56 生徒会室
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
「悪意を持って攻撃する方が悪い」
「……ウォロ。10倍返しはやりすぎだって。防ぐとか、撥ね返すぐらいならわかるけど……」
「だから悪意を持ってないと発動しないように調整してある」
そうか、だからエドワードには発動しなかったんだ。悪意はなかったから。
「10倍はやりすぎ!」
「そうか……、5倍くらいにしとくか……」
「いや倍返しは考えないでよ!」
私とウォロのやり取りを見てアンドレアス達は事情がわかったようだ。
「昼食、これからか?」
アンドレアスに言われて頷く。
ウォロを待っていたんだよね。
「アポロ、ネモとウォロの昼食、生徒会室に頼む。
お前達、生徒会室に来い!」
アンドレアスに言われ、そのまま生徒会室に連行された……。
初めて生徒会室に入った。
何人か上級生がいて、こちらを驚いたように見た。
生徒会室の奥に相談室みたいな部屋があってそこに連れて行かれドアを閉められた。
「身につけてる魔道具、出せ。そして説明してもらおうか?」
ランスに言われて、シャツのボタンを外し始めたらランスとアンドレアスが慌てて目を逸らした。
「ウォロ外してくれる?」
私は第2ボタンまで外してシャツの首元を開けて背中を向けながらウォロに頼んだ。
ドアがバーンと開いてアポロが「お待た……」と入って来て止まる。
「……何イチャイチャさせてんの?」
「イチャイチャしてない! 魔道具外せと言われて!!」
私があわてて説明するとランスが大笑いした。
ウォロが外してくれたネックレスをテーブルの上に置いた。
「指輪は位置を知るしか効果がないからいいよな」
ウォロが後ろから私の右手を取りながらアンドレアスに言った。
「ああ、話してた居場所がわかる奴だな。わかった。これ以外はないか?
その耳のは?」
「これは魔道具では、ないです。他に身につけていたのはこれだけです」
動かないんだから魔道具じゃないって言っても嘘にはなるまい。
ウォロが「ネモ、こっち向いて」というので振り返ったら、襟を直されシャツのボタンを留めてくれた。
なんか……、すごく恥ずかしくなり、顔が真っ赤になってしまった。
「ネモ?」
ウォロがちょっと困った顔をした。
「……急に、なんでだろ。恥ずかしくなった……」
「見ている俺達の方が恥ずかしいよ! はい、昼食。早く食べな」
アポロも顔を少し赤くしていたが、それを振り払うようにわざと大きな声で言って私達の前にテイクアウト容器を置いてくれた。
ありがたく食べ始める。
「この魔道具は自作?」
ランスがネックレスを手にしてウォロに訊ねる。
ウォロは食べながら頷いた。
「ふたりは聖魔法持ちだったよな。闇魔法を利用しているのか?」
また頷くウォロ。
ランスがアンドレアスと何か相談していたが「とりあえずこれは預からせてくれ。学校内でトラブルの元になりそうだし」と言った。
アンドレアスも言った。
「さっきの3人には生徒会から事情を説明しておく。ネモのせいじゃないからもう気にするな。
それからウォロ、学内では魔道具は特に禁止されていないが、自分の身を守る以上の効果があるものはやはり認められないな。ネモに持たせるにしても、身を守る程度の物にしてくれ」
その時、生徒会室の方が慌ただしくなって、相談室のドアがまたバーンと開いた。
「ネモ、ウォロ! 無事か!」
エドワードとティエルノだった。
昼食を食べている私達を見て拍子抜けしたような表情になる。
「……大丈夫そうだな」
エドワードが言って、ティエルノが続けて説明してくれた。
「トラブルがあった食堂からネモとウォロが生徒会室に連れて行かれたと聞いて、あわてて来たんだよ」
エドワードとティエルノにちょいちょいと手招きしたランス。
怪訝そうなふたりにネックレスを見せながら何事か説明してる。
私達はあわてて昼食をかきこんだ。
ランスの説明と私達が食べ終えたのが同時だった。
エドワードがつかつかとこちらに来てウォロの頭を叩いた。
「10倍返しはさすがにやりすぎだろ!」
ウォロが叩かれた頭を無言でさすっている。
「2倍ぐらいにしとくべきだ。それならばれないだろ?」
そこにいたみんなが一瞬動きを止めた。
「エドワード、お前……」
ティエルノが笑いをこらえながら近づいてきてエドワードの肩に手を掛けた。
「お前らって、やっぱり似てるとこあるよ!」
こらえきれず大笑いを始める。
アンドレアスやランス、アポロも笑い出した。
ウォロは無言だし……。
「エドワード、倍返しはダメ! ウォロもダメだよ」
私は困りながらふたりに言った。
生徒会預かりとなったことで食堂のトラブルも大ごとにならずに済んだ。
4年の女子3人も事情を説明され、青ざめていたという。
もし、私を傷つけるような行動を起こしていたら、10倍返しにあっていたわけで、お茶をかけられたぐらいで済んでラッキーだったと思ってくれたようだ。
エドワード、ティエルノ、ウォロ、私は、定期的に生徒会室に顔を出すように言われてしまった。
入学式で生徒会となんて関わることはないと思っていたのに……。
「ボランティアのこともあるから、そのうち呼ぼうとは思っていたんだよ」とアンドレアスには言われた。
聖魔法の授業を受け持ちのカトレア先生とギーマ先生のところにはさすがに連絡が入ったようで、授業の後、残るように言われた。
10倍返しネックレスがカトレア先生からウォロに返された。
「悪意のある行動だけに反応するなんて面白いこと考えたわね!
10倍のところだけ直してまたネモに持たせたら?」
カトレア先生?!
「確かに等倍返しじゃ面白くないもんな」
ギーマ先生?!
「でも、ネモに倍返しはダメって……」
ここでは私の方が少数派だった……。
「あら、そう。じゃあ1.2倍ぐらいはどう?」
「カトレア先生もギーマ先生もダメですよ!!
生徒会からも自分の身を守るぐらいの物と言われているんですから!!」
私は必死に訴えた。
「あら、それぐらい愛の教育的指導だと思うけれど」
「教育的指導?」
なんじゃそれは?
「そうよ、人に悪意を持って成したことが我が身に返ってくる覚悟があるかと!」
「じゃあ、1.2倍にします」
ウォロがうれしそうに言った。
いいのかな……。
『いいんじゃないか?
今回のことでネモに悪意を持って悪さをしてこようというものはいなくなると思うが、身に付けていることで抑止力が高まるし、ズールのこともある。身を守るものは必要じゃ』
マッちゃんまで……。
そうか、ズールのこともあったんだ。
私は頷いた。
「ネモからお許しも出たし、1.2倍で!
ちゃんと発動した時のことレポート出すのよ!」
カトレア先生がうれしそうに言った。
読んで下さりありがとうございます。
今日は午後投稿する予定です。
どうぞよろしくお願いします。