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75 2回目の付き添い(後)

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めているのでお付き合いいただけるとうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

「倍返しの魔道具?」

 私は立ち上がりながら叫ぶ。

 レイモンドがしまった! という表情で妹を連れて行こうとするが彼女は動かない。

「そうよ! あなたが持ってるのより強力よ! 5倍返しにしてもらったから!!」


『ほう、ずいぶん強力な魔道具だな。まあウォロの10倍の方がすごかったがな!』

 マッちゃん、それどころじゃないよ!

 どれ魔道具かわかる?

 ネックレス? ペンダントもしているな? 指輪もしてるか……。


『うむ、ペンダントのようだな』

 あれむしり取ったらどういう5倍返しが来るんだろう?


『物に対しては起きらんのじゃないか?

 それにネモにはウォロの魔道具の効果もあるし』

 1.2倍返しの魔道具の効果で打ち消せるの?


『同じような魔道具の場合、たくさんの術式を付与されている方が優先される。

 つまり同時発動ならネモの方が優先される、はずじゃ』

 はずかぁ。それはちょっと心もとないな。

 でも、ここで収めないと花祭りもめちゃめちゃになる。

 付き添いひとりぐらいいなくても何とかなるだろう。


 私はウォロを見て、頷く。

 もしうまくいかなかったら、後は任せた!


「エドワード様、私と一緒に! ご友人の安全が大切でしょう?」

 それって脅迫じゃん!

 

 私はアルテイシアとエドワードの間に入った。

「アルテイシア、何してるかわかってる? それは脅迫だよ。今すぐやめて!」

 

 カッとなったアルテイシアがテーブルの上のお茶のカップを掴んで私にぶちまけようとする。

 こちらから攻撃せず、あっちを怒らせて悪意のある攻撃させたかったのでうまくいった、んだよね。

  

 お茶は私に掛からずアルテイシアの方に向かった。

 お茶が顔にかかり何が起こったのかわからず立ちすくむアルテイシアのペンダントの鎖部分を両手で掴んで引きちぎる。

「きゃああっ! ひどいわ!」

 アルテイシアの悲鳴。


 私にペンダントを取られたことに気が付き猛烈に叫び出す。

「泥棒!! ネモは泥棒よ!! 捕まえて! 泥棒!!」

 

 私はオーサム先生にペンダントを渡しながら言った。

「これが5倍返しの魔道具です。クラウス先生に調べてもらってください」


 5倍返しを受けて苦しんでいる先生のところへ行き、腕と肩を光魔法で治療する。

 セレナを守ってくれた先生がそばに来て「ありがとう、ネモ」と言った。

 

 !! 陛下!!


 私のびっくり顔でアンドレアスとウォロはわかったみたい。

 レイモンドはマリアに話しかけられていた。

 マリア、全然気が付かなかった。きっと陛下の周囲に潜んでたんだね。


 レイモンドはアルテイシアのところに来ると、腕を取り連れて行こうとする。

「兄様!! お父様を呼んで! お父様なら、何とかしてくれる!!」

「もう、やめなさい。エドワード王子はこんなことをしたお前を許さないだろう」

「でも、こうでもしないと誰も私の言うことをきいてくれない!!」

「それは、お前の人への対し方がおかしいからだ! 何度も言っているだろう!!」

「でも、お父様の魔道具が……!」

「もうお父様の話はするな!!」

 レイモンドが本気で怒ったような声だった。

 アルテイシアがまた子どもの様に泣き出す。

 涙が溢れてしゃくりあげている。


 オーサム先生と私が治療した先生(ということは陛下の従者か?)が、レイモンドとアルテイシアを連れて食堂を出て行った。


 オードリーが言った。

「ネモ、アリス! そろそろパレードの集合時間!!」


 アンドレアスは陛下である先生を気にしている。

 私はアリスの手を取ると「大丈夫! ウォロとランスと一緒に待ち合わせに行きます!」とアンドレアスに声をかけた。

「ありがとう、よろしく頼む!」

 エドワードも「俺も行くよ!」と言うので「陛下はいいの?」と小さな声で言ってこっそり指差す。

「えっ?」

 陛下を二度見したエドワードはちょっと引き攣った笑いを浮かべた。

「ネモとウォロと行く……」

 あ、離れたいのね。


 私達は時計をもう一度確認する。

 歩いて行く余裕はある。

 

 パレードが始まり、アリスはノンナと馬車に。

 私は後ろから花束を持って歩いた。


 ランスとウォロとエドワードは後ろから歩いてきてくれている。


 食堂前に、陛下やマリア、アンドレアスやセレナ達、そしてミカ達もいた。

 私は花束を片手に抱えると手を振った。

 陛下が一番うれしそうに大きく手を振ってくれた。

 私は笑ってしまい、振り返ってエドワードを見た。

 陛下を見て苦笑いしてる。

 ウォロを見ると、前を見ろ的なジャスチャーをした。

 うん! 笑顔で頷いて前を見る。


 途中で『魔王の嫁』だと気が付かなかったのか4年生と5年生の男子にダンスを申し込まれたけれど、ランスが蹴散らした。

 なんでランスが?

