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ヒトとキツネの異世界黙示録Ⅱ  作者: 遊戯九尾
第四章 大妖怪たちの宴
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再びの進撃

「そんな過去が……」

「……あやつ、妾らと同じ道を選んでその道に殉じたのか……馬鹿者が」


 神癒奈は酒呑童子と南雲の顛末を聞いて驚き、玉藻前は嘆いた。酒呑童子は焔月の呪いにかかった玉藻前と違う、元から人を食わねば死んでしまう鬼の存在だった。それなのに酒呑童子は神癒奈と同じ人との調和の道を選ぼうとしたのだ。そして、その結果が南雲だと知ると、神癒奈はなんともいえない気持ちになる。


「……同情してくれるの?」

「せんわけがなかろう…あやつとは、昔からの縁じゃったからな」

「ええ…最後まで、素晴らしい鬼だったと思います」


 横たわる南雲に、神癒奈は優しく頭を撫でる。その手は温かく、かつての酒呑童子と同じように南雲は感じられた。


「……そう、酒呑童子様がもし生きてたら…貴方達にどう言ってただろうな」

「…きっと笑ってたろうさ、人と妖が繋がった世界を実現して見せた我が孫を見て、きっと、希望を抱いたであろう」

「そうかもね…」


 南雲は目を閉じて酒呑童子の姿を思い出す。あの快活な笑顔が、南雲にとって大切なものに感じた。

 その時だった。


「っ! マスター! 敵が再進撃してきました!」


 フィアネリスが敵を察知し、いる方へ向く。永戸は即座に立ち上がると言った。


「数は⁉︎」

「前回の戦いの際に逃げた敵の数と同じです! ですが…何故⁉︎ もう戦う力は残っていないはず!」


 フィアネリスは敵の数や損耗度を見て驚く、増援を連れてきたわけでもなく、ただ同じ数で、前回からまだ時間も何も経ってないのにやってきた。だが変化はあった、妖達の体からただならぬ妖気が溢れ出ていたのだ。


「まさか…」


 フィアネリスは先頭に立つリーダーらしき妖の手に持つ物を視る。彼女が視たのは以前も目撃したあの物質だった。


「魔想体! マスター! 神癒奈さん! 敵は魔想体を手に進軍してきています!」

「なんだって⁉︎」


 この話を聞いて、四課のメンバーの心がざわつく。神癒奈は即座にEフォンで電話した。


「こちら第二支部四課の神癒奈です! 活動中の異世界にて魔想体を持った敵の軍団を観測! 現在月の国の都へと進軍中! 応援を要請します!」

 《なんだと⁉︎ 魔想体を持った敵の軍団⁉︎ そんなのを相手にせにゃならんのか!》

「はい! クレスさんやメルトさん! できれば他に頼れそうな方を!」

 《えーゆー様は人使いが荒いな! 分かった! 二人を呼び出す! ただし他のメンバーの補充は頼るなよ!》


 課長のランジーとの通信を終え、神癒奈は飛び出すように街の外の方へ行こうとする。


「待ってください! 相手は魔想体持ちです。いくら私たちでもクレスさんやメルトさんが来てもこの国を保てるかわかりませんよ!」

「フィアネリスさんはこの国がなくなってもいいって言うんですか! 私は行きますよ!」


 神癒奈を止めるフィアネリスだが、ここで永戸にフィアネリスは手を掴まれる。


「理屈では分かってても、お前だって国を守りたいだろ?」

「それは…!」

「なら、やれる限りのことをしよう、俺もやれる限りの手は尽くす」


 そう言う永戸の目は覚悟が決まっており、フィアネリスはそれを視ると何も言えなくなった。


「仕方ないのう、孫の国の為じゃ、妾も手を貸そうではないか」


 すると玉藻前もEフォンを取り出し、電話をした。


「もしもし妾じゃ、あー今我が孫娘の国の一大事でな、応援が必要なんじゃ、そっちから何人か送れるかの? なんじゃったか、魔想体とか言っておったな」


 玉藻前が電話をしている間、フローレアは背伸びをし、南雲も体の調子を整えた。


「私の準備はよろしいでありますぞ! かの悪鬼どもを蹴散らす準備はできておりまする!」

「…国の主人の為だもの、この国を失うわけにはいかない、私も戦う」

「フローレアさん! それに、南雲さんまで!」


 全員戦いの準備はできてるのか、目つきはギラリとしていた。それを見たフィアネリスは