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猟機兵装 - 思いつきの記録 -  作者: イワトノアマネ
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09. バイオレット11


【統一経済圏推進連合軍基地の司令室】


「腕のいいパイロットは貴重だ。それに、いちいち軍法裁判などやってられん」

「彼には減俸だけでも痛いでしょうから、これくらいでいいでしょう」


 デスクに置かれた情報端末には、ライタという名前のⅢ型パイロットの報告書が映し出されていた。


「出来るだけ早く任務を与えてやれ、仲間からの信用を取り返すチャンスをやらないと闇に落ちてしまうだろう」

「わかりました」


 壁面にあるスクリーンにはワーカーから逃げる少女が映し出されていた。


「この子が我々に牙を剥くとは思えませんね」

「そうかな、この子は間違いなく我々に牙を剥くだろう」


 情報端末を手にして何度か画面に触れると少女の顔と名前などの個人情報が映し出された。


「では、始末いたしましょうか?」

「いや、その必要は無い。獲物の数もそれなりにいてもらわないと、狩とは言えないからな」


   ◇


【統一経済圏で猟機兵装のライセンス生産を行ってる企業の役員室】


 背にした窓から刺し込む夕日に照らされ、顔のわからない男が椅子に座っていた。

 

「本当に、これをあの国に渡してよろしいのですね」

 

 男の目の前にある大きな机の前には、応接用のテーブルとソファーがあった

 そのソファーにも男が座っている。

 テーブルの上には記録カードが置かれていた。

 

「上からの指示だ、問題ない。コチラには次のカードがある。そのカードに収めてある機体ぐらい、すぐに作ってもらわないと困る」

「わかりました」

 

 夕日に照らされている男の机には、猟機兵装の模型が置かれていた。

 模型の下にある黒い台には金色のプレートが貼りつけられている。

 そこには黒い文字で武闘Ⅳ型と書かれていた。


   ◇


【統一経済圏推進に反対している国にある、兵器生産工場】

 

「我が国で猟機兵装アーマーがこんなに早く完成するとは夢のようだ」

「そうですね、どうやって手に入れたのかは知りませんが、あの情報のおかげです」

「そうだな、そのへんは知らないほうがいいのだろうな」


 巨大な工場で次々と組み上げられてゆく猟機兵装アーマー

 ここは最終組み立て工場。

 頭、胴、腕、腰、足は別な工場で組み立てられる。

 それらの工場で組まれる部品は更に他の工場で作られる。

 

「これで、奴らも好き勝手できなくなりますね」

「そうだな、バイオレット11……Ⅲ型とでも互角にやれるだろうな」


 平面の多い武闘シリーズの装甲に比べ、丸みのある装甲が特徴の機体。

 波動型浮遊石の情報は無かったが、独自開発に成功していた。


   ◇


 数年後……戦争が始まった。

 

 統一経済圏推進連合軍は圧倒的戦力で国境を越えた。

 Ⅰ型を主力としⅡ型で支援しながら進む本隊。

 Ⅲ型による遊撃部隊の連携で開戦から3日で王都が落ち王族が拘束され降伏した。


 しかし、戦闘は続いていた。

  

「サヤカ! 前に出すぎだ!」

「大丈夫、あんなスケートヤロウ何機いたって負けたりしない」


 ここは連合軍が制圧した都市近郊の丘陵地域。

 小さな家がまばらに見える。

 そこを駈け抜ける数機の猟機兵装アーマーバイオレット11。

 

 進む先には十数機のⅡ型が全力で逃げていた。

 

 操縦スティックを握っている女。

 パイロットスーツに身を包んではいるが、軍のものとは違っていた。

 機体の肩には牙を剥いたオオカミの絵が描かれていた。

 

 先頭をゆく彼女の機体が、逃げるⅡ型に追いつく。

 両手に握られている片刃の直刀。

 左腕を振り上げ、敵の右肩接続部に刀を叩き付けると、サヤカの乗ったバイオレット11は、すぐに離れた。

 

 右腕が落ちバランスを崩しかけるⅡ型。

 そこへ1発の砲弾が背中に突き刺さる。

 

 かかとで青白く輝いていた浮遊石が光を失った。

 浮いていた足が接地した瞬間、土砂を巻き上げ転がり出す。

 いや、叩きつけられ、跳ね回っていた。

 

「タイガ、次行くよ」

「オッケー、まかせろ」

 

 先行するサヤカが敵の動きを止め、タイガが1発で起電石を撃つ。

 他のバイオレット11も2機で組んで敵を次々と狩っていく。

 前線にいたⅠ型はすでに全滅し、支援型のⅡ型は重火器を捨て逃走していた。

 

 市街地が見えてきたときには、Ⅱ型が残り2機となっていた。

 

「サヤカ! ここまでだ深追いはするな」

「そうね、了解」


 先頭をゆくバイオレット11が刀を背中のハンガーに収め、代わりに腰に下げていた銃を両手で構えてた。

 そして、逃げるⅡ型へ銃を向け砲弾が放たれた。

 2機のⅡ型が土砂を巻き上げ転がった。

 

「逃がすわけ無いでしょ」


 バイオレット11はスモークを打ち出し反転、山の中へと消えていった。



 国王が降伏した後も徹底抗戦を主張し戦っているのは、軍の地方基地指令だった。

 残った戦力を集め、義勇兵も受け入れ戦っていた。


 その後、留学中で拘束を逃れた国王の孫娘を君主とした亡命政府が樹立された。

 

   ◇


【統一経済圏本部ビル。推進連合幹部室】


「順調だな」

「ええ、あの国が亡命政府を認めてくれたおかげで、始める理由が出来ました」

「あの国さえ始末できれば、統一経済圏の完成だな」

「そして、我が国がその中心となって世界を支配する……楽しみですな」

「ふっ、ハッハッハッハ」


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