76 花祭りの終わりと伯爵との対決
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
ランスと踊り終わって戻ると、ウォロとミカが話しをしていた。
ランスがミカを見てうれしそうな顔をする。なんかすごく仲良くなってたもんね。
「ウォロから許可もらったから、踊ってくれる?」
ミカが私に手を差し出した。
ウォロを見ると頷くので、ミカの手を取る。
組み合うとミカの顔が近くてお互い笑ってしまう。
去年のエドワードとのダンスを思い出した。
「ネモと仲良くなれて、学校が楽しくなった。ありがとう」
「それは良かった。
1年の時は3、4寮の子達とはなかなか接点がなかったから。
自分の寮で精いっぱいなところもあったよね、お互いに。
でも、みんなそうなんじゃないの?
これから学年のみんなともっと仲良くなれるといいな」
「うん。これからもよろしく」
「こちらこそよろしく」
最後の方はずっとウォロと踊っていることができて安心した。
去年はダンスの最後は参加できなかったしな。
最後に講堂からまた門の方へとパレードして戻り、解散になった。
『ほう、花祭りはこれで終わりか……。ほぼダンスパーティーだったな』
昔はどんなことしたんだろう?
『昔は魔法で花びらを降らせたりしたぞ。子どもも大人も大喜びだった』
「へー、古代魔法かな?」
手を繋いで歩いていたウォロに聞いてみる。
「そうだな、当時は古代魔法だろうけど、今なら風魔法でもできるんじゃないか?」
「なるほど」
「ウォロ、ネモ!」
クラウス先生がこちらに歩いてきながら呼びかけてきた。
「良かった会えて! 寮に行ったらまだ戻っていないと言われて探してたんだ!
例の魔道具、いろいろわかったことがある。来てくれ!」
クラウス先生の研究室に入るとギーマ先生がいた。
「来たか。アルテイシアの魔道具、ズールの協力者と同じ者だったぞ」
Xということ?
「よくこの短時間でわかりましたね?」とウォロ。
確かに、前はもっと時間がかかっていたはず。
「この作成者にだけ反応する魔道具を作ったんだよ。
前にネモの光魔法の思念化に反応する魔道具作っただろう。あれを応用して、この魔道具の作成者にだけ反応する簡易測定器にしたんだ」
クラウス先生がわかりやすく説明してくれ、ウォロが感心している。
ギーマ先生がこれにより推測されたことを教えてくれる。
「たぶん前の聖魔法の授業中、ネモの髪を取りそこない、ウォロの魔道具の話を聞いて似たようなものを作ったんだろう。
ただ、倍返ししか情報がないから、強さを求め、5倍で何の制約もないものになったのだろう」
「でも、3日間ぐらいで作成したって……、すごいじゃないですか?」
クラウス先生ぐらいの人だと3日間ありえるけど……、トップ研究者並みってことだよ。
ギーマ先生が私の言葉に頷き続けて言った。
「アルテイシアとレイモンドは学校長の部屋でこの魔道具について聞かれているが……。
ふたりともアルテイシアのお願いに父親が買い与えたとしか言っていなくて、さっきカルタロフ伯爵が呼ばれたところだ」
アルテイシアの言葉を思い出してみるが『お父様の魔道具』と言った時、私にはお父様に作ってもらったと感じたんだけど、確かに感じがするだけだ。明確に断言できるところはない。
「購入したと言われれば、それ以上は警備局に店や職人を探してもらう……という流れか」
私は呟いた。
「それだと、今までとほとんど変わりませんね。見つからないでしょう……。
カルタロフ伯爵の魔法の属性などわかりますか?」
ウォロが質問する。
ギーマ先生がクラウス先生と顔を見合わせてから答えた。
「情報がないんだ」
「えっ、生まれた時の検査は?」と驚く私。
「カルタロフ伯爵はミーア帝国で生まれていてね、検査を受けていない」
「……なら今から調べてみれば……、できないのか?」
ウォロがなにかに気がついたように言った。
「ああ、王国の法律で成人は魔法属性の検査を拒否することができるとあるからな。
犯罪を犯したと立証され、捜査を受けることにならない限り強制はできない。
そして、この場合、魔法属性の検査を受けなければ発覚しないわけで、逃げ切れるというわけだ」
「ギーマ先生もカルタロフ伯爵を疑っているのですか?」
ウォロが聞いた。
「先入観は良くないが……、ああ、そうではないかと思い始めている」
「カルタロフ伯爵に会えますか?
