36 優勝賞品
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
今回は転生物です。
剣術大会の夜の話とその後の話です。
ゆっくりと書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
学年対抗剣術大会の優勝賞品は当日夕食の食堂貸し切りの権利だった。
1年30名全員で集まって食事するとか今までなかったから、何か楽しそう。
しかし、選抜選手はすでにバテバテ(特にエドワードとティエルノは3戦もしている)だから、選手というより他の人が得してそうな権利だよね。
選手組は一度寮に戻り、シャワー浴びて少し休んでから制服を着て、夕方食堂に行った。
ライトを中心にセレナとオードリーが協力して祝勝会を開いてくれた。
最初は寮ごとに座っていたけれど、だんだん立ち歩いて話をしたりして初めて話すような人とも挨拶した。
2寮は授業で実技の時一緒なので顔見知りだけど、そんなに話したことない。
ダリルと立ち話をしていたら、2寮の女子が近づいてきてダリルに話しかけた。
2寮は男子と女子が仲良くないと言っていたけど、今回のことで少し変わったのかな?
「ネモ、2寮の女子がネモと話したいんだって」
ダリルが4人の女の子を紹介してくれる。
「試合、とってもかっこ良かったです! 4年の先輩に勝つなんてすごいですね!」
「ありがとう!
ダリルや選手のみんなが一緒に練習してくれたから!
楽しかったよ!
また練習する時があったら、ダリルと一緒に来てみれば?」
「いいんですか!
次は魔法の大会もありますし、一緒に練習できたらうれしいです!」
「そうだね。1寮ではよく魔法の使い方のコツとかそれぞれにアドバイスし合ってるよ。
私はライトと同じ属性だから特によく相談してるよ。
2寮ではどんな感じ?」
「……その、あんまり、ですね」
「そっか。今回のことが話すきっかけになってくれるとうれしいな!」
その時、テラス席にセレナがひとりでいるのに気が付いた。
「ごめん、ちょっと話したい人がいて! またね!」
その場を離れ、テラス席に向かう。
「セレナ? 話しかけて大丈夫?」
「ネモ……、うん、大丈夫。心配させた?
ごめん、人数が多いの苦手で……」
なんかわかる。
「私もそうだから、わかる」
「えっ?
ネモは違うでしょ?
ダンスの時だって、試合の時だって堂々としてたじゃない!」
「いや、あれは何も考えないようにしてただけ。
思ったより人って他の人見てないんだよ」
「えー、何それ!」
セレナがくすくす笑ってくれた。
「セレナ、エドワード達の所に行かない?」
エドワードはティエルノと他の寮の男子数人とテーブル席で座って話をしている。
あれ、ウォロはどこだ?
あ、オードリーと一緒に他の寮の人達と話している。
「いいのよ。
男同士で楽しくお話しされてるし。
近くにいても私は話を聞いてるだけしかできないし」
「じゃあ、私と話そう!」
セレナの隣の椅子に腰かけふたりで庭を見ながら座る。
「ネモと話したい子たくさんいるのに悪いわ」
「セレナとここのところゆっくり話ができなかったから、いいんじゃない?
そういえば夏休みはどうするの?」
「うーん、今年はどうするのかしら?」
セレナはちょっと困ったように続けて言った。
「毎年、エドワード様にティエルノと一緒にお誘いいただいてるの。
だから今年もそのつもりなんだけど……」
「あー、だから3人仲が良いんだね!!
ライトはティエルノと小さい頃からの友達って言ってたし、そういう風に友達のつながりが広がっていくのも素敵だね」
「ええ、私、友達を作るのが苦手で……、だからエドワード様から広がっていく友達がとても大切に思えるの」
「素敵だね! ウォロはほとんど友達いないからなー。
ミーア帝国でたくさん紹介してくれたけどみんな家族だったよ!」
「家族が増えるのも素敵!」
「そう、でも、お母さんというか夫人が4人いるし、兄弟姉妹が6人か、にぎやかで毎日覚えるのに必死だったよ!」
「夏休みはミーア帝国に行くの?」
「うーん、でも移動に日数が取られちゃうから、まだ考え中」
その時、テラス席にエドワードが現れた。
「ふたりで何話してるの?」
「その、別に……」
セレナが赤くなって口ごもる。
エドワードは私を見て言った。
「ここ涼しくて気持ちいいね」
私は盛り上がっている食堂の中を見やった。
「そうだね、中はまだまだ盛り上がっているね……。
エドワード、疲れてない?」
「ああ、夕方まで休めたからだいぶ体力戻ったけど……。
今日はよく寝られそう」
「握力なくなってたしね……。
セレナ、エドワード最後の試合の後、コップも持てないくらい手に力が入らなくなってたんだよ!
本当に最後まであきらめないで頑張ったよね!
