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54 友達として

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

今回は転生物。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 マッちゃんの声は頭の中に響いた。

『そいつは友達なのか?』

 友達だよ!!

『ネモを……傷つけてもか?』

 エドワードならばそんなことはしない……と思う。


『でも、今は怖いんだろ?

 確かにエドワードの気持ちは悪意ではないな……。こりゃ、厄介だな……』

 

 私は闇魔法は得意ではない。ウォロならエドワードをすぐ眠らせることができると思うけれど、私には無理だ。

 悪い人ならばズールの時のように光魔法で攻撃したり、練習してた電気みたいな攻撃とかできるけど……、友達だと思うと、しかも同じ寮のエドワードだと思ったら、まだどんな効果があるかよくわからない魔法で攻撃なんて、できない……。


「あの日の夜、ウォロからネモとのこと聞いて。

 俺だったらもっとネモのこと大切にする」


 えっ、ウォロ何話したんだよ?

 あ、男子だけの時か?


「ウォロは私のこと大切にしてくれてるよ!」

 

 私が両手で持っていたカップがエドワードに払いのけられた。

 カップが夜の闇に飛んで、沈んでいった。


 瞬間的に身体を引いて逃げようとしたら毛布にひっかかり少し遅れた。

 両手をがっちり掴まれてしまう。


「こんな細い手で……」

「離して」

 私はできるだけ普通のトーンの声で言った。

 怖がっていると思われたくなかったし、友達だということを思い出して欲しかったから。

『そろそろウォロが着くぞ!』

 マッちゃんの声がした。

 ウォロ来てくれたんだ!

 でも、こんな状況で、ウォロが来てケンカになったら……。


 マッちゃん、ウォロにエドワードを眠らせるように言って!

 大ごとにしたくない!

『ウォロ、ネモがエドワードを眠らせろと言っておる!』


 とたんに前に4年の寮で感じた闇魔法の暗さと身体の重さを感じた。

 エドワードが私の手首をつかむ指に力を入れた。

 左手首の骨がきしむような音がしてふたりでぎょっとする。


 エドワードががくっと倒れてきた。寝たのか?

 私は右手を自由にすると自分に光魔法をかけた。

 少しは中和できるはず。

 エドワードが寝た! と心の中で呼びかけると『エドワードが寝た』とマッちゃんが伝えてくれるが闇魔法の気配が止まない。


 私は光魔法の中和をやめて、右手で私の左手首をつかんだままのエドワードの指を外し、エドワードから遠ざかる。


 そうだった。闇魔法の眠らせる、気絶させるなどは一度始めると一定時間かけ続けなきゃいけなかった。


 離れるとふっと空気感が変わった。

 少しふらふらするのでまた、自分の光魔法で中和した。


 その場で待っているとウォロが来てくれた。

「実習中なのにごめんね」

 私が言うと「助けを求めてくれて良かった」と抱きしめられた。


「エドワードはいつまで寝てる感じ?」

「明日の朝までは寝てると思う」

「そっか、じゃあ、私、このまま火の番してるわ。

 ありがとう、ウォロ。もう大丈夫。実習に戻らないと」

「本当に大丈夫?」

「うん、もし何かあったら、またマッちゃんに伝言頼むから」


 ウォロを見送ってエドワードの所に戻るとぐっすり寝ている。

 私は毛布を掛けて頭を撫でた。

「ごめんね、エドワード。あんなこと本当はしたくなかったよね……」


 私は自分の毛布を出して広げて身体を覆うと焚火の近くに座った。


 今晩はひとりで火の番をしないと。

 明日の朝、エドワードとちゃんと話をしよう。


 時々うとうとしてしまったが、光魔法で眠気が中和できることに気が付いた。闇魔法以外の眠気でもいけるようだ。発見だ! 体力強化みたいな感じになるのかな?

 これは野営などの夜眠れない時に使えるかも!


 夜明けを迎えてから左手首にエドワードの指の跡があざになっているのに気が付いた。

 これも自分の光魔法で消した。


 朝日が完全に昇り、林の中が明るくなった。

 毛布をたたんで自分の荷物にしまう。

 ランプは消して、朝食を作るために焚き木を足す。

 フライパンで目玉焼きを作っていたらエドワードがもそもそ動き出した。


「おはよう!」と声をかけると、ばっとすごい勢いで跳ね起きた。

「あれ? 俺……」

「朝食できてるよー」

 私はパンの上に目玉焼きを載せたものを持って行った。


「どう、食べられそう?」

 エドワードが辺りを見回して「夢?」と言った。


「違うよ。まず朝食食べちゃおう。それから話していいかな?」

 エドワードが少し考えてから頷いた。


 お茶を飲み、目玉焼き載せパンを食べ終え、果物を半分こに分けた。


「ごめんなさい。私はエドワードのことは友達として大好きなんだ。

 友達としてはいられないかな?

