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猟機兵装 - 思いつきの記録 -  作者: イワトノアマネ
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10. 戦場へと続く道へ


「会長! これはどういうことですか!?」

「仕方ないだろう……武闘シリーズは売れすぎた……売れすぎたんだよ」


 統一経済圏に加盟している国で武闘シリーズは誕生した。

 貿易摩擦を恐れた政府が、統一経済圏本部のある国にライセンス生産工場を建設するよう、お達しが来た。

 

 あれから数十年……。


 武闘Ⅳ型ブラッドアーマーの試作機が完成。

 テストを繰り返している頃だった。

 

 兵器の研究と量産を同じ企業で行えない法令が統一経済圏で施行された。

 

 これまでどおりに研究開発は行える。

 工場は別会社になるはずだった。

 しかし、出資者会議の結果は違った。

 

 量産販売はライセンス工場のある国で行うことになったのだ。

 

 このことで工場で働いていた人々は解雇するしかなかった。

 部品の生産工場の半数以上が工場のある国に移転した。


   ◇


「あなた……」

「うちは大丈夫だ、民間用ワーカーだからな」


 兵器ではないワーカーの部品生産を続けてきた小さな工場。

 小さな子供達の寝顔を見ながら未来の事を話す夫婦。

 

 数十年後。


「たっだいま~。おじいちゃん、わたしね猟機兵装アーマーのパイロットになったんだよ」

「ああっ。人事部長さんから連絡があったよ」

「なんだ~知ってたんだ~」

「エリカが考えて決めたことだ反対はしない。けどな、模擬戦とはいえ怪我するかも知れないんだ、絶対に無理するな」

「うん、わかってる」


 工場の事務所に入ってきたのは孫娘のエリカ。

 武闘シリーズという名機を開発、生産していた巨大企業……今は軍用機の研究開発と民間用ワーカーの製造企業。

 そこに勤務している。

 

「ワーカーじゃないんだ、パイロットスーツはきちんと着ろよ」

「うん、大丈夫」

「乗り降りには注意しろよ、落ちたらケガでは済まないんだぞ」

「わかってるよ」

「それと……」


 エリカは心配してくれている祖父の手を握って笑顔を見せた。

 

「心配してくれてありがとう。ちゃんと気をつけるから」

「よし、約束だ」

「うん」



 エリカが事務所を出て家に帰ると客が来ていた。

 

「こんにちわだぞ」

「お~タカシく~ん、こんにちはだぞ~」


 いとこの子供、タカシ君。まわりの人の話を真似て語尾に『ぞ』を付けるのがお気に入りな時期を迎えた小さな男の子。


「お姉ちゃんと遊ぶぞ~」

「おねえちゃんとあそぶぞ~」


 近所に住んでいるためいつも遊びに来てる。

 子供と遊ぶのが好きなエリカ。

 子供と遊ぶことで気がついたのは、ストレスを打ち消す魔法のおまじない。

 語尾に『ぞ』を付けることだった。

 

 緊張したり、集中しているときは普通だが、気を許せる場所では『ぞ』を付けるのがいつの間にか癖になっていた。

 

   ◇


「パーツセンターでワーカーの操縦をしていた、サイトウ・エリカです。よろしくお願いします」


 開発室の会議室で十数人の社員が集まって自己紹介が行われ、すぐに身体測定……パイロットスーツ作成に必要な採寸が行われた。

 パイロットスーツが完成するまでは、タキタ教官の指示で基礎体力作りと座学が行われていた。


「まさか休みの日にも朝から走らされるなんて思わなかったぞ~」

「そうね、学生だったころを思い出すわね」

「わたしは運動苦手だから、調整だけのパイロットだったのに……」

「俺だってこの会社で教官なんてするとは思って無かったぜ」


 4人は呼吸を整えてから、木陰でストレッチを行っていた。


「今日の座学は無し、解散と言いたいが明後日から始まる軍での講習。体力は何とかなりそうだが、各個教練での基本姿勢ぐらいは教えておこうと思ってな」

「敬礼や、気をつけ休め、ですね」


 コハルがプラスチック容器に入ったドリンクを手にしていた。


「あ~っ、それ知ってるぞ~、右向け右ってやつだよね」

「行進とかやるんですか? わたしあれ苦手で……」

「あっ、サトコってアレやっちゃう人、手足が一緒ってヤツ」

「エリカってけっこう、えぐってきますね」

「クリヤマ、安心しろ、行進はない」


 この後、3人はタキタ教官の指導で、基本姿勢を確認してから解散となった。

 その日から訓練中は敬礼をするようになっていた。


   ◇


「お~っ、GGA03ザンゲツに乗ってるぞ~」


 前回の模擬戦で勝利し、採用となったGG社製ザンゲツ。

 そのコックピットにエリカが座っていた。

 コハルが外からコックピットの中を見ていた。


「現行の最新鋭機に、わたし達が乗ってもいいのかしら……」

「問題ないです。相手だって旧式とはいえ武闘シリーズに乗れるんですから」

 

 サトコが搭乗用の足場にある手すりを握り締めながら、ザンゲツの頭部に目を向けていた。


「ザンゲツって、Ⅴ型の外側を変えただけにしか見えない気がしませんか」


 大戦末期に生産された武闘Ⅴ型ラピッドアーマー。

 短距離飛行用だった磁界変性燃料推進器を短期間で進化させる事に成功。

 それを装備することによって、高高度巡航能力を得た機体。

 その能力を生かし、奇襲を行い多くの戦果を上げた。

 それと同時に多くのエースパイロットを生み出した優秀な機体。

 

 これ以後、軍の機体は3期連続で統一経済圏本部のある国。

 そこのGG社へと移った。

 Ⅴ型と性能に大きな差は無い。

 納品価格はそのままで生産コストの削減、すなわち利益を出すことで優秀な機体であった。


「サトコ、これとⅥ型Cが模擬戦を行ったときの資料ってあるかしら」

「あるはずです。そうですね、帰ったら探します」




 軍で一週間行われた講習は、女性の猟機兵装アーマーパイロットと行動を共にし、軍人としてと言うよりは、女性パイロットとしての話を聞かされていた。

 これから猟機兵装アーマー乗りになる仲間として。


 軍での講習を終えたこの日。

 3人は戦争になれば軍人として扱われることになった。

 この事が彼女達の未来に大きく影響することになるとは、このときはまだ誰も気にしていなかった。


2019.02.24

サトコの口調をですますに変更。

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