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第一章 【09】 魔生樹①

〈ヒビキ視点〉


(う〜ん……こっち、か?)


 背の高い、茂みをかき分けて。


 草生くさむした地面に、視線を注ぎながら。


(……いや、たぶんこっちだな。こっちのほうが、なんか、真新しいっぽいし……)

 

 眉根を寄せて。


 頭を悩ませる豚鬼オーク……ヒビキが。


 異世界に、転生を果たして。


 四年余りが、経過していた。


(頼むぞ頼むぞ、正解で、あってくれよ……)


 大和国ヒノモトの武人である鬼人オーガン……テッシンに。


 師事することで。


 本格的な魔力鍛錬を、開始してからは。


 二年ほどとなる。


 その間も。


 勇聖教会による人造生命体ホムンクルスを、素体とした。


 豚鬼オークとしての肉体は。


 通常に、倍する速度で。


 成長を続けている、うえに。


(……おっ。よっしゃよっしゃ、足跡はっけ〜ん! ヒビキ隊員、このまま追跡を、続行するであります!)


 豚鬼とは。


 鬼人の中でも、とりわけ。


 発育と体格に恵まれた人種、ということもあって。


 幼少期から、計画的に。


 肉体作りに勤しんできた、ヒビキの上背は。


 現時点で、百五十センチを超えており。


 恰幅の良い、力士体型に。

 

 たっぷりとした、筋肉を。


 備えていた。


(……うん。匂いもだんだん濃くなってきているし、順調順調っ♪)


 そのような。


 逞しい、体格のうえに。


 猪と人と、足して二で割ったような。


 野生味溢れる頭部が、備わっているのだ。


(普段は酷すぎて、笑えない豚ヅラだけど……こういうとき高性能ハイスペックな嗅覚は、助かるよな〜)


 ヒクヒク、と。


 潰れた豚鼻を、ひくつかせながら。

 

 ヒビキ本人が、内心で。


 自嘲するように。


 堂々と、天を衝く。


 生来からの、硬質な頭髪は。


 さながら、怒髪天モヒカンの如きであり。


 鋭い三白眼は、相手を威嚇するような。


 威圧感を、湛えている。


 そこに、下顎から天に向かって伸びる。


 雄々しき二本の鬼牙きばが、加わることで。


 溢れんばかりの、暴力性を。


 激しく、主張していた。


 総じて。


 転生者ヒビキの感性としては。


 凶悪と称することに、躊躇いのない。


 堂々たる強面こわもての、完成である。


(ま、今は目の前の修行に、集中集中っ!)


 そのような、凶悪犯じみた容姿の豚鬼オークが。


 今朝方から、すでに三時間ほども。


 鬱蒼と樹々が生い茂る、森の中を。


 魔獣の痕跡を、追跡するかたちで。


 黙々と、歩き続けているのだ。


「……」


 そして先導する、ヒビキの。


 一挙一動を。


 背後から無言で、観察するのは。


 黒装束を纏った、狐人フォルクスの女性……カエデであり。


「……」


 さらにその、後方では。


 天使の如き容姿をした少女……マリアンが。


 ペタペタ、と。


 裸足の足音を、響かせている。


「……」


 とはいえ、この数時間ほどは。


 ヒビキから、彼女たちに。


 話しかけたことはない。


 なにせカエデは。


 こうして、同行こそしているものの。


 此度の『修行』においては、『見届け人』という。


 厳正な立場であるために。


 試されている側の、ヒビキとしては。


 軽率に、声をかけることが。


 はばかられてしまうのだ。


「……」


 そしてマリアンは、いつも通りの。


 単なる粘着者ストーカーなので。


 もとより、会話をするつもりがない。


 結果として。


「……」


「……」


「……」


 誰一人、口を開くことなく。


 少年と女性と少女が、一列となって。


 野生動物が息を潜める、深い森の中を。


 ただ、ひたすらに。

 

 黙々と。


 歩き続けているのだった。


「……」


「……」


「……」


 そのまま、さらに。


 小一時間ほどが、経過して……


「……ヒビキ殿」


 じきに、太陽が。


 中天まで登ろうかという、頃合いに。


 暫くぶりに、カエデの声が。


 背後から、聴こえてきた。


「……ん? どうかしたましたか?」


 呼び止められて。

 

