34 幸せを守るために
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
今回は長く書き続けることにも挑戦中。
お付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
カトレア先生の研究室でいろいろな測定器を使って実験させてもらい、先生手作り料理までランチに頂いてしまった。今度、何かお返しのお菓子でも作ろう。
午後からマリアが来てくれた。
カトレア先生が呼んでくれたみたい。
先生を交えてマリアと一緒に魔法についての話をする中で、話は将来についてのことになった。
「卒業後のことはもうある程度決まっているのですか?」
婚約してるとは聞いたことはなく、でも、やっぱり結婚とかしちゃうのかな?
「私は文官試験を受けるつもり。
王宮で文官をして国を支えるつもりよ。
私はできればお互いを高め合うことができるような人と出会って生きて行けたらと思ってるの。
公爵令嬢としては変わった考え方をしているとはわかっているし、親にも嘆かれたけどね。
でも、今は好きにしていいと言われているわ。
きっと、第1王子の婚約者候補から外れたことがすごいショックだと思われてるんじゃないかしら?
ふふふ、全然そんなことはないのだけれど。
そういえば、今日はウォロは一緒じゃないのね?」
「はい、剣術大会が近いので選抜選手のウォロは練習で学校外に行ってます」
「そうなんだ。今年の1年生いいところ行くかもね!
あなたとウォロの関係、私は好きよ。
将来はミーア帝国に行くの?」
「そうなると思います。
でも、まだそこまでちゃんと話したりはしていなくて。
きっとお互いにその時にしたいこと行きたい所を話し合いながら決めていくんじゃないかなと思います」
「そんな風に思い合える相手がいるってすごく幸せね」
私は大きく頷いた。
そろそろみんなが帰ってくる頃だけど、どこで待っていようかと思っていたらマリアが食堂でお茶しましょうと誘ってくれた。
ありがたくご一緒させてもらう。
孤児院の慰問のことと、その後の学校長との話し合い。
そして、私だけ帰され、その後エドワードの様子が気になること……。
「いろいろ考えてるより、ちゃんと話して聞いた方が早いかも。
私も今度アンドレアスに聞いてみるわ!」
「そんなこと聞けるんですか? すごいなあ。
私、エドワードに聞いて気にするなと言われたから、どうやってもう1回聞こうか話そうかと悩んでますよ……」
「そうなの?
そのものずばり聞いちゃえばいいのよ」
「うう、そんな簡単には……」
出かけていたみんなが帰って来て食堂に入ってきた。
ウォロが見つけてくれたみたい。
「でも、よくここにいるのわかったなあ……」
呟くとそれを聞いてマリアが笑った。
「例の魔道具があるでしょう!」
「あ、居場所がわかる奴でしたっけ!
そうでした!
みんな、おかえりなさい!」
「マリア、ありがとう。ネモといてくれたんだね」
ウォロが安心したようにお礼を伝えた。
「うん、守っといたわよ!
また何かあったらぜひ頼ってね!」
マリアがうれしそうに返事をしている。
ん?
ということはカトレア先生ではなく、ウォロが事前にマリアにも声かけていたということか?!
みんなで食堂で夕食も食べていくことになり、マリアも一緒に食べ、今日の練習のことを聞いていると、4-1寮の人達が来たのが見えた。(アンドレアスとアリスがいるからたぶん4-1なんだろう)
こちらに気が付くとアンドレアスが近づいてきた。
アリスはしぶしぶついてくるという感じに見えた。
「エドワード、そして1年のみんなごきげんよう。
マリアまでいるのか、ずいぶんにぎやかだね。
ご一緒してもいいかな?」
「ごめん兄様、剣術大会が終わるまではあまり他の学年の選手と馴れ合いたくないんだ。
悪いけど、今日は遠慮します」
エドワードが少し硬い表情をして言った。
そうか、アンドレアスも選手なんだな。
「……わかった。では今日はそうしよう。
ネモ、君は選手ではないのだろう。
今度ゆっくり話をしたいのだが、都合がいい時があったら教えてくれ」
ん?
エミリアじゃなくて、ネモって呼んだ? なんで?