 ……無理ならどうしたらいいか考える。一緒に考えてくれる?」

「じゃあ、俺、やっぱり昨日……。手首大丈夫だった?!」

 私の手首を見て安心している。

「俺、ネモのこと壊しちゃったかもと……」

「実は光魔法で治療しました……」

「えっ、ご、ごめん!!」

「うん、でも、もう誰にもあんなことしないでね。いくら好きでも許されないことだから」


「……ウォロが来たのか?」

「うん、来てくれた。おかげで今朝はこうやってエドワードと話せてる」

「そうか……」


「私、前にオードリーに言われたんだけど、私は男、女ってのにあんまりこだわってないというか気にしてないところがあるって。

 だから、エドワードにも辛い思いをさせちゃったのかな……。ごめんね。

 それは謝る。すぐには無理でも、友達として仲間でいたいな」


「……片思いでいいから好きでいちゃダメかな」

「それはやめよう。ちゃんとあきらめて」

「笑顔で言う言葉じゃないよ。それ」

「……無理なら、寮替えを願い出るよ。もうひとつ女子が3人の寮があったはず」

「わかったから!! ネモのことは……、俺の初恋はあきらめる。これでいい?」

「初恋だったんだ。遅いな」

「いや、8歳の時だよ会ったのは……。セレナんちのお茶会の庭で……」


 私はエドワードの顔をじっと見た。

 緑の瞳に林の木々の間から差し込む朝の太陽の光がキラキラしてる。


「あ、雨の後の?」

 エドワードがうれしそうに笑った。

「覚えていてくれたんだ!」

「あの時の男の子がエドワードだったんだ!!」


「うん、ウォロより先に出会っていたんだけどな……」


「……ウォロとは生まれる前に会っているんだ。私達、それを覚えているの」


「……そんなの、ねえよー!! 勝てっこないじゃん、そんなの!!」

 エドワードが思いっきり叫んでゼイゼイした。

「わかった!! 本当に、本当に! あきらめてやる!!」


「ありがとう……」




   ◇ ◇ ◇




 途中抜けだしたウォロもお咎めなく(見つからなくて本当に良かった)、無事に野営実習は終わった。

 

 ボランティアの方もうまく回り始めたみたい。

 ミクラとジュンのところにも行きたいと寮で話していたら、みんなも行きたいという。

 結局10月最後の休みにミクラとジュンの家にみんなで押しかけた。


 男子は木剣持って行く! と騒いでいたし……。私は今回剣の練習はやめておこう。


 家に到着してから「ネモ!」とエドワードに呼び止められた。

 みんなわいわい言いながら、家の方に向かっている。

 立ち止まった私に木剣のケースからハンカチを取り出したエドワードが渡してきた。


「ごめん。持ってたんだ。返す」

 失くしたと言ってた私のハンカチだった。

「うん、ありがと」

「……もしかして知ってた?」

「セレナが聞きに来た。ハンカチをあげたのかって」

「……なんで?」

「うーん? それはセレナに聞いてみたら?」


 私はハンカチをポケットにしまった。


「そういえば、アリス、学校を休んでいるそうだよ」

「そうなの? 全然気が付かなかった!」

 野営の実習があり、聖魔法の授業が後半お休みになっていたのだ。


「エドワード、陛下はまだ何か企んでそう?」

「俺から王国の情報を引き出そうとするとは……。ネモもなかなかだな」

「だってねえ。陛下、しつこそうなんだもん。カトレア先生に気を付けるように言われてるし」

「……親なんだけど、一応。そうだなあ。ネモとのことは話したけれど、じゃあ、今度はウォロごとこの国にとか考えてるかもよ」

「えっ?」

「仲間としてがっちりふたりを捕まえておけって言われたから」

「捕まえておけって……。やっぱり陛下、怖いわ……」

「だから……、俺の親なんだけど」

読んで下さりありがとうございます。


エドワード、吹っ切れるまではもうちょっと時間かかると思いますが、心の整理はついたようで良かったです。

また楽しい会話が書けるの楽しみです!

これからもよろしくお願いします。

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