 立ち止まったヒビキが、振り返ると。


「まもなく昼時ですが、目的の『魔生樹』は、発見できそうなのですか?」


 本日ヒビキが、師匠より言い渡された。


『魔生樹の討伐』という、修行において。


 その撤収時刻タイムアップが、日没だとすれば。


 帰路の時間を、逆算して。


 いい加減に、目標までの目処が。


 ついていなければ、不味い。


 時間帯である。

  

「ウッス。魔獣の追跡は、いちおう、できているはずなんで……このままいけば、あと一、二時間くらいで、探している魔生樹を見つけられると思ってます」


 カエデから求められた、進捗報告に。


 やや、自信なさげでは、あるものの。

 

 ヒビキが自分なりの、見解を示せば。


「……そうですか」


 返ってきた、反応は。


 じつに、素っ気ないもの。


(ん。でも、この感じだと……)


 とはいえ。


 テッシンの家臣である、彼女とは。


 それなり以上の、長い時間を。


 共有してきた、ヒビキだ。


 今更その心情を。


 汲み損なう、こともない。


(……よしよし。どうやらここまでの追跡は、間違っちゃいないっぽいな)


 東洋風の、美人である。


 カエデの表情、そのものは。


 基本的に、変化が乏しいものの。


 獣人ライカンとして生まれ持った、獣耳や尻尾などは。


 見慣れてしまえば、わりと。


 感情表現が、豊かであるために。


 狐耳の、張り具合や。


 尻尾の膨らみ程度などから。


 自身の見立てが、外れていないことを。


 察することができた、ヒビキである。


「で、でしたらその前に、ここで腹ごしらえなどを済ませては、いかがでしょうか!?」


 すると、機を伺っていたマリアンが。


 敏を察して、会話に入り込んできた。


「はあ? なんでアンタに、ンな指図されなきゃ、なんねえんだよ?」


 もはや、脊髄反射として。


 反発してしまう、ヒビキだが。


「んみゅっ!?」


 相変わらず、大袈裟に。


 目を見開く、マリアンはさておき。


「……っ、い、いえ! ここはマリアン殿の言に、理があるかと!」


 やや、慌てた様子で。


 首を横に振った、カエデから。


「差し出がましいとは思いますが、ヒビキ殿は出発から、一度も休息を挟んでおられません。急く気持ちはわかりますが、目標までの目処が立っているのであれば、尚更に、この辺りで万全を期しておく必要があるのでは?」


 彼女にしては珍しく、饒舌に。


 正論を、説かれてしまえば。


「……ウッス。じゃあ、仕方ないっすね」


 渋々ながらも、休憩を。


 選択せざるを、得ない。


 ヒビキである。


 なお、そうした判断に。


「……ほっ」


 人知れず、カエデが。


 小さく胸を、撫で下ろしていた。

 

「そ、それでしたら……どうぞ、こちらを!」


 すると……みょんっ、と。


 前触れもなく、唐突に。


 何もない空間が、波打って。


 手元に生じた、不自然な『揺らぎ』に。


 手を突っ込んだ、マリアンが。


 取り出してみせたのは。


「はいっ! まだ温かい、お肉ですよ!」


 じゅうじゅうと、肉汁の滴る。


 先日の夕餉に、供されていた。


 香草焼きの、肉串である。


(……ッ!)


 思わず、グビリと。


 口腔に、生唾が湧いて。


 胃袋が空腹を、訴えようとするものの。


「い、いるかよ、ンなもん! こっちはちゃんと、携帯食を持って来てんだ!」


 腰に巻きつけた、携帯鞄ポーチから。


 取り出した干し肉を、口に放り込んで。


 バキバキと、咀嚼することで。


 腹の音を、誤魔化してしまう。


「だいたい今は、修行の最中なんだから、余計な真似すんじゃねえよ!」


「で、ですが……」

 

「いいから! 邪魔すんなら、帰れって!」


「……んみゅう」


 それきり強引に、会話を終わらせて。


 手頃な岩場に、腰を下ろしながら。


 ガツガツと、硬い干し肉を。


 噛みちぎる、ヒビキの姿に。


「……ごめん、なさい」


 表情を曇らせたマリアンが。


 小さく、呟いて。


 取り出した時と、同様に。


 空間を、たわませながら。


 彼女が創り出した、異空間へと。


 肉串を、収納するのだった。


(……ったく。希少レアな魔法を、しょうもねーことに使いやがって!)