いっぱい褒めてあげてね!」
言いながら椅子から立ち上がる。
「じゃ、寮でね!」と立ち去ろうとすると、エドワードに「寮に戻るの?」と聞かれた。
「うん、先に戻ってるよ」
「じゃあ、俺も戻るよ。疲れているし」
えっ?
私のこのふたりへの気遣いはどうしてくれるんじゃ?
「じゃあ、セレナももう戻らない?」
私はセレナの手をつかんで言った。
「えー、どうしようかな?」
「迷わない! エドワードと一緒に戻ろう!」
セレナと手を繋いで、食堂を出るまでに出会った人に「お疲れ様! 疲れたので先に寮に戻るね!」と声をかけつつ外へ出た。
「星がきれいだね!」
歩きながら私は夜空を見上げる。
「ネモはキラキラしたものが好きだよな」
エドワードが思い出したように言った。
「そんな話、したことあったっけ?
キラキラでも星とか月とか、木漏れ日とか自然なキラキラが好きだよ。
女の子はみんな好きじゃないの?
セレナも好きだよね?」
「ええ、きれいだと思うわ」
「ほらー、私だけじゃないって!」
寮について中に入りながら「すぐ休む? 私お茶入れるから、飲むならリビングに来て」と言って自分の部屋に入った。
制服から部屋着に着替え、リビングでお茶の用意をする。
飲み始めてもふたりは出てこない。
あれ、セレナはともかく、エドワードはすごく疲れてるからそのまま寝ちゃったのかも?
大丈夫かな?
心配になってエドワードの部屋を覗きに行く。
制服のままベッドに倒れるように寝てた。
「あちゃー、やっぱり限界だったんだ……」
私はセレナを呼びに行き、一緒にエドワードの所へ来てもらった。
とりあえず、靴と靴下を脱がせて、制服を脱がそうとするとセレナに止められた。
「制服、しわになっちゃうよ?!」
「……従者を呼びましょう」
えっ?
「そうか! こういう時の従者か!
忘れてたよ! セレナ、ありがとう!」
私はエドワードの従者を呼びに従者棟へ走った。
◇ ◇ ◇
兄様とお父様には手紙で、学校長が王家に私を国から出さない方がいいと進言するらしいと聞いたので、何か連絡があったら知らせて欲しいと書いて出してある。
お父様へはもう着いて、今度の休みにミクラとジュンの家に行くために迎えに来てくれることになっている。そこで話せたらと思う。
孤児院にも行きたいが、試合があったのでずっと行けてなかったし、私とウォロとオードリーの3人ならさっとすぐ行けるけど……。
1寮のみんなも行きたいと言うだろうしな。
もう試験もあって夏休みになるからどうしようかと考えていたら、エドワードに孤児院の慰問のことを聞かれた。
今度の休みにミクラとジュンの家に行くので、午後から孤児院に行けると思うと話すと一緒にと言われた。
午前中、もしかしたら父と話をするかもなので、準備をジュンに任せてしまうかも……と言うと、みんなで用意すれば大丈夫と言われた。
で、結局いつものメンバー。
今回はお父様の馬車が迎えに来てくれるので、そちらは王家の馬車に4人乗って来てもらうことにする。
こちらの馬車の中でウォロとオードリー、シーラを交えて、お父様と話をした。
手紙で伝えたことはまだ特に連絡ないそう。
私とウォロは気を付けるけども、何かあったら味方をしてくれるようにお願いする。
夏休みのことを相談すると、王都の近くの街に遺跡があるのでそこはどうかと提案された。
「遺跡?!」とウォロが喜ぶ。
王都から山の方へ2時間ほど行ったところで、観光地のようになっているという。
親戚の別荘が借りられるからどうだろうと言われた。
ダイゴはミーア帝国から来るのに日数かかるけれど、早めに出てきてもらうこともできるし!
ダイゴが来るなら兄様とハロルドも来ると思うと言われた。
ウォロがジョシュア兄様も来ると言われた時、ちょっと嫌そうな顔をした。
確かに、お目付け役的な感じだもんな。
お父様が兄様に連絡しておいてくれるという。
よろしくです!
馬車の中で話が済んだので、ミクラとジュンの家に着いてから、いつものようにクッキーやサンドイッチ作りができた。
ライト以外の男子達はお父様とミクラに試合のことを話している時間が長かったけれど。
私も呼ばれて自分の試合の話を報告させられた。
孤児院ではみんな元気で笑顔で迎えてくれた。
良かった。
今日は男子とミクラが児童部へ。
女子とジュンとシーラが幼児部へと分かれた。
帰りの馬車の中、私はウォロに寄りかかって寝てしまった。
確かにここのところ、なんだかいろいろなことを考えたり、動いたりしてたから、疲れてるかも……。
テストもあるし、頑張らないと!
読んで下さりありがとうございます。
次はやっと夏休みだ!
今日は午後投稿できる予定です!
よろしくお願いします。