第70話:澱の夜と歪な絆
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前回までのあらすじ:朝の入念な乱交儀式を経てギルドでの巨利を確実にした佐藤が、咲希らに世界の二大国構造や狼の王「ウルスヴォルフ」の伝承を調べさせ、ギルド内部への潜入を果たした智哉らの報告で世界の輪郭を掴むなか、夜はアイナを四つん這いで激しく蹂躙・調教し、言葉の習得を進めて世界征服へのさらなる武器を手にした。
それでは、第70話をお楽しみください。
※本作は規約遵守のR15作品です。過激な描写にご注意ください。
エンデという名の街に足を踏み入れてから、朝露が石畳を濡らす光景を見るのも六度目を数えた。昨日の朝よりも太陽の昇る位置は僅かに高く、乾いた風が容赦なく肌を叩く。この異世界の過酷な気候は、慣れるどころか日に日に厳しさを増しているようだった。
ギルド併設の簡易宿泊施設の入り口付近には、朝の凛とした冷気を切り裂くような、粘りつく重苦しい沈黙が漂っていた。
その中心に立ち尽くしていたのは、神田英雄、田中健太、川瀬涼太の三人である。
事の始まりは昨日の夕刻に遡る。ギルド前で神田を待ち伏せていた健太と涼太は、この街に辿り着くまでの道中で負った傷の治療費を肩代わりしてくれと、なりふり構わず彼に縋り付いた。
かつての同級生である川瀬。そして、心のどこかで亡くなった小野香織との初体験の「きっかけ」を作ってくれたことに恩義を感じていた田中。彼らを見捨てきれなかった神田の甘さが仇となり、一人あたり銀貨8枚、計16枚という今の彼にはあまりにも重い治療費を背負う羽目になったのだ。
手持ちが乏しかった神田は、手付金として銀貨6枚を支払い、残りの10枚を二人の借金とする形でどうにか話をつけた。だが、その代償は大きかった。陽菜との新生活のために積み上げてきた資金計画は、根底から崩れ去ってしまったのである。
一夜明け、治療院の処置によって回復した健太と涼太が、神田の前で深々と頭を下げた。
「神田……マジで頼む。昨日、お前に助けてもらわなきゃ俺たち本当に死んでたんだ。お前がいないと、この街で生きていけねえ。一緒にパーティーを組んでくれ」
「頭を下げて頼む。治療費の借金も、お前と組んで稼いで必ず返すから。助けてくれよ」
必死な懇願を前に、神田の内心は複雑に揺れ動いていた。
彼はこの数日間、単独でも一日あたり銀貨5枚から8枚程度を安定して稼げる実力を身につけていた。前払いしてくれた宿泊施設の期限が切れる前に、できるだけ蓄えを増やし、陽菜を連れてより安全で衛生的な環境へ移る準備を整えていた矢先のことだったからだ。
何より、生理的なレベルでの拒絶感があった。
愛する陽菜を、素行が悪く、ましてやあの森で彼女を傷つけた加害者である二人と同じパーティーに入れたくはない。しかし、窮地を救ってしまった手前、今さら突き放すこともできず、その自分自身の「甘さ」が鎖のように自身を縛り付けていることを神田は痛感していた。
結局、神田は深く重い溜息をつき、その提案を呑むしかなかった。
「……分かった。ただし、勝手な行動はするな。俺の指示には絶対に従え。街では別行動だ。毎朝ギルドで待ち合わせる」
こうして、神田英雄をリーダーとする、危ういバランスの上に成り立つ歪な三人パーティーが結成された。
太陽の光が街を白く焼き、影が濃くなり始める午前中。三人は街の周辺に広がる中腹林帯へと足を踏み入れた。今回の獲物は、頭部に鋭い角を冠した中型獣「ドルンヒルシュ」だ。
巨大な鹿のような姿をしたその魔獣は非常に警戒心が強いが、戦闘となれば極めて高い攻撃力と強固な防御力を発揮する。一頭仕留めるだけで金貨8枚相当の価値があるが、俊敏さと攻撃性は並の冒険者を返り討ちにする。昨日の損失を一気に埋めるための、賭けに近い狩りだった。
森の奥深く、静寂を切り裂いて獲物を見つけるや否や、神田の「英雄」としての才覚が戦場を支配した。神田の剣筋は鋭く、無駄がない。しかし、共に戦う健太と涼太の動きは、神田の期待からは程遠いものだった。
二人は自らが持つスキル「浅掠」や「微速」を使いこなせず、焦りばかりが先行する。ドルンヒルシュの角による突進を幾度も許しそうになり、戦線はたびたび崩壊の危機に瀕した。
「おい、もっと右に追い込めって言っただろ! 足を止めるな!」
「うるせえ! 分かってんだよ、口うるさく指図すんな!」