 基本的に、ヒビキの前では。


 猫被りをしているようだが。


 聖人などという、ご大層な二つ名で呼ばれていたらしい、マリアンは。


 じつはそれなりの、実力者であるうえに。

 

 極めて希少な、魔法体系とされる。


 空間魔法の、使い手であるらしく。

 

 潜伏生活を送る、テッシンたちは。


 随分とそれに、助けられているらしい。


 とはいえ。


 常日頃から。


 マリアンを邪険に扱っている、ヒビキとしては。


 都合のいい時だけ。


 それに、甘えるような真似など。


 したくはないというのが、本音であった。


「……」


「……」


 そうして、再び訪れた。


 気まずい沈黙に。


「……っ!」


 キリキリ、と。


 痛む胃を、堪えるようにして。


 狐尾を胴体に巻きつけた、カナデが。


 苦い表情を、浮かべている。


(……クソッ、いい加減に、諦めてくれよ!)


 そんな、クノイチの姿を。


 視界の端に、収めつつも。


 かつて、一方的に。


 マリアンを拒絶した、ヒビキは。


 今さら、何事もなかったかのように。


 接することなど、できはしない。


 過去の棘は、未だに。


 転生者の、心の深い部分に刺さって。


 血を、垂れ流しているのだから。


 それでも。


(つーか、なんでコイツは、ここまでされても、俺に付き纏ってくるんだよ!? 二年以上も塩対応され続けりゃ、普通、心が折れるだろ!?)


 どれだけ、手酷く扱っても。


 どんなに強く、突き放しても。


 怒鳴っても。


 罵っても。


 醜態を晒しても。


 今日もこうして、頑なに。


 側を離れようとしない、マリアンに。


 流石にヒビキとて、不快感以外にも。


 思うところが、ないわけではない。


(ったく、勇聖教会もとさやでどんだけ甘やかされれば、こんなワガママ娘が、育っちまうのかねえ!)


 わかっている。


 本当はヒビキとて、理解し始めているのだ。


 マリアンは、強い。


 聖人としての、力量もそうだが。


 なによりも心が、強いのだろう。


 それはもはや、信念。


 あるいは狂信、などと。


 表現すべき、在り方であり。


 少なくとも。


 そのような気概や、覚悟がなければ。


 古巣である只人ヒュームの国から、単身で飛び出して。


 誰にも望まれていなかった、ヒビキを産み。


 本人から憎まれていると、知りつつも。


 甲斐甲斐しく、世話を焼く真似など。


 できるはずがない。


 強い。


 強過ぎる。


 それが正しいことなのかは、さておくとして。


 前世の傷口から、目を逸らし続けている、ヒビキからすれば。


 まばゆくて。


 直視できないほどの、強さである。


(……そんな人間が、俺なんかにいつまでも、構ってんじゃねえよ! うざってえ!)


 そうしなければ。


 このまま、ズルズルと。


 マリアンに、絆されてしまえば。

 

 いつか自分は、きっと。


 彼女のことを……


「……あ、あの、ヒビキ殿?」


 ふと、気づけば。


 物思いに耽っていた、ヒビキの側に。


「大丈夫ですか?」


 いつの間にか。


 移動していた、クノイチが。


 心配そうな視線を、向けている。


「……んっ! んんっ!」


 どうやら彼女は、その背後で。


 小さな拳を、握り込んで。

 

 鼻息を荒げる、少女に。


 急かされた、ようだった。


(〜〜〜っ! あのヤロウ……さっき口喧嘩したばかりだからって、カエデさんを、盾にしやがったな!?)


