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12 ネモと恵実

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。

今回は転生物に挑戦しています。

ゆっくりと書き進めているのでお付き合いいただけるとうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。



 剣の稽古が終わってからも、ジョシュア兄様に言われたことが頭から離れない。

『……なんでそこまで人に頼ろうとしない?』


 11歳の自分が今まで生きてきた環境と、前世の自分が20歳だったこと。

 人に頼ろうとしないのは、今世の母を失ってからの体験が大きいと思うし、前世の自分より年下の者を守らなくてはいけないという気持ちがあるからだと思う。


 それでも今世はまだ11歳。大人に頼らなければ生きていけない。

 それはわかっている。


 そして、今、たぶん一番苦しんでいるのは、ウォロに対しての気持ちだ。


 11歳のネモはウォロが好きだ。

 恋なのだ、と思う。

 

 それに対して、20歳の恵実が11歳のウォロを保護者のような気持ちで見てしまう時がある。


 そんな自分にイライラしてトゲトゲして、関係ないジョシュア兄様に当たるなんて、最低だ。


 私が考え込んでいるとみんなが心配するのはわかるが、考えてもどうしたらいいかまったくわからない。


 私はジュンに「ちょっと部屋で休んでくる」と告げて、そっとみんなから離れると、別荘の反対側に回り、湖に向かって走り出した。


 今はひとりになりたい。

 こんな話は誰にも相談できない。


 湖のそばの木立を見つけ、陰に座りこむと小さくなってうずくまる。

  

 今世の自分が20歳まで生きれば、このようなことは感じなくなるのだろうか?

 でも、まだ9年もあるよ。

 長いな。

  

 母が生きていたら、相談できたかな? 

 母だったら、お母様だったらどうしたか?


 こんなくよくよ悩んでいる私は嫌いだ。

 涙がポロポロと零れた。

 泣きながら眠ってしまっていたようだ。

 

 頭を撫でられた感覚がして目が覚め、目を開けるとウォロが私の顔を覗き込んでいた。


「……?」

 とりあえず上半身を起こしたが、少しの間、寝起きだったこともあって、ぼーっとウォロと見つめ合う。

「ネモ……」 

「はっ! 

 ごめん、心配かけて!

 みんなも心配してるよね?!」

 私はあわてて立ち上がろうとしてちょっとふらついて、また座りこんでしまう。


「大丈夫。ダイゴがネモを見つけたことを知らせに行ってくれたから。

 ……何がそんなに心配なの? 何が辛いの?」


 真剣な表情で聞いてくれたけれど、私は何も言えなくてうつむく。

 ウォロが私の両肩に手を掛け、顔が近づいてくる。

 えっ? と身体を後ろに引こうとするが、肩を逆に寄せられて、額に口づけされる。

  

 えっ? なんだこれ?

 ぼんっと顔が赤くなってしまい、唇が離れたおでこを両手で押さえてわたわたしてしまう。


「かわいいな……」

 ウォロがにっこり笑った。


「……デルフィニウム様?!」


「ネモフィラ、ここまでひとりでよく頑張ったね」

「えっ、なんで?? えっ?」

「もっと早くそばに来られれば良かったんだけど、こっちも転生先でいろいろあってね。

 なかなか国外に出られなかったし、ウォルフライト王国の情報もなかなか集められなくて」

「えっ、私を助けてくれる人を送り込むとは約束してくれてたけど……、神様本人が転生??」

「うん、恵実をネモフィラとして転生させた後、すぐに創造神様にユーチャリスのことを報告に行って自分も転生する許可を得たんだ。

 できるだけ歳が近いほうがいいと思って本当に急いだんだよ。

 で、今、そんなに何を悩んでいるの?」

 

 えっ、本人に話すのって、まるで告白するみたいじゃないか?!

 あれ、ウォロでもあるしデルフィニウム様でもあるし、あれ??


 大混乱している私の様子を見て、ウォロが微笑んだ。

「もう、神ではないので、君の思考や記憶を読むことはできない。

 同じ人間として、君の言葉で話してほしい」

 あ、そうなんだ……って。

「私のために神様じゃなくなっちゃったってことですか?!」

「ま、そういうことだね」

「……ごめんなさいっ!!」

 私は頭を下げた。

「いいんだよ。ネモフィラと一緒に人として生きたいと願ったのだから」


 はっ!

 早く帰らないとみんながここに来ちゃうのでは?

