧げる許しをくれないか。」
重ねられるシャルル様の言葉に、顔が赤くなるのを感じる。
「アイリーン。伝えたい言葉があるんだ。」
真剣な表情でこちらを見上げるシャルル様は、優しい瞳を揺らしていて、シャルル様も緊張しているようだと気付いた。
そのことに少し落ち着きを取り戻し、ロッテの言葉を思い出した。
「…許し、ます、わ。」
万感の思いを込めた言葉は、あまりに重くて震えていた。無様でその事にも赤面してしまったが、シャルル様があんまり嬉しそうに微笑むのでそれどころではなくなった。
「感謝します。」
手の甲にシャルル様の口付けを受けた瞬間、今度こそ私のキャパシティは限界を迎えた。
キャパシティを越えた私は、ポンコツと成り果てた。そんな私をシャルル様は甘やかすばかりだった。
婚約解消騒動について何故だか大公家の若様から謝罪を頂いたけれど、ポンコツ状態の私はただひたすらに恐縮することしかできなかった。
間近で見る若様の容貌に圧倒され、思わずそっと縋るように身を寄せてしまったときも、少しばかり驚いた様子だったけれど、シャルル様は微笑むだけだった。
それから劇的に何かが変わったということはない。
むしろ今まで通りで、だからこそ私はディック様やロッテを呆れ果てさせてしまった。
「…つまり元からシャルルはアイリーン嬢へと求愛行動をしていたというわけか。」
「そのようですわねぇ。何だってこう拗れたのかしら。楽しそうで羨ましいことですわ。」
そうなのだ。シャルル様は以前と何も変わらない。
気付いてしまえば、何故今まで頑なだったのだろうと自分に呆れるばかりだ。
言葉こそなかっただけで、以前もシャルル様はその行動で、その仕草や表情で、私を想っていることを伝えてくれていたのだ。言葉をくれた今とあまりに変わらないそれらが何よりの証拠だ。
二人の言葉に沈黙を通す。というより、返す言葉がないとは全くこのことだ。
生温かい視線を受け流していると、ディック様はくすりと笑い、ロッテも小さく微笑んだ。
「それで、肝心のシャルルはどこにいるんだい?外堀ばかり埋めて満足していたあいつを笑ってやらなければ。」
シャルル様は相変わらず、領地経営に熱心だ。
最近は何でも内紛中の国から研究者の亡命を密かに請け負い、見返りとして研究成果を横流ししてもらっているのだとか。危なくないのかと心配だけれど、領民達と熱心に何やら話し込んでいる様子は生き生きとしている。
「…お金儲けが趣味なのは変わりませんね。…それで。結局、何と言って頂いたのかしら?」
ロッテの目が面白そうに笑っている。
「…なんのこと?」
「…あらあら、アイリーンったら。そんな風に顔を赤らめてしまって。シャルル様も全く隅に置けませんことね。」
シャルル様から何と言葉を言って頂いたかは割愛したい。大切なものはしまいこむ質なのだ。
ただ、私の心の一番大切なところにあった約束事はあっさりとその場所を譲った。
あまりに長く居座っていたそれが私の中から完全に消えることはなさそうだけれど、意味が変わったそれは私の心を痛めることはもうない。
以上が、私の身に降りかかった「真実の愛」と「婚約解消騒動」の顛末である。
お付き合い頂きありがとうございました。
お時間などありましたら感想等頂けますと幸いです。
次回「ティータイムパーティーR」
再び訪れる学園の危機!イカれた茶会が終わらない!?永遠に席替えをするしか術がないなか、一人の少女が立ち上がる。愛を知らない少女ロッテが見たものとは…!?
等と下らないことを言い続けていたいものです。




