弐
そういえば妙な点が1つある
毎晩、色んな物を持って帰ってくるが家の中には何もなかった。
目の前に流れている大きな川もあるが
物を捨てるような音なんて聞いたことがない
つまり、家の中に持って入った物が全部消えていく
火に水をかけるよう一瞬で消えるのだ。
「こいつは…、いよいよ分からなくなったな…」
とても考えても思いつく事でもなく
ただ、時間だけが過ぎ、遠くの山が薄っすら明るくなってきたのが分かった。
日が高くなってから、五助の家を訪ねるとまだ寝ておって
いくら呼んでも起きないもんだから爺様は勝手に家の中を探し始めた
布団の下、鍋の中、天井裏まで調べたが何もない。
そのうち、爺様も腰が痛くなってきたんで
座って休んでおったらいつの間にか寝てしまった。
五助が入れ違いで目覚めると
自分の家で爺様が眠っているもんだからとても驚いた
「おい、爺様。何をしとるんや?」
爺様の肩に手をやって、揺すってみたが一向に目覚めない。
あまりに動かないので死んでいるのかと思ったぐらいだったが
何とか生きているらしい。
さて、困ったのは五助
一向に起きない爺様を見て考えていたが
多分、夕方までは大丈夫だろう。と横にさせて布団を掛けて
畑仕事に出かけていった。
夕方になって家に戻る途中、隣の家の者が五助を呼び止めて
「おい、爺様はどこに行ったんじゃ?」と聞くもんだから
「家、ワシの家で寝とるわい」と返したのだが
「今、お前の家に行った所だが誰もおらんかったぞ」と逆に返された
家に急ぐと、爺様の姿はなかったが
布団も丸ごと無くなっていた。
慌てて爺様の家に行ってみたが、やはり居らず
村人総出で探したのだが、その日は結局、誰も見つけることが出来なかった。
次の日、また次の日と過ぎて行き
ついに、3日が過ぎたが未だに爺様も行方は分からず
みんなもう死んでしまったと思い、本人がいないにも関わらず
葬式でも始めようとする始末
五助としても、自分の家に来たら消えた。なんて事になったら
自身の立場も悪くなると思って、ある日皆を集めて言った
「実はな、爺様は町に出かけていての…。それでな、皆に土産を買って来るから
それまでは誰にも言わないでくれ。と頼まれていたんじゃ」
いちを何か言われた時のために、いろんな言い返しを用意していた五助だが
人のいい村人は誰一人として疑わず
「そうだったのか、それなら早う帰って来てほしいのう」なんて
もう土産が待ちどうしくなったようだった。
さて、そうなると今度は五助の状況がますますマズイ事になった
町までの距離を考えると、あと2・3日ぐらいしか騙せれない
さて、どうした物やら…
考えた挙句、とりあえず暫くはこのまま話を進めて行く事にして
その間に爺様の手がかりを一人で探す事にした。
ところがやっぱり、一人ではどうにもならなくなって
あっという間に3日目の朝が来てしまった。
子供らは村の入り口に朝から集まって
爺様の帰りを今か今かと待っていた
もう、ここまで来ると始末が悪い
どうにも出来なくなった五助は最後の手段を取る事にした