ミーア帝国の者として聞いてみたいことがあります」
ウォロの言葉にギーマ先生が驚く。
「何を聞く気だ?」
「この魔道具を作った人物についてです。
本人かもしれないけれどそう聞けないのなら、他に職人がいる体で聞いてやる。
なぜこの職人は細工をミーア帝国風なものにするのか。
ミーア帝国は迷惑をしている。
その職人にもし連絡が取れることがあればそう伝えてくれと……」
『ネモ、会ったら相手が聖魔法持ちかわかるか? とウォロが言っておる』
戦えばなんとなくわかるというぐらいかな?
マッちゃんの方がわかるかも?
『戦わないと……か。儂もズールの時はネモが戦った感覚でわかったこともあり、会うだけでは難しいな……』
戦う……、逆に癒しの力の光魔法をかけたらどうだろう?
『光魔法を? 相手が警戒して抵抗したら光魔法を使える者ということがわかるか?!』
「うん」
思わず返事をしてしまい先生達に見られた。
「ネモ、サンマチネスと何か話しているのか?」
クラウス先生に聞かれる。
「……会うだけだと聖魔法持ちだとわからないから、どうしたらわかるかな? と」
「で?」
「ズールの時は聖魔法で戦って聖魔法持ちではないとわかりました。
今回は戦うことはできないから、逆に癒しの光魔法をかけてみたらどうだろうと……。
弱い光魔法なら、聖魔法持ちではない人はほとんどわからなくて受け入れるだけ。少し心地よく感じるくらいです。
でも、聖魔法持ちで意味のわからない癒しの光魔法をかけられたら、気づいて警戒し、抵抗するだろうから……」
「なるほど……。試してみる価値はありそうだな。
向こうが上手で敢えて受け入れるということもあるかもしれんが……」
「自分が話しをして少し挑発します。そこでネモにかけてもらう。
ここまで漕ぎつけたんだ。最大限やれることをしないと」
ウォロがきっぱりと言った。
「アルテイシアから魔道具を取り上げたのはネモだよな。
ネモに謝ってもらいたいという口実でウォロとネモを連れて行くか……」
ギーマ先生が独り言のように言った。
「そういえばカトレア先生は?」
私はクラウス先生に訊ねた。
「レイモンドとアルテイシアは聖魔法持ちだから、そばについてるよ」
ギーマ先生達に連れられて学校長室へ向かう。
ノックしてギーマ先生だけ入室し、まもなくドアが開き私達も招き入れられた。
椅子にアルテイシアとレイモンドが座り、ソファーには一人の男性が座って向かいの学校長と対峙している。
私のお父様より若い感じだな。
その人の目を見てドキッとした。銀色の目をしていたから……。
ミーア帝国皇家の血を引いているのかもしれないな……?
カルタロフ伯爵だっけ。ミーアで生まれたそうだし。
ギーマ先生が話し始めた。
「アルテイシアがこれ以上他人に攻撃しないように魔道具を取り上げて止めてくれたのがこの2年生のネモフィラです。
こちらはネモフィラの婚約者で同じ2年生のウォロ。ミーア帝国第3皇子になります」
レイモンドが顔を上げて「ネモ、止めてくれて本当にありがとう」と言ってくれた。
「いえ、怪我をされた方もいたので……。魔道具の使い方には気をつけないと」
「ネモフィラ嬢、私からも礼を言う。ありがとう」
男性に手を差し出され、握手? と思いながら手を出しかけ止めた。
『触るな!』とマッちゃんに止められたのだ。
『奴に触らない方がいい……』
マッちゃんがまた言った。何か感じたのかな?
