天界開放大戦⑤
ガブリエルは念じた。深い闇の中で彷徨う自分を照らす何かを探し続けていた。
いつしかその闇の中に、仲間たちを巻き込んでしまっていた。レナを失ったあの日から、アレンは不自由だっただろう。
アレンは念じた。どうか迷える我を救い給えと。地の果てに望む楽園があるのなら、何を捨ててでも歩み続けよう。その果てにある一縷の光が全てを照らすと信じて。
「天野流……四段 覇化……!」
アレンは小さく、しかし力強くそう呟き、体の内に力を溜め込むように構えた。黒い霧が腕を覆い、強力なエネルギーがアレンに流れる。
「あぁ……こんな気分、初めてだ……」
「有限の最果てが、こんな所にあったなんてな……」
瞳に写る美しい世界が、全てを包み、全てを諭すようだ。
「これが無限か……」
「心地がいい……」
途切れるような声が、有限と無限の世界を紡いでいる。
「行くぞ、ガブリエル」
その声は、恐ろしいほどに澄んだものだった。ただただ、何も無い世界に永遠と轟くようなその声がガブリエルへと恐怖を伝えた。
世界が音を立てて崩れ行くような、そんな感覚だ。ガブリエルは混沌の意識の中にいた。アレンの言葉を最後に、意識が曖昧になってしまった。
「これが天野流の真の姿か……無限覇道による人智を超越した武道」
風が靡いた。
「来るっっ!!」
一瞬で意識が現実に引き戻される。
「天野流……六段 六千白夜……!!」
無数にも見える黒拳が、視界を覆った。成す術もなくガブリエルは敗れた。
「俺の負けだ……アレン」
「お前をずっと否定していた……本当にすまなかった……」
「もう一度、力を貸してくれ……」
アレンは差し出された手を強く握った。そこに再び、硬い絆が芽生えた。
〜天界政府奇襲作戦まで残り一日〜
解放戦線のメンバーが慌ただしく天界中を駆け回っている。来たる巨大な戦いを前に、皆が闘志に燃えていた。それはエースも同じだった。
「メアリー、こんな弱い俺でごめん……でも、必ず君を救って見せる……!」
果てしない蒼穹の空の中で、何処かにいるメアリーに誓いを捧げた。
その日の夜、決戦の前日に不思議な夢を見た。
暗がりの中、男が一人、こちらを向いて立っている。
「お前……誰だ?」
「俺は……アダムス……」
男は少しの沈黙の後にそう呟いた。
アダムス、聞き覚えのない言葉だ。その男に近づこうとした時、男が顔に被せていた羽織が風に吹かれて解けた。蒼い瞳に、黒の髪。男と目があった時、雷に打たれるような感覚とともに目が覚めた。外では既に小鳥が囀りを楽しんでいる。それはまるでこれから起こる戦いに奮え、舞を踊るように見えた。