神田の指示に対し、健太は剥き出しの苛立ちを返す。それは連携とは名ばかりの、泥臭く危険な激戦だった。だが、二人が囮に近い役割を果たしたことで、逃走を防げていたのも事実だった。非戦闘員の陽菜を伴っていては到底不可能な狩りだ。最後は神田がその喉元を深く切り裂き、どうにか一頭を仕留めることに成功した。
仕留めたドルンヒルシュを運ぶ道中、神田は獲物の前脚を担いで先頭を歩いていた。その後ろで後ろ脚を分け合う健太と涼太の間で、下卑た会話が始まった。
「ああ、クソ……。身体がなまってやがる。早く金稼いで、美味いもん食って女を抱きてえよ」
健太が吐き捨てるように言うと、涼太が薄笑いを浮かべて応じた。
「女、か。そういや俺たちが最後に思い切り楽しんだのって、あのアパートで陽菜をたっぷり可愛がってやった時だったよな」
「へへっ、そうだったな。あの時の陽菜、最高に震えてたぜ。神田が囲い込んでなきゃ、今頃また遊べたのによ……」
前を歩く神田の耳に、二人の粗暴な笑い声と、陽菜をモノのように扱う言葉が嫌でも飛び込んでくる。陽菜が受けた傷を、あたかも自分たちの「特権」であるかのように謳歌する会話。神田の背中に、拭い去れない嫌悪感と、刺さった棘のような激しい警戒心が植え付けられていった。
ギルドに戻り、解体所に回すと、受付のミナが感嘆の声を漏らした。
「流石、『英雄スキル』ね。いきなりこんな大物を……」
ミナが神田に向ける尊敬の眼差しは、後ろで卑屈な笑みを浮かべる二人に向けるものとは明らかに異なっていた。事務的な手つきで書類を整理しながら、ミナが告げる。
「そちらのお二人とパーティーを組んだんですね。パーティー登録とパーティー名をお願いします」
田中が「そうだ、俺たちは今日から……」と得意げに言い切る前に、神田が鋭く割って入った。
「臨時なのでっ!」
その拒絶に近い制止に、田中は言葉を詰まらせた。ミナは一瞬驚いた顔をしたが、「そうですか」と短く流して手続きを終えた。
手渡された革袋には、死闘に見合う対価が詰まっている。神田は受付の目の前で中身を厳密に確認し、その場ですぐに二人の取り分を切り出した。
健太と涼太に手渡されたのは、それぞれ金貨2枚と銀貨6枚という、彼らにとっては破格の金額だった。
「へへっ、金貨2枚かよ。昨日までの地獄が嘘みてえだ。やっぱり神田、お前と組めばボロいな」
掌に収まった金貨の鈍い輝きに、二人はだらしなく表情を緩ませた。
対照的に神田の表情が晴れることはなかった。道中の会話、そして宿に残してきた陽菜を値踏みするような下卑た視線。神田は二人を軽蔑しながらも、彼らに頼らざるを得ない現実に唇を噛んだ。
太陽が西に傾き、街がオレンジ色の黄昏に包まれる頃、神田は即座に行動を起こした。
ギルド併設の宿舎を離れることにしたのである。このままでは陽菜が不必要に周囲の目に触れ続ける。繁華街から離れた静かな場所にある、より質素だが人目に付きにくい安宿へと陽菜を連れて移る手続きを済ませた。
健太と涼太には計画性などあるはずもなく、手にした金も安酒や博打に消えていくのは明白だった。神田は、彼らが路地裏で夜を明かすことになるのを承知の上で、明日もギルド前で合流することだけを冷淡に告げ、早々にその場を後にした。
夜、神田は移動前の宿舎へと戻った。
扉を開けると、不安げに膝を抱えて座る陽菜の姿があった。神田の顔を見た瞬間、彼女は弾かれたように駆け寄り、彼の胸に強くしがみついてきた。
「神田くん……! おかえりなさい……遅かったから、すごく心配したよ……」
震える陽菜の肩を優しく抱き寄せ、神田は今日の戦果を穏やかな声で告げた。
「ただいま、陽菜。今日、ドルンヒルシュを仕留めたんだ。これで、もっと安全で静かな場所に引っ越せるよ」
陽菜は顔を上げ、潤んだ瞳を輝かせた。
「すごい……! 本当に? やっぱり神田くんは特別なんだね。私、神田くんがいてくれて本当によかった……ありがとう」
一点の曇りもない感謝の言葉。
だが、それが鼓膜を震わせるたびに、神田の胸には鋭い罪悪感が走った。
彼女が向けている信頼は、本当に自分自身に向けられたものなのか。自分もまた彼女を孤独の中に隔離し、自分だけに依存するように仕向けているのではないか。
溢れ出す自問自答を無理やり打ち消すように、神田は陽菜を強く抱き寄せた。
二人は見つめ合い、まずは軽い唇の接触を交わす。しかしすぐに神田が主導権を握り、互いの呼気を分け合うような、深く、逃げ場のない口付けへと変わっていった。
「ん……ふぅ……っ、はぁ……っ」
陽菜の吐息が熱を帯びる。神田は彼女の服を捲り上げ、露わになった柔らかな膨らみに指を沈め、その先端が熱を帯びるまで、丹念に愛撫を繰り返した。柔らかな肉を舌先で転がすように弄ぶと、陽菜は身体を震わせた。
