天界開放大戦④
聖堂の近く、深い森の中にアレンはいた。
ガブリエルと口論になってから、十年前の記憶が蘇ってくる。
「あの日、俺の手で……レナが……」
あの時は力が暴走していて意識はほぼなかった。ただ、一人の少女をその手で殴り殺した感覚だけが鮮明に残っている。
「分かってる……でも、もう誰も死なせたくないんだ……!」
怒りに任せて巨木に拳を振るった。
静寂に包まれた森の中にただむなしく木々が揺れる音が響いた。
「レナ……あれからもう10年になるな……」
ガブリエルは砂埃の舞う砂漠に無造作に置かれた墓標群の中にいた。
「俺とミカエルが政府を抜けてから9年にもなる……」
「その間にいろいろなことがあった……明後日には、俺たちは政府に戦いを挑む」
「どうか見守っていてくれ。俺がこの800年の歴史に終止符を打つ」
小さな墓標にそっと一輪の花を添えて、墓標群を後にした。
「アレン……」
アレンは既に聖堂に帰宅していた。
「ガブリエル……さっきはごめん。レナの墓に行ってたんだろ……俺もこの後、あいつの好きだった花を添えに行ってくる」
アレンは椅子から立ち上がって、聖堂を後にしようとした。
「待て、アレン」
「お前の気持ちはわかっている……あれから10年も経った。政府に勝つためにはお前の力が必要だ」
「ただ、これから俺と戦え。お前の全力を俺が受け止める」
「それで力が制御出来たら、4段以上に使用を認める」
「……分かった」
二人は聖堂の外へと出た。
互いの目には、かつての仲間であるレナの顔が浮かんでいる。
忘れられない、大切な仲間の笑顔をもう見失いたくない。
「俺たちは……みんな深い森の中でさまよっているんだ」
「抗い、生き延びていく中で、共に過ごした仲間を見失ってしまう」
「でももう、誰も失わないために……誰も悲しませないために……!」
「俺は自分を支配する……!!」
アレンの体を黒い霧が纏った。
「あぁ、来いっっ!!」
ガブリエルは神器【聖剣ユグドラシル】をかまえる。