 特にジョシュア兄様……。


「戻らないとみんなが心配して来ちゃうかも?!」

「大丈夫。ダイゴが何とか止めてくれてるはず。

 ウォロに話を聞き出してもらってネモの気持ちを落ち着けるとかなんとか言って、自分達が戻ってくるまで時間を稼ぐと言ってくれたから。

 そういうことでは頼りになる兄さんだから」


 そうなんだ……。

 私は大きく深呼吸すると、覚悟を決めて話し出した。


「生まれてからの私はお母様に守られて大きくなりました。

 その間、私は恵実でしたが新しい人生を子どもとして楽しめていました。

 前世の記憶に気持ちを否定されることがほとんどなかったんです。

 お母様が亡くなったり、王都で辛い目に合った時、前世の記憶や経験は私の助けになってくれました。

 私の心を守って、手をつないで引っ張ってくれる存在みたいな……。

 そんなネモフィラと恵実の人生の経験から、ジョシュア兄様に言われた様に『人に頼る』『人に甘える』ということが苦手な子どもになっていたと思います。

 でも、それは気が付けば修正をすることは可能なことで……。


 今、一番、悩んでしまってどうしたらいいかわからなくなっていたのは……。

 あの、その……、私がウォロを好きになってしまったことです!」

「それがどうして問題? 自分もネモが好きだよ」


「……その、たぶん、ネモの好きは、友達の好きを越えて、恋とか愛とか……そういう感情になってきていると思います。

 それを恵実の記憶が歳の差を感じてしまい、またウォロは子どもだから自分が守らないといけない存在だと。

 どうも気持ちがぐちゃぐちゃで。

 同じ時にジョシュア兄様に婚約のこととか言われてイライラして当たっちゃうし……。

 せっかく、ウォロやダイゴ、ミクラが遊びに来てくれて楽しく過ごしたいのに、できなくて、自分が許せなくなって……」

「じゃあさ、もうその悩みは解決だね」

 ウォロがうれしそうに言う。

「解決?」

「うん、まず、ネモの悩み。

 自分もというか、ウォロとして、ネモが女の子として好きだよ。

 だから、誰かに取られる前に婚約を申し込もうと決めた。

 恵実の悩み。ウォロは11歳の少年じゃないから。

 前世が恵実よりずっとずっとずーっと年上の元神様だから。

 恵実が守らなくていいし、頼ってほしいし。

 それに、ネモと恵実と分けることないよ。

 全部ひっくるめた魂が今のネモなんだから。

 自分もそう、ウォロとデルフィニウムで今のウォロだよ」

 

 は、なんか気が抜けて、笑ってしまった。


「じゃあ、デルフィニウム様に……。

 今のウォロは……、中身は私よりずっと大人だから頼っていいんだ……」

「そういうこと。解決だろ!」

「はは、そんな簡単に切り替えられるかな……」

「まずジョシュア兄さんに話そう」

「何を?」

「自分達がお互いを思っていて婚約したいことを」

「えっ?」

「明日、お父さんが来るんだろ。そしたら正式に申し込む」

「えっ? 

 でも、ウォロは……。

 わかった、ウォロに頼る。全部任せる。

 でも、それでいいのかな?」


 また考えこもうとする私をぎゅっと抱き寄せてウォロが言った。

「神としての力はもうないけど、愛している人を守れるくらいの力はあるよ。任せて。

 あ、今はけっこうダイゴに頼ってるところがあるけどね……」


 そうなんだ。私は笑ってしまった。


 もうだいぶ日差しが傾いている。

 暗くなる前に私とウォロは別荘に戻った。

 ダイゴが心底ほっとしたような表情をしていた。

 ジョシュア兄様は怒ってるのを我慢しているような表情をしている。

 ごめんなさい……。


「みなさん、ご心配かけてすみませんでした。

 最近、ちょっと気持ちが落ち着かなくて、考え込んでしまうことがあって、変な態度を取ってしまったこともあります。

 ごめんなさい。

 ひとりで考えた後、ウォロと話しをすることができて、気持ちが整理できました。

 心配したと思うけれど、ひとりにさせてくれて、そしてウォロと話す時間をくれてありがとうございます」

 ウォロも続けて言う。

「ジョシュア兄さん、話したいことがあります。

 後で時間を下さい」

「それはエミリアとふたりで僕と話したいということか?」

「はい!」

 ウォロの笑顔にジョシュア兄様がたじろいだ。

「わかった、まだ夕食まで少し時間があるから、ふたりで僕の部屋に来なさい」

「僕も行きます!」とダイゴが急に叫んだ。  

「あー、もう3人でもいいから早く来い!」

 ジョシュア兄様がうんざりしたように言った。

読んで下さりありがとうございます。

20歳までの前世の記憶が今世の助けになることもあれば、変な足かせになることもあるかなと思い、自分の気持ちが整理できずに悩むネモの話になりました。

難所は越えたので、これからしばらくは楽しく書き続けられるかな?!

頑張ります!

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