 まあ、仕事させてあげよう。他にすることないだろうし。


 無事に講堂までたどり着き、ノンナに花束を渡す。

 入り口で花を渡すんだっけと思ったら今年からそれはやめることにしたと言われた。

 確かに! 付き添いの子達が最初からパーティーに参加できないもんね!!

 仕事のスリム化! いいことだ!


 私とアリスは待っていてくれたアンドレアスとウォロの元に行き、一緒に会場に入ることができた。

 アンドレアスがしみじみと言った。

「例年通りを頑なに守るより、それぞれの立場に立つとわかることもあるのだな……」


 去年は最初の1曲目は花の女神と生徒会長のペアだけステージ上でダンスをしたけれど、今年は1曲目からステージの周囲でみんな踊ることができるようにしたので、みんなで楽しみましょう! とロバートが挨拶して呼びかけた。

 ロバートとノンナだからこそ、変えることができたんだろうな。

 でも、周囲のみんなは戸惑っている。

 私はウォロの手を取って「最初のダンス踊ってください」と誘った。

 それを見てアンドレアスもアリスを誘った。

 私達が踊るためにステージの周囲に出て行くと、さらに何組か出てきてくれた。

 ロバートとノンナがほっとした表情をしている。


 最初のダンスが始まった。

 私は「ウォロと最初のダンス踊れて良かった」と囁いた。


「これからエドワードやティエルノとも踊るんだろ?

 ランスにも言われたよ、ネモに踊りを申し込んでいいかって……」

「そうなんだ。ランスは最後の花祭りだしね。ウォロは嫌?」

「……まあ、でも最後は絶対自分と踊って」

「うんわかった。最後の1曲とは言わず、ラスト3曲はウォロと予約ね!」


 オーサム先生が近づいてきて「ウォロ、ネモ。次はステージに上がれ」と言った。

 あー、今年もか。

「もう1曲、ネモを独占できる」

 ウォロが笑顔で言った。


 2曲目を終えてステージから降りようとすると呼び止められた。

「ネモ、1曲頼む。ウォロ、借りるよ」

 陛下だった。

 先生の変装をやめて、陛下に戻ってた。

「えっ、アリスが先じゃ?!」

 私が言うと陛下が笑って言った。

「アリスよりネモの方が後にすると争奪戦に巻き込まれそうだからな」

 あ、確かにエドワードにティエルノにランスに……。

 ウォロが私を一度ぎゅっと抱きしめ「下で見てるから」と言ってステージを降りた。


 私は陛下と向かい合う。

 こうして近くで見ると、エドワードに似てるな。

 エドワードも大人になるとこんな感じになるのだろう。


「エレオノーラによく似ている」

「ありがとうございます。母に似ていると言われるのはうれしいです。

 陛下はエドワードに似ています」

「エドワードが私に似ているのではなくて、か?」

「私にとってはエドワードの方が親しいのでそう感じます」

「あれはネモとウォロに出会って、ずいぶん変わった。人間として面白くなったな。うん」

 自分の息子を面白いとは……。

 それに今までエドワードけっこう悩んだりしてたこと多くないか?

 まあ、自分を振り返ってみるとそういうことが多い方がいろいろな視点を自分の中に持つことができるのかも。

 踊り終わった時、陛下に会釈して離れようとしたら、軽くハグされて頬にキスされた。

 お父さんみたいなキスではあるけれど……。

「やっぱりエドワードに似ていますね……」

 思わず言っちゃったよ。


 ステージから降りてウォロの所に戻るとエドワードが「父がすまない!」と謝ってきた。

「大丈夫、お父さんみたいな気持ちのだから、別に怒ってない。

 でも、親子で似ているねと思った」

 エドワードがふっと笑った。

 しかし……、なんだか2-1寮のメンバーの周囲に人が多いような気がする。それも女子。

 エドワードをチラチラ見ている……。


 そうか! ライトとセレナの服装から、セレナが婚約者候補を降りたのを感じた令嬢達が集まって来てんじゃない?!