「……選手ではないですが私も剣の授業を取っています。
選手のみんなと一緒に過ごすことも多いですし、今のところ、そのような時間はありません」
「そうか、では剣術大会が終わったら、時間を作ってくれ。
では失礼する」
4年生達が奥のテーブル席に進んで行った。
第1王子と何の話するんだ? アリスも一緒だろうし。
いや、アリスがいてもいなくても……いやだな、今は。
食べ終えてマリアにお礼を言って別れ、寮に向かった。
「また明日! 自主練で!」とダリルが抜けて行った。
「ウォロ、大切な話がある。
ウォロの部屋に行くか、こっちに来るかどっちがいい?」
「じゃあ、待ってる」
「うん」
寮についてからウォロの部屋に行こうとするとセレナが私の部屋に来た。
「ネモ、ちょっといい?」
「あ、これからウォロの部屋に行くんだけど、ちょっとで終わるなら先に聞く」
「ごめんね。じゃあ、手短に。
あのね、エドワードにハンカチあげた?」
うん? ハンカチ?
あ、エドワード、新品返してくれたから、私のは向こうにあるのかも。
「この間、貸したのが洗濯に出したら見当たらないとかで、新品を返してくれたけど……。
だから、あげたわけじゃないけど、ね」
「そうなんだ。わかった。ありがとう」
セレナはそう言って部屋から出て行った。
なんだろう?
私のハンカチが見つかったのか?
でも、もう新品返してもらってるし……。
さらに返せというのも変だしね?!
とりあえず私はウォロの部屋に向かった。
リビングにティエルノとオードリーとライトがいた。
エドワードとセレナは自分の部屋か!
ドアを開放してないといけないので、ウォロに近づいて小さい声でカトレア先生に言われたことを話す。
ウォロがびっくりしている。
「国同士の約束を破棄しようとするなんて、しないとは思うけれど……」
そうか、国同士の話し合いや許可でこの婚約は決まっているし、もう私もミーア帝国に挨拶行ってるしね。
「でも、とりあえずこんな動きがあるみたいだとお父様や兄様に相談しておこうと思う。
ウォロもミーア帝国の方に報告だけでもしておいてくれない?」
「わかった。
カトレア先生、ギーマ先生、マリアは味方と思って大丈夫そうだな」
「うん、他にも私達のことを心配してくれてる先生もいるみたいだけど誰だかわからない……。
どうするかウォロと相談するように言われたけれど、とりあえず連絡して様子見かな?」
「そうだなあ。
今日、第1王子がネモのこと誘ってたよね。そういうのをいつまでかわせそう?」
「剣術大会までは無理って言ったけど」
「7月初めまでだな。それまで味方を確認して、準備して備えるだな。
もし国の方に働きかけがあったら突っぱねてもらうしかないし。
ネモ、学校内で信用できる人と一緒に行動しろよ。
絶対にひとりになるな。気をつけろ」
「どういうこと?
まだ何か嫌がらせされるとか?」
「国との約束をひっくり返すのが大変なら、個人の事情でなんとかしようとしてくるかも。
どちらかが婚約にふさわしくない行動をしたとか。
例えば、この前みたいにネモがどこかに連れ込まれて、それが大ごとになったりしたら?」
「それを言うならウォロだって……」
言いかけて気が付く。
ウォロに手を出そうする人はいないか?
いや、逆もあり得るな。
「ウォロも気を付けて、何かの事件の犯人に仕立てられることだってあるよ」
ふたりでため息をつく。
「オードリーには話しておいた方がいいかも」
「そうだな。話しておいてくれるか?」
「うん」
◇ ◇ ◇
学年対抗剣術対抗試合の1週間前の剣の授業の時に先生に呼ばれた。
「ネモ、試合してみないか?
剣の授業を取っている女子、4年に1人と1年のネモのふたりだけなんだ。
お互いにちゃんとした公式試合をしたことないだろう」
確かに、練習試合はしてるけども。
「エイダという名の4年生はネモより少し体格が大きい感じだな。
細身の長剣を使っている。
ネモもまだ新しい剣に慣れてなければ使いやすそうな長剣にしてもいいぞ。
どうだ?」
「そうですね。だいぶ今の剣にも慣れましたし、挑戦してみたいです。
確認したいんですけど、剣術だけど私の剣は身体の動きが重要です。
剣と身体を使った戦い方で大丈夫でしょうか?」
そうなんだよ。
この両手剣は動き回って相手の長剣をかいくぐらないと行けないので、剣と同じくらい身体捌きとか足をかなり使うことになる。
「ああ、そのつもりでその剣を教えてるからな」
「じゃあ、専用の手甲足甲つけてそれでの武器への攻撃もありですか?」
「おう、木剣使用だが……。
身体に直接攻撃は禁止するが、防具、武器への攻撃はOKとしよう」
「それなら……、なんとか試合になると思います。はい、やります」
先生はニッと笑って「楽しみだな」と言った。
「剣術大会の決勝戦前の試合だ。楽しませてくれよ!」
えっ?