私はあわてて「止められて良かったです」と言って後ろに戻った。
次にクラウス先生が魔道具を手に説明を始めた。
アルテイシアの使っていた魔道具は国や魔法研究所が追っている手配中の魔道具職人の手になるものだったことがわかった。
ミーア帝国でもその魔道具職人の作成した非正規魔道具が問題になっていて、ウォロ皇子が伯爵にお願いしたいことがあると……。
「私はただ正規品だと思って購入してしまっただけなのですが……」
「はい、もしその職人に会えたら聞いていただきたい。
なぜ細工や飾りにミーアの意匠や文様を使うのか?
そのため、ウォルフライト王国ではその違法魔道具にミーアが関わっているのではと思われ、迷惑しています」
「私はその職人とは直接会っていないので……。もう、取引することもないでしょう」
「いえ、そんなことはないと思います。その職人はあなたのすぐそばに潜んでいる気がします。
あなたに伝えれば本人に伝わるような気がします」
「だから、もう会うことはない!」
「会ったことはなかったのではないですか?」
伯爵の表情が険しくなる。
私は癒しの光魔法を弱く遠くからかけてみた。本気でかけるんなら手を握ったり手をかざしたりするんだけど、弱いものなら遠隔でもかけられる。
伯爵ははっとして、その光魔法に抵抗して私を見た。
この人は聖魔法持ちだ!!
『聖魔法持ちだ。儂にも感じられた!』
その時、伯爵が立ち上がりまっすぐ私に向かってきた。
私はびっくりして後ずさったが、手を掴まれてしまった。
「いやっ!!」
私は驚いて手を振り払おうとする。
手から強制的に流れ込んできていた映像イメージがぱちんと遮断され、顔をしかめた伯爵がやっと手を離した。
『大丈夫か! ネモ!!』
マッちゃんが助けてくれたの?
「これは闇魔法ですか?」
私は思わず聞いてしまった。
「何を見たり感じられたのかは知りませんが、あまり無茶ないたずらはされない方がいいと思いますよ。
かわいいお嬢さん」
ウォロが慌てて私に駆け寄り肩を抱いてくれた。
「大切な方なんですね。どうぞお大事に……」
伯爵の言葉に私はぞっとする。この人、何を考えているんだ?!
カトレア先生がギーマ先生に何か言って交代したよう。
カトレア先生、クラウス先生、私とウォロで学校長室から出た。
棟の外に出たところで「伯爵は聖魔法持ちです」と私は言った。
「手を掴まれた時、何をされたんだ?」
ウォロが聞いてくる。
「闇魔法に、相手に自分の考えていることを強制的に見せるようなのある?」
ウォロとカトレア先生が顔を見合わせる。
「あるわ。何か映像を見せられたのね?」
「はい、ありえない映像でしたが、私の力じゃすぐ抵抗したり中和できなくて……、マッちゃんが遮断してくれて、数秒だけだったけれど……」
「何を?」
「それは、なんて言ったらいいか……、その」
『ネモが男に襲われていたな』
「マッちゃん……、ああ、まあ、そんな感じ。イメージにしてはリアルすぎて怖かった……」
ウォロが怒りの表情になり学校長室を振り返る。
「脅しとしてやったんだと思う。これ以上手を出すな、詮索するなってね。ウォロから先生達に話してくれない? 言いたくないから……」
マッちゃん、この映像消せないの?
『ネモの光魔法で中和できるかもな』
マッちゃんが遮断してくれたんだよね。ありがとう。
『ああ、女の子に見せるにはあまりにひどいイメージだと思ったのでな……』
ということはあの後もあったのか?!
『ネモが見たのは押し倒されて服を破かれたぐらいだろう。あの後……いや言わんでおこう』
いやーな気持ちになる。
しかし、あの短時間で会ったばかりの私であのかなりリアルなイメージ映像を作って見せるなんて、変態か?!
『まあウォロに対しての牽制という意味もあるのだろうな。婚約者の安全に気をつけろという警告なのだろう』
「カトレア先生、ネモが見た映像消せませんか?」
ウォロがカトレア先生にも聞いてくれてる。
私はウォロに言った。
「映像は中和して消せても、見てしまった記憶は消すことはできないと思う」
読んで下さりありがとうございます。
なるべく重くならないように気をつけましたが、ズールとは違う狡猾な悪役感を出したかったので……。
気を悪くした方がいたらすみません。
しっかり立ち直りますので、これからもよろしくお願いします。