「周囲の女子、みんなエドワードに誘われるの待ってる感じじゃない?」

 エドワードが困った感じで言った。

「オードリーとは踊ったんだ。ネモと踊ってから、次はどうするか考える……」

 私はウォロを見た。

 仕方なさそうに頷いてくれる。

「じゃあ、次、エドワードと踊るよ。今はちょっと休ませて」

 私はウォロのそばに行くとぎゅっと抱きついた。

「ネモ? 疲れたのか?」

 ウォロが心配してくれる。

「そこまで疲れてない。ウォロを補給している……」

「あー、陛下に何か吸い取られたんだろ!」

「……かもね!」

 私達は笑った。

 

 エドワードと踊ったら、またステージに呼ばれて結局2曲踊った。

 戻るとティエルノが飲み物を用意して待っていてくれた。

「ありがとう、ティエルノ!」

「ウォロはオードリーと踊りに行ってる。

 エドワード、ネモは俺が見てるから、いいかげん覚悟決めて誘いに行けよ」

 そうだそうだ!!

 エドワードは周囲を見回して「たぶん同じ2年だよな……」と言いながら、女子に声をかけに行った。

 えーっと、魔法対戦でウォロが泣かせた子だ!

 2-2寮のサーシャ!


「エドワードのこと、きちんと振ってくれてありがとうな」

 ティエルノに言われてびっくりする。

「近くで見てるの、ほんときつかったから……」

「そうか……、私がずっと気が付かなかったからだよね……」

「本当にネモ、鈍感でびっくりしたよ」

「いや、だって婚約してるし、そういう対象ではないと思ってたし。

 最初、エドワード、私に敵意すらあったよね?!」

「そうだな、そこからの大逆転! だもんな。

 そんな風に時間をかけて好きになったから、なかなか忘れられないんだろうな。

 でも、ネモがその相手で良かったよ」

「ティエルノ、エドワードのお父さんみたいじゃない?!」

 ティエルノは笑って言った。

「親友だからな……。たぶん陛下だったらもっといいかげんに楽しんでるだろ?!」

「そうだね!」

 私達は笑った。


 そこへランスが来て「ネモ、次踊ろう!」と言った。

 ティエルノが『いいのか?』という感じで私を見た。

「うん、ウォロとはもう話してるから大丈夫! ありがとうティエルノ!」


 ランスと踊り始めた。

「ランスは特定の相手いないの?」

 私はとうとう聞いてしまった。

「相手?」

「だって、ランス、結構人気あるでしょ?

 もてるでしょう?

 学校の最終学年でお付き合いするとか婚約する人多いって聞いたよ」

「うーん、そうかもしれないけど……。いいなと思える人がいなくてさ……」

 それじゃあ、しょうがないか。

「いいなと思うと、もうそういう人はちゃんと相手がいるんだよね」

 あ、何かデジャブが?!

 前世で友達に相談された時、その言葉、よく聞いた気がする……。

「はあ、ランスがいいなと思うということは素敵な人だから、他の人からもそう思われるってことだもんね」

「……まあ、そうだろね」


 踊っていたらエドワードが近くにいるのに気が付いた。

 今度はミリアンかな?

 エドワードが対戦した子だ。顔見知りから行ってるのか!


「エドワードのこと、振ったって? どんなふうに振ったの?」

「……それは人に言うことじゃないから」

「エドワードとの秘密?」

「そういう訳じゃないけど、人に話すことじゃない」

「だよね。ネモならそうだと思ったけど……。うん、わかった」

 ん? 何がわかったのだ?

 私が不思議そうな顔をしていたんだろう。

「ウォロと幸せにな……」 

 ん? と思うがとりあえず頷いた。


「まだ、ウォロ、ネモに言うこと聞かせる権利、使ってないんだって?」

「あー、そうですね。忘れかけてましたけど……、はい。なんかもったいないみたいで……」

「はは、ウォロらしいな。俺だったらさっさと使っちまうのに」

 

読んで下さりありがとうございます。


ゆっくりゆっくり書き進めています。

気が付いたらすごい字数になっていてびっくり!

まだまだ書きたいことがあり(ミーア帝国の方の皇太子決めとか……)、登場人物も多いし、長く長く書くのはどうなのかとも思いましたが、ハッピーエンドに向かって主人公達と頑張りたいと思います。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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