38. 混沌
【反乱軍司令室】
「GG社演習場の監視班より入電。大隊規模のザンゲツが離陸。北部基地方面へ向かったとのことです。」
「――キリシマ隊より入電。キヌタ班、北部基地の制圧に失敗。詳細不明。支援部隊のキリシマ隊は近郊で待機中」
むき出しのコンクリートの壁に覆われた反乱軍司令室。
義勇軍を指揮していた男が大きなスクリーンを眺めていた。
「キヌタ兄弟が、しくじったのか?」
「あの二人ならどんな状況でも、なんとかしてくれるとは思いますが、伝えておきましょうか? あの人に」
隣に立っているのはマイナ。
「あの人? ああ、そうだな、大隊を相手にキリシマ隊だけじゃ厳しいな」
「では、本部ビルはあとでよろしいですね」
「そうしてくれ」
「了解です」
◇
【キリシマ隊】
「信号弾! 赤3。来ました」
工事中のトンネル内に隠れていたキリシマ隊。
機体を降り、出口付近で望遠装置を手にし、見張りをしていた男がヘッドセットのマイクに向かって叫んでいた。
「よし! 全機起動。太陽を背に低空で侵入する」
「了解!」
トンネル内で膝をついていた機体が、そのまま浮かび上がる。
ゆっくりと出口へ向かって移動。
外に出ると足を伸ばし、推進器から噴き出す青い炎が輝き出した。
「全機ついてこい」
キリシマがそう叫んで離陸。
そのあとを次々とⅤ型が続いた。
基地を離れ、道路を這うように進むザンゲツ。
補給予定の場所へ向かうテロ組織の機体。
突然上空に現れたⅤ型に驚くリーダー。
「何だ! こいつら!」
前方には低空を飛行する数十機の猟機兵装。
「Ⅴ型だと! 全機散開! 予定ポイントで合流」
ザンゲツは僅かに上昇し、左右に分かれて全速で散っていった。
「今のは何なんだ? アレをヤレってことなのか?」
「隊長! 何機かは被弾跡がありました。たぶん離脱した機体だと思われます」
「誰が、何と戦ってるんだ……こんな状況で突入して大丈夫なのか?」
キリシマはこの状況を不信に思っていた。
戦闘が行なわれているのに、信号を待てと連絡員に言われ。
信号弾が見えると戦闘が終わった。
「今のザンゲツが敵なら、基地には味方がいることになる。しかし、そんな計画は何も聞いていないぞ……」
来賓や基地司令を拘束し、Ⅴ型で突入。
武装解除の支援で終わるはずだった。
「今は、とりあえず行くしかない。全機突入!」
キリシマ隊のⅤ型から離れたテロ組織のリーダー。
コックピットの後方モニターを見ながら、息を吐いた。
「タマがあってもアイツを相手にこの機体で戦うのはゴメンだぜ!」
「なぜです? リーダー」
若いパイロットが聞いてきた。
「アイツらⅤ型は本当の戦争をするための機体だ。ザンゲツみたいな、ザコを掃除するために作られた機体とは訳が違う」
「勝てないんですか」
「このままじゃ無理だが、実戦用の装甲にすりゃ何とかなるだろうな」
数機のザンゲツが並んで低空を飛行し続けていると、他の機体が集まり始めた。
そのとき、テキスト通信で指示が入った。
「補給の後、本部ビル周辺の敵を排除せよ。追加の報酬は――」
新たな指示に顔をゆがめるテロ組織のリーダー。
「そうか、クーデターか……負けたらハーレムは無理だな」
「ハラダさん。逃げたほうが良くないですか」
リーダーに歳が近いパイロットが名前を呼んだ。
リーダーは戦争中にキリシマの僚機として戦っていた男だった。
「負けたら俺達は捕まって殺される。だから勝ってハーレムか戦闘で死ぬほうがましってもんさ」
「そうだな……俺達にはそれしかないな」
◇
【軍の基地】
「稼動できる機体は補給! 手の開いてる者は負傷者の収容を急げ!」
基地司令が指揮車の外で拡声器を手にして叫んでいる。
「敵のパイロットは拘束して連れてこい!」
被弾した機体や、砲弾が突き刺さり、吹き飛んだ滑走路の破片。
ガレキと化した建物や地上の格納庫から、薄っすらと煙も昇っている。
「衛生兵!」
「――誰か、助けてくれ。ココから出られない」
猟機兵装の拡声器で助けを求める男。
小銃を手にした男達。
「両手を頭に! よし拘束しろ!」
多くの車両が走り回り、機体から負傷したパイロットを救出。
敵の機体でハッチが開かずに閉じ込められていた者を拘束。
地下の処置室にストレッチャーに乗せられ運ばれる者。
それを手伝っていた清掃作業服の男が、建物の奥へと消えてゆく。
サトコはエリカに貸した機体に乗り換え、転がっている敵機の武装解除に協力。
エリカの機体は、コウタ達が兵達に銃を向けられながら修理中。
エリカはハルトの乗せられたストレッチャーについて行こうとしたのを、基地司令に止められ、格納庫の隅で膝を抱えて座っていたが、いつのまにか眠っていた。
コハルはキミズカ機とともに補給を行なっていた。
「私達、まだ戦うんですか?」
「わからん。だが、また来たら戦うしかない」
「そうですよね、今、戦えるのは私達3機だけですものね」
「すまんな、巻き込んで」
「キミヅカ中尉が謝らないでください、悪いのは襲ってきた彼らですから」
◇
【軍の基地周辺】
道路脇の歩道に『工事中』と書かれた、黄色と黒に塗られたバリケード。
囲まれている中には、蓋の開いたマンホール。
「いったいどこなんだ!?」
「おかしいですよ。電力消費が大きいところなんてぜんぜん見つかりません」
地下の電気ケーブルを計測器で調べていたのは、キヌタ・カズキの部下たち。
「この出力で、方向がつかめないのだから、大きくて数が多いのになぜだ!? どうなってるんだ!?」
「あの~隊長」
「なんだ?」
若い隊員が隊長の前で小さく手をあげた。
「自家発電じゃないですか? 起電石なら出力大きいし音も出ませんよ」
「それだ!」
その場で聞いていた者達は、若い隊員を指差していた。
「偽装したトラックってのもありうる」
「移動してたら俺達だけじゃ探しきれないぞ」
「お前は戻って、応援を頼んでこい」
「了解」
全員がマンホールから抜け出て、それぞれの車に乗り込み動き出した。
◇
【軍の基地】
地下格納庫の指揮車内でモニターを見ていた女性。
そこには、管制塔の上にある望遠カメラの映像が映っていた。
「東の上空より猟機兵装多数接近!」
「また敵か!」
目の前のデスクに手をついて立ち上がる基地司令。
「ザンゲツ……大隊規模です。最大望遠で機体番号確認……この基地の機体です」
「GG社の演習場にあった本隊だ! すぐにカキノキ中佐を呼び出せ!」
唇の端を吊り上げほくそ笑む基地司令。
「電波妨害により、すぐには無理です」
「かまわん。呼び続けろ」
「了解」
西に傾き始めた太陽の光に照らされ、飛んでくる多数のザンゲツ。
その向かい、西からも太陽を背に、猟機兵装が接近していた。
本部ビル前での最終戦闘ってのに、どう繋ぐか悩んでました。




