プロローグ
処女作、中一作品、亀更新、ハーレム無し、これらを許せる方だけどうぞ。
今日は、中学の卒業式。
まだ春に成りきれていないのか、未だ少し肌寒さを感じる体を両腕で摩りながら、俺はそんな事をぼんやりと考えていた。
桜の木の近くに居るからか、俺の周りには無数の花弁が舞っている。この木は、普通より早めの時期に植えられたらしいので、普通の桜の木より早く咲き、早く散る。その姿が今の俺の目には酷く幻想的に見え、そこにフワリと風が吹けば、更に魅惑的な一面を見せる。そんな様々な一面を見せるその残酷なほどに美しい桜を見ていると、思わず意識が持って行かれそうで、頭がクラクラする。
後ろから俺を呼ぶ友人の叫び声が聞こえるが、その声を全力でスルーしていると、今度は少し怒った様な声が聞こえてきた。
「何度も呼んでんのに、無視するとは何様だ!」
「刹那様だ」
「ドヤ顔で言うなよ!」
「うるさい」
俺の隣でギャーギャー叫んでるのは、幼馴染であり、(自称)俺の親友だって言ってる山吹爽耶。
俺からしてみればただの腐れ縁だが、あいつは面白可笑しく解釈している。いわゆるバカだ。しかも重度の。
だがその分、運動はかなり得意でバスケ大好きのバスケバカだ。バカなのに変わりは無いが、顔は兄貴っぽいイケメンなのに、実に残念な奴だ。ちなみに容姿は、ふわふわの茶髪に蒼い瞳。身長は180cmくらい。
俺は藤宮刹那。
黒髪黒目で、身長は普通より高め。……だと思いたい。こいつとは違ってバカではない。自分でいうのもあれだが、中学最後のテストでは、学年3位だったし。運動も、平均より少し上をキープしていた。
「クソクソ!女顔のくせに!!………あ」
「ほう……お前はそんなに死にたかったのか」
「い、いやそういう訳じゃなくて……」
その(俺にとって)禁断の単語を言った後、爽耶の顔が急激に青ざめていく。昔あいつにやったことを思い出したんだろう。
そう、俺は女顔だ。“中世的”なら良かったんだが、生憎俺の顔は“女”だ。従姉妹いわく、「モデルさんみたい!」だそうだ。その証拠に、買い物に行ったときモデルにスカウトされた。女性雑誌の。
爽耶も一緒に来ていたから、それ以来、こいつにからかわれ続けている。
しかも“刹那”という女らしい名前ときた。ここまできたら、からかわれるのは当然だと思っている。
あるとき、つい本気でキレてしまい、こいつに今までのストレスを(言葉で)ぶつけてしまった。そのときのこいつは、ぐったりしていて、目が虚ろだったのを覚えている。さすがにやりすぎたと思って、今のところあの一度だけにとどまっている。
「って、そういう事を話に来たんじゃなくて!!」
俺が独りでに物思いにふけっていると、爽耶は無理やり話題を変えてきた。よっぽどあの時のことがトラウマになっているんだろう。
「じゃあ、何しにきたんだよ。正直、早く家に帰りたいんだが」
そんなことをしゃべりつつ、俺達は二人で家に帰っていた。
俺達は幼馴染であるため、家がかなり近い。というか、隣だ。だからけっこう家族ぐるみの仲だったりする。不本意だが。
そう黙々としゃべりながら歩いていると、不意に俺より数歩前を歩いていた爽耶が、卒業証書の入っている筒を弄るのをやめ、筒を勢い良く宙に投げ、それをかっこよく空中でキャッチして見せると、くるりと俺のほうを向き、何故かキラキラさせている瞳を俺に向けてきた。
「お前、“ノットリミットアドベンチャー”って知ってるか?」
「ああ。かなり度派手なCMでやっているゲームだろ?」
「そうそうそれそれ!そのゲームが、今度の日曜に発売されるんだよ!!」
“楽しみだなー!”と、こいつは言っているが、俺からしてみれば別にどうでもいい。確かに面白そうだと思ったが、やりたいとは別に思はなかった。
だが、こいつは違うらしく、俺とは違ってもの凄く嬉しそうにしている。不思議だ。
「まあ、これから俺ん家来いよ!抽選で俺とお前の名前で送ったら、二枚とも当たったからさ!!」
“俺達、他の奴らよりも、一足早く出来るんだぜ!”と、あいつはもうすぐ高校生だというのに、今にもスキップしそうなくらい気分がいい。
それより……何故に俺の名前も使ったんだ。まあ、ツッコまないでおこう。
こいつは、俺とは違って自分の中で自己完結する事が多い。
相手に了承を取りにいく事があまりなく、自分の中で“こいつならきっと……”や“あいつなら多分……”と、勝手に相手の考えを思い浮かべ、それがいつしか相手が言っていたと思い込み、行動する非常に迷惑な奴だ。おかげで最近、胃がキリキリと痛む。
「まあ、明日から春休みだし、暇っちゃー暇だけど……」
「本当か!?そうと決まったら、猛ダッシュで家に行くぞ!!」
そういって俺の手をガシッと掴むと、勢い良く走り出した。
…………
結局、そのまま爽耶の家まで全力ダッシュした。呼吸が乱れ、しゃべりたくてもゼェゼェハァハァと息が乱れた音しかでない。
というより、元からバスケ部の元部長だった爽耶と走ろうだの、無理があったのだ。運動が中より少し上くらいしか出来ない俺に、方や運動部で元部長だった爽耶と一緒に走るだなんて、バカな話だったのだ。
掴まれていた腕が痛い。とりあえず原因となった奴をキッと睨むと、引き攣った笑みで“ごめん……”と返してきた。多少は突っ走ってしまったという自覚があるのだろう。
思わず溜息を吐くと、奴の笑みが余計引き攣ったような気がした。
「わ、わりぃ……。つい本気で走っちまった。大丈夫か?」
「……一回死んで来い。バカは死なないと直らないらしいからな」
「普通そこは悪口じゃなくて、“ありがとう。大丈夫だ”ぐらい言うだろ!?」
「俺の運動神経のことを知りながら、こんな事をするとは……お前の罪は重いぞ」
「そんな些細なことで罪になるかよ!」
「だが、本当のことだろ」
「ぐっ…………」
ふっ……勝った。
こいつはバカだから、口喧嘩には滅法弱い。RPGで俺がレベル100だったら、あいつは一番最初に出てくる雑魚モンスター並みに弱い。
俺だけでなく、他の奴らに対しても弱い。特に女子。「あんたうっざい。マジで」と言われたくらいで、すぐに傷つく。
だが、すぐに立ち直っているところを見ると、たとえガラスはガラスでも「防弾ガラス」のようだ。
「なあ、今ひっじょぉぉうに失礼なこと考えてただろう?」
「そのとおりだが、まさかお前が“失礼”という単語を知っていて、その言葉を正しい使い方で言ってくるとは……これは驚いた」
「んだとテメェ!」
相変わらず短気な奴だ。カルシウムが足りてないんじゃないか?
隣でまだ怒っている爽耶を横目に、俺は爽耶の家に足を踏み入れた。
えっと……すみませんでした!
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