 一瞬で状況を、理解するものの。


 だからと言って。


 普段から何かと、お世話になってしまっている、カエデのことを。


 やはり、ヒビキは。


 無碍には、できない。


「ええ。まあ、ちょっと……このあとの段取りなんかを、考えてたんで」


 なので。


 適当な言葉で、言い繕うと。


「成程。ですが、そこまで気負ってしまうと、むしろ逆効果なのでは?」


 カエデとしても。


 この気まずい空気に、耐え難かったのか。


 ヒビキの腰かける岩場に、腰を下ろして。


 話題を、広げてくれた。


「僭越ながら、口出しをさせていただくなら……不要なりきみとは、かえって実力を、阻害してしまいます。肝要なのは、焦ることなく、自分にできることを、ひとつずつ、着実に、こなしていくことかと」


 淡々と、言葉を積み重ねる。


 表情の乏しい、狐人であるが。


 その、声音と。


 視線には。


 確かな親愛が、滲んでいる。


「ウッス! ありがとうございます、カエデさん!」


 異性からの、温かな気遣いを受けて。


 自然と、鼓動が弾んだ。


「でも師匠は、こうした『魔生樹の討伐』を、大和国ヒノモトでは『一人前となるための通過儀礼に過ぎぬ』だとか、抜かしてませんでしたっけ? ならやっぱりその弟子としては、ここはサクッと合格を決めて、目にもの言わせてやりたいわけなんですよ!」


 そのため、つい。


 少しばかり、強がって。


 見栄を張って、しまうのは。


 健全な男性として、仕方のないことであった。


「え、ええ……まあ、それは、そうですが……」


「……?」


 なのに、何故か。


 歯切れの悪い反応が。


 若干、気になったものの。


「……いえ、そうですね。ええ、その通りですとも。お館様の判断に、間違いなどあり得ません。お館様がそれをできると見込んだのなら、やはりヒビキ殿には、それができるだけの力が、備わっているのでしょう」


 なにやら、自分の中で。


 得心したらしい、カエデが。


「なればせつの小言こそ、不要でしたね。いや申し訳、ありませんでした」


 ペコリと、頭を下げてくる。


「いえいえ! こうして心配してくださっているのは、有難いですから! マジで!」


 慌ててヒビキが、謙遜してみせると。


「ま、ママも! ママもヒビキくんのこと、応援しておりますので! 頑張ってくださいね!」


 すかさずマリアンが、便乗してきたので。

 

「いや、それは別に、いらねえよ」


 こちらは冷たく、あしらうことで。

 

「んみゅうっ!?」


 秒で、半泣きとなってしまった。


「……」


 すると……じっとり、と。


 なにやら物言いたげな視線を。

 

 横手から感じてしまう、ヒビキである。


(……う〜ん。こいつに、忖度するのは、癪だけど……)


 だとしても、だ。

 

 せっかくカエデが、気を遣って。


 ここまで流れを、変えてくれたのだ。


 自分だけが強情を張って、木阿弥とするのは。


 流石に、気が引けてしまう。


(……はあ。まっ、しゃーねーか)


 心中で、嘆息しつつ。


 自分の中で、折り合いを、つけながら。


「だからまあ……アレだ。変に騒いだりせずに、今回は、大人しく見るだけにしとけよな」


 助力などを、求めはしないが。


 退去までは、望まないという。


 消極的な譲歩を、提示すれば。


「……っ!」


 シャッキーン、と。


 萎れていた、背筋が伸びて。


「わ、わかりましたっ! ママは絶対に、手出しなんて、しませんから! ヒビキくんの勇姿を、しかとこの目に焼けつけることだけに、専念いたします!」


 曇りかけていた表情から、一転。


 満面の笑みを、浮かべてみせる。


 マリアンである。


(……これでいいんですよね、カエデさん?)