そんな大舞台なの?
自主練にもっとまじめに取り組まなきゃ!!
その日の自主練で4年の女子と試合をすることになったと話すと、ティエルノとエドワードはそのエイダを知っているという。
騎士団長の娘だそうだ。
何それ、めっちゃ強そう。
「体格は……そうだな、エドワードぐらいかな?
剣はすごくきれいなお手本みたいな感じの剣捌きだよ」とティエルノ。
ふむふむ。なるほどね。
「エドワードの剣術もお手本みたいにきれいだよね。
似ていて正統派って感じか。
エドワード、ちょっと私と立ち会ってみてくれない。感じを知りたいんで」
エドワードはちょっと戸惑ったけれど、立ち合いをしてくれることになった。
私は手甲足甲をつけて、説明した。
「私の防具は手足のが珍しいかな。
金属入りでここで攻撃を受け止めることもできる。
後は軽めの防具ぐらい。だから手甲足甲も攻撃に使うことがあるよ。
試合の時は防具と武器に当てることはOKなので。気を付けて」
エドワードが頷いた。
頭の防具を着けると視界が狭まる気がしてあんまり好きじゃないんだけど、試合なら仕方がない。
これも慣れないと。
ティエルノに審判をお願いして練習試合が始まった。
さすがエドワード、構えがきれい。
長剣の方が間合いが遠くから攻撃できるから、こちらは不用意に近づけない。
動きを誘って攻撃を読んで踏み込まないといけない。
それは向こうもわかっているから、待ちの姿勢だな。どう揺さぶるか……。
私は右手を前に出して間合いを詰めた。エドワードが右から左へ横に剣をふるう。
縦にすると手甲に弾かれると読んだね。
でもそれが狙い!
私は長剣を避けて低い姿勢になると右へ出てエドワードの右後ろに出た、剣はまだ反対側、行けるか?
エドワードが身体を捻りながら左足をずらしてたちまちその隙を失くしてしまった。
私はあわてて長剣の届かない間合いまで下がる。
うーん、なるほど。
近づけるけど、こちらから攻撃するのは厳しいな。
剣を下げさせたいな。
私は足甲で長剣に蹴りを入れて押さえるように下げさせようとした。
しかし、弾かれる。
私の力不足。
エイダはエドワードより力が弱いだろうか。
弾かれた勢いを利用して、少し離れるが、向こうに考える間を与えない作戦で突っ込んだ。
今までの2回の攻撃でこちらが様々な攻撃ができることがわかっているから、どう反応するか見たかった。
ちょっと戸惑ったようだが、剣を振り上げることなく押し出してきた。
力で弾こうと思ったみたい。
左の逆手の剣でいなして、その力を利用して足を振り上げエドワードの背後に回る。
右手の短剣で頭を叩こうとしたら、後ろに剣を振り上げる形で剣先が私に触れそうになり、私はあわてて避けて、右側に転がって、すぐ立ち上がる。
エドワード、やるな。
今のは正統派じゃない動きだ。
そこでティエルノに止められた。
エドワードが頭の防具を外して叫んだ。
「ネモ、緊張感がただ事じゃないんだけど!
なんだよ、その剣!」
「へ? こういう剣術なんだけど?
エドワードもすごいじゃん。
最後の攻撃、正統派なら対応できなくて、やれると思ったんだけどな」
「やれるって何? 怖いんだけど」
「あー、得体が知れなくて怖いと思ってもらえたら、何とか試合になるかな!
こっちは攻撃力も間合いもそちらよりないのでこんな戦い方になるんだけど」
「急所狙われてる緊張感が続いて、精神的に疲れる。
あまり戦いたくない」
「そうか、でも、これ実戦を積まないといけないんだよね。
試合までにまた立会いしてくれるとうれしいな!」
「そんな笑顔で言われても……」
エドワードが苦笑いしながら言った。
読んで下さりありがとうございます。
次は大好きな剣術の試合の様子をたくさん書けたので、さらに長くなってます。
剣道を主に他にも長刀と合気道を少しかじっていて戦いの様子を書くのは大好きです!
(前作の人質王女のルティで剣術や戦いは思う存分書いてます。ルティはすごく強かったので)
午後投稿はお休みします。今、夏休みのところを書いてます
これからもよろしくお願いします!