「あ……っ、そこ……ひぅっ、神田くん……っ! あんっ、いいの……っ」
神田の指はさらに下へと伸び、陽菜の最も柔らかな場所を直接愛で始めた。丹念に解きほぐすように指を動かすと、そこはすぐに情愛の雫で濡れ、艶めかしい音を立て始める。
「ああ……っ、ん、んぅ……っ! すごい……熱いよぉ……っ! あぁっ、そこ、おかしくなっちゃうぅっ」
陽菜の喘ぎ声が響く中、神田は衣服を脱ぎ捨てた。
彼は陽菜の膝の上に頭を乗せ、まるで愛を乞う赤子のように、彼女の胸の先端を深く吸い上げた。陽菜は声を漏らしながらも、神田の頭を優しく抱え込む。神田の昂ぶった箇所には陽菜の手が伸び、慣れた手つきで熱を込めてしごき始めた。
「神田くん……甘えん坊だね……っ。ここ、好きだよね……っ、あんっ」
陽菜は自身の熱を高められる快感に表情を蕩けさせる。神田もまた、陽菜の手の動きと首筋を這う感触に、理性が塗りつぶされていく感覚に支配されていく。
神田は再び体を起こすと、自身の昂ぶりを晒し、彼女にそれを求める視線を向けた。陽菜は頬を赤らめながらも頷き、その先端に愛らしく口付けをした。そこから丹念に愛撫を施し、やがてその熱を口内へと含んだ。
「……っ、ふぅ……っ」
喉を鳴らして奉仕する陽菜だったが、何度か激しくせり上がったところで、神田が「待って、ストップ! 溢れちゃうから!」と焦った声を上げ、彼女の口から慌てて引き抜いた。
神田は陽菜を仰向けに寝かせ、熱く潤んだ彼女の深奥へと、自身の欲望を深く沈めた。
「あぁぁぁああああっ! きた……っ、神田くん、すごいの入ってる……っ!」
陽菜は声を張り上げ、彼を受け入れる。神田は獣のような衝動に任せ、彼女の深奥へと何度もその熱を叩きつけた。陽菜はその衝撃に翻弄され、しなやかに腰を跳ねさせながら、必死に神田にしがみつく。
「あんっ、あぁっ! すごい、すごいよぉっ! あぁぁっ、んあぁっ!」
何度も奥を突かれる衝撃に、陽菜の喘ぎは止まらない。神田もまた、彼女の熱烈な締め付けに自我を見失いかけていた。
「っ、陽菜……気持ちいい……っ。すぐ果てそうだ。いい? 全部預けていい?」
「……っ、いいよ。神田くんの、全部ちょうだい……っ! 私の中で……っ!」
「神田くん……もっと、強くして……。私、どこにも行かないから……」
陽菜の瞳には涙が浮かび、神田を射抜くように見つめている。
狭い部屋には重なり合う肉の音が絶え間なく響き、二人の昂ぶりが夜の闇に溶けていった。
やがて、神田は激しい唸り声を上げながら、彼女の中で一気に解放された。
事後、満足げな息を吐く神田の傍らで、陽菜は充足に至りきらぬまま、余韻に身を任せていた。それでも、彼女は汗ばんだ顔で微笑みかけた。
「……神田くん、すごかった……。すごく、熱かったよ……」
神田は天井を見つめたまま、彼女の手を強く握りしめることしかできなかった。
同じ時刻、街の灯りが届かないうらぶれた酒場に田中健太と川瀬涼太の姿があった。
「ったく……金貨2枚かよ。神田の野郎、いつからあんなに偉そうに指図するようになりやがった」
健太が酒臭い息と共に、どろりとした苛立ちを吐き捨てる。
川瀬もまた、喉を焼くような安酒を飲み込みながら、深く溜息をついた。
「なあ、いいじゃねえか。今は神田に乗っかるのが一番だ。……それにしても、陽菜の奴。森であんなに徹底的に分からせてやったのによ、今は神田の後ろに隠れてやがる。俺も田中さんも、存分に味見した後だってのによ」
川瀬の瞳には、かつての恋人に対する愛情など微塵もなかった。あるのは、蹂轙し、弄んだという歪んだ優越感だけだ。
「ああ、全くだ。神田の野郎、自分が陽菜を守ってるつもりか知らねえが、ヘドが出る。あいつのいない隙に、またあの森の時みたいに分からせてやればいいんだ。元々はお前の女なんだ、俺たちがどう転がそうが勝手だろ」
川瀬は卑俗な笑みを深めた。
「ええ……。田中さん、あいつのいない隙に、また陽菜を徹底的に泣かせてやりましょうよ。明日、どっちかが神田と外に出た時にでも、腹痛かなんか理由をつけて街に戻って、宿舎に戻りません? 陽菜を抱く時間を作りましょう」
その提案に、田中は一瞬考え込むような仕草を見せた後、かぶりを振った。
「……いや、俺はダメだ。アイツに勘ぐられている。お前、行っていいぞ」
安酒の酔いと共に、二人の心には暗い欲望が澱のように溜まっていく。
明日もまた、不協和音は続く。二人は現実を呪うように、さらに杯を重ねた。
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