 眼前の、無邪気な笑顔から。


 目を、背けるようにして。


 ヒビキが視線を、カエデへと向ければ。


「……」


 小さく、頷いて。


 目を細めてみせる、狐人であった。


(う〜ん……これはまた、なかなか……)


 そんな、普段は素っ気ない女性が。


 垣間見せる、笑顔の破壊力に。


 つい、見惚れてしまう。


 豚鬼であるが。


(……でもカエデさんって、師匠の『お手つき』だからなあ……)


 その胸の高鳴りは、残念ながら。


 好意以上に、育つことはない。


 なにせ、カエデを含めた。


 テッシンの世話を役目とする、従者クノイチたちは。


 全員が、主人の夜伽に。


 自らの身体を、捧げているのだから。


 芽吹いた種が、花開く可能性は。


 残念ながら、皆無ゼロである。


(……はあ。なんでこんな、器量良しさんが、あんなズボラな師匠なんかと……はあああああっ!)


 そして血の気が多過ぎる、ヒビキの師匠は。


 男性としても、まだまだ旺盛であり。


 そのうえ大和国ヒノクニとは、性に関して。


 わりと大雑把な、お国柄であるらしいので。

 

 四年以上に及ぶ。


 共同生活において。


 たびたび、そういった『現場』を。


 目撃してしまっている、ヒビキとしては。


 不意打ちで、網膜に焼き付いてしまった、女たちの艶姿に。


 悶々と、過ごした夜が。


 なかったわけではない。


 しかし。


(でっ、でもまあ! カエデさんぐらいの見た目だと、俺のストライクゾーンにはまだ全然、届いてねえんだけどな! だからべつに、悔しくなんてねえし!)


 前世を含めた、ヒビキの精神年齢が。


 二十代の、半ごろだと程度とすれば。


 カエデの外見は、二十歳になるかならないか、といったところ。


 年齢の割に、大人びてはいるものの。

 

 年上好きを、自称する身としては。


 物足りないのは、事実である。


(っていうか、そもそも、童貞風情がなにを偉そうに、オンナの選り好みしてんだってハナシだけれども!)


 ちなみに、ヒビキは前世も含めて。


 当然ながら、今世においても。


 いまだに女性と、性交はおろか。


 交際経験すらない。


 正真正銘の、童貞であった。


(……いやマジで、切実に、この身体の『相棒』が目覚めたときに、俺は今度こそちゃんと、童貞を捨てられるのかねえ……)


 肉体の、実年齢の所為なのか。


 はたまた人造生命体ホムンクルスの特性なのかは、不明だが。


 いまだ性に目覚めていない、今世の肉体が。


 本格的に異性を、求めるようになったとき。


 果たして自分は、己の『ムスコ』の期待に。


 応えることが、できるのだろうか。


 不甲斐ない『本体』としては。


 甚だ不安である。


(でもなあ……せっかく前世から、来世まで、後生大事に残しちまった童貞なんだ……せめて最初くらいは、ちゃんと俺のことを好いてくれる人に、お相手を願いたいんだけどなあ……)


 とはいえ、それを果たすには。


 この凶悪極まる、豚ヅラが。


 あまりに、重荷ハンデ過ぎる。


「……はあああ」


 絶望的な現実を、直視して。


 重たい溜息を、吐き出すと。


「……ヒビキ殿?」


 今度は、不審げに。


 カエデが首を、傾げていた。


「……っ、いやいや、なんでもないですから!」


 慌てて、取り繕いつつ。


 おもむろに、岩場から立ち上がって。


「それよりも、もう、休憩は十分じゃないですかね!? そろそろ出発しましょうよ!」


 強引に。


 魔生樹の探索を、再開すると。


「おー、出発、進行ですねーっ!」


 上機嫌ハイテンションな、マリアンが。


 すぐに、付き従ってきたことで。


「……?」


 不思議そうに、首を傾げつつも。


 カエデも疑問を、置き捨ててくれたようだ。


「よろしい。では参りましょうか」


「ウッス! 任せてくだい!」


 そうして、再び。


 ヒビキが一行を、先導するかたちで。


「ふれーっ♪ ふれーっ♪ ヒっビキっくんっ♪♪♪」


「……ふふっ」


 先ほどよりも、少しばかり。


 距離の縮まった、女たちが。


 深い、森の中へと。


 歩を進めて、いくのであった。


【作者の呟き】


 ちなみに前世では、同居する義妹ちゃんの監視が厳しくて、そういうお店には行けない義兄ちゃんでありましたとさ。  

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