リア充していますか?
『いい人ですね』
その言葉は僕にとっては特別な言葉。
もう半世紀以上も前の話だ。貴女はとっくに死んでしまった。
どうせ幸せな一生だったのだろう。
「幽霊が哀惜とは笑えちゃいますね。けど、貴女は僕の特別ですから」
別に貴女は僕と違って、いい人ではなかったけれども…
「今、目の前にいる私を好きになって下さい」
突然彼女はそう告げてきた。
「お願いです。私は貴方に運命を感じました。大事にします。ずっと、きっと、死ぬまで」
どっかの恋愛小説の相手役の様な言葉を紡がれていく。
「死ぬまでって結局の処、僕捨てられますよね」
だって僕死んでるから…
「まぁそれでもありがとうございます。死んでから久しく感じていなかった照れるという感情を感じることができましたよ」
「それはよかったです。ならさぁ早く私と二人でリア充しましょう」
聞きなれない言葉がある。
「リア充…?」
「今ではネットとかでよく使われるんですよ。現実の生活が充実しているということです」
「はぁ~えっとやっぱり時間の流れを感じますね。僕も生きていれば君のひいひいおじいさんくらいの年だったんですから、当然ですかね。けど、幽霊の僕と恋人同士になったところでリ、リア充とは言えないと思いますがね」
無論彼女はネコと戯れて僕の言葉を聞いてはいなかった。
それでも彼女はネコをプラ―ンと持ち上げてポツリと呟いた。
「それでも貴方は私の運命の相手なんです。それだけはわかっているんです」
それは少し途方に暮れているように感じられた。
そんな彼女を見て僕は抱きしめたいと強く思った。知らぬうちに僕は実体化してしまっていたのだ。
でもそれをぐっと抑える。実体化も解いてしまう。
抱きしめることはできないけれどその代わり言葉を紡ぐ。
「僕は貴方に逢えて幽霊ですけど、リア充していますよ」
その言葉にパッと振り返った。その顔はいつもの冷静な顔からかけ離れ真っ赤な顔をしていた。
「私も久々に照れました」
そう言って顔を赤らめたまま笑った彼女は僕には少し眩しく見えた。
そう、君は僕の運命の相手だろうね……
きっと生きていれば僕は君を──愛しただろう
僕が生きていたのならば……




