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音ノ話  作者: 吉高 都司
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10/10

拾音

「ゴトリ」大きな音がした。

 その箱は昔からあった。


「ゴトリ」何か蠢いているような音だ。

 物心ついた時にはすでにあった。


「ゴトリ」その音がする度。

 ある日いじめられて帰って来た、理由はもう覚えていない、ただ、本当に嫌な事をされたと言う記憶しかなかった。

 その翌日、そのいじめ蛸が行方不明となった。朝から警察や保護者、学校の関係者が総出で探していたようだった。

 結局行方不明、神隠しにでもあったのではないかと、実しやかにささやかれていた。


「ゴトリ」またあの不気味な音がする。

 笑顔の素敵な娘だった、好き同士で高校時代は華やかだった。

 が、退屈な男だと言う理由で、顔も知らない社会人に盗られた。

 罵ったが、心は覆らなかった。愛していたのに。

 ある朝、その母親から連絡があった。昨晩から帰っていないと。捨てられた俺からすると、どうでもよかった。本当に。

 海岸で二人の死体が上がったと言う噂が町中に広まった。ざまあみろと思った。


「ゴトリ」重い音がまた響く。

 親が早く身を固めろとうるさい、三つ離れた弟は早くに身を固め、親子三人で仲睦まじく暮らしていると言う。が、義理妹のあの蔑んだ目は忘れない。ある日、泊りで弟一家が実家に遊びに来た時、たまたま偶然義妹の着替えを覗いてしまった。そこからまるで下等動物を見るような目で見るようになった。いくら謝罪しても、それが覆ることは無かった。

 ある日、弟一家が突然行方不明となった。警察やこっちの実家。向こうの実家も合わせて主に立ち寄りそうなところ、心当たりを探したが、迷宮入りとなった。そもそも成人の行方不明者の捜索はほとんどあってない様なものだと聞く、よっぽど事件性が無ければと聞く。


「ゴトリ」また響く。

 親がうるさくなった、俺が何をしたと言うのだ、家にずっと引きこもっているからか?弟一家がいなくなって余計にうるさくなった。ある日静かな朝を迎えた。誰も何も言われない日々がこんなにも清々しいとは思わなかった。

 親の部屋に言っても昨日までそこで生活していた痕跡が生々しく残っていた。が、一向に気に止めなかった。ある日近所の人たちと警察が俺の家に訪問してきた、事情聴したいと言う、任意だからという割には強制的に警察に身柄を拘束された。留置所でぼんやり考えた。もう誰も居なくなればいいのに。


「ゴトリ」箱から音が鳴り、動いた。

 明くる朝、静かだった。

 警察署の中には誰一人、人が居なくなった。

 外に出た。

 誰も通らない。歩く人もいない。車も通っていない、近くのコンビニも店員はおろか買い物客さえいなかった。

 益には絵金、朝のラッシュ雨の主役の会社員、学生の姿。人の姿も誰もいなかった。

 清々しい朝だった。


「ゴトリ」箱から音が鳴って。


「ゴトリ」

 棺桶の閉まる音がした。

 親が神妙な面持ちで最後の別れを彼にした。

 弟一家も、義妹も含め、もっと労わってあげればよかったと、後悔の念で憔悴していた。

 高校の同級生は、誤解を招く事をして、彼の事で親戚の従兄に相談に乗ってもらっていたと言う謝罪の言葉で彼に追悼していた。

 ケンカ別れした幼馴染の訃報を聞いて、飛んで帰って来た幼馴染は誤解のまま、分かれたことに後悔しきりだと言う。


「ゴトリ」箱の蓋は閉まったようだった。


 本当のホラーは真実が分からない内に、本人の意図することとは全く違う結末を迎える事だろうか。


 そう、あなたの箱は今、どうでしょうか?


「ゴトリ」、と音を立てる前に。


目を通していただき誠にありがとうございます。

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