11. 「ヤツらは俺が狩る!」
山頂に白い雪の残る標高の高い山岳地。
その上空に黒い菱形の翼を持つ輸送機が8機。
月の無い満天の星空を背にして、ゆっくりと飛んでいた。
◇
「降下開始!」
作戦管理士官の声が操縦席に響くと、いつもと同じように放りだされる。
最初の任務での失敗。
アレから何度も降下し同じミスはしていない。
俺達は獲物を狩る……それだけだ。
同盟国の国境紛争では敵部隊の後方に降下し挟撃。
新規加盟国内に潜んでいる過激な反対組織……テロリストの殲滅。
多くの小さな島々をもつ同盟国の無人島。
そこに造られたテロリストのアジトの破壊。
蜜入国支援、不法薬物製造などが行われている国で暴動やテロが多発。
それらの政府が急遽統一経済圏への加盟を申し出てくることが増えた。
俺達はそういった国の武装組織を次々と殲滅していった。
「ライタ、調子いいみたいね。でも無理しないで」
「ありがとう、作戦管理士官殿」
「名前で呼んだのに、イジワル!」
いつのまにか、俺は年上の彼女ができていた。
同じ基地に勤務し、同じ機に乗って出撃する作戦管理士官。
出撃先の危険度が増しても機を降りたりしない立派な軍人だ。
数日後、とうとうあの国……初任務で降下した国へ出撃。
「降下開始!」
いつもと同じように彼女の声が操縦席に響くと、放りだされるⅢ型。
すでにⅣ型が登場し訓練が始まっている。
短距離飛行能力を持っているため、撤退時の回収が楽になる。
ただ、背中についている推進システムが大きくて、この輸送機には積み込めない。
そのため新たなステルス輸送機も作られた。
俺と一緒に彼女も来月から乗り換え訓練が始まる。
機体の揺れが姿勢制御によって収まり、モニターを見つめていると上方に光が見えた。
同時に動体反応枠があらわれピピっと短い警告音が鳴った。
「えっ……」
一瞬の事だった。
小さな光は大きな光に変わった。
何も考えられずに、光を見つめていた。
光の中に幾つもの黒点があった。
俺は知っている。
それが、バラバラになった輸送機のカケラであることを……。
◇
森に覆われた川の岸。
「3機撃墜!」
「キヌタ! 喜んでる暇は無いぞ! とっとと、お前は下がれ!」
「了解!」
キヌタと呼ばれた男が乗る猟機兵装バイオレット11が手にしていたのは巨大な電磁投射砲。
電波照準器を使わずに光学照準による画像解析での射撃。
発射ボタンを押してから、予測弾道計算され僅かに砲身が動き撃ち出される砲弾。
1本の棒に見える弾は30発に分かれて散弾のように敵を襲う。
何の前触れも無く標的を襲える優秀な兵器だが、問題もある。
バレルの冷却に時間が掛かるため敵に補足され、反撃されやすい。
今回は、川の水を利用して冷却時間を短縮。
安全に後退することが出来る。
高価で巨大な電磁投射砲。
「絶対に……絶対に許さない!」
操縦席でうつむいていたライタは歯を剥き出し、まゆを寄せ怒りに満ちていた。
怒りに満ちた意識とは別な意識が、訓練で染み付いた行動を取らせていた。
「どこだ、ミサイルやレーザーを見逃すはずが無い。センサーで補足できない高速移動物質……電磁投射砲。見つけられる、見つけてやる」
ライタはモニターの地表画像を熱反応に切り替え、川をさかのぼるように画像を移動していた。
「ここか! 逃さないぞ!」
ライタは電磁投射砲の欠点を知っていた。
砲身の冷却に時間が掛かることを。
通常は地表に熱源があれば検知し、動体反応枠と同じようにモニターに枠が映し出されると同時に、警報がなる。
遮蔽シートで隠しても周囲の気温が上昇する。今回はそれが無かった。
検知できないほど短時間で冷却していると推測した結果、出た答えは大量の水。
バレルの冷却と、周囲への散水でセンサーで捕らえにくくしている。
しかし、ライタは見逃さなかった。
雪解け水を散水し、周囲よりも温度が低くなった場所を。
ライタはモニターに何度か触れ自動降下プログラムの目標座標を変更した。
肩のシールドが角度を変えて機体が前へと流れはじめた。
着地までは無線封鎖しているため僚機からの問いかけは無い。
無線を使えば探知され追尾しやすくなり標的にされるだけ。
減速が始まる。
本来の降下地点の周囲で煙が広がりはじめた。
先に投下してあったスモークグレネードが設定通り作動している。
地表に近くなると狙い撃ちされる可能性があり、それを避けるためだが、補足されていれば気休めにしかならない。
煙の中へと消える僚機を、後方用モニターに視線を送り確認するライタ。
「ヤツらは俺が狩る!」
死亡フラグってこんな感じですかね。
ちょっとルビ多くするとSFロボットって感じしますね。
入れ忘れとか統一するのが大変だろうな~って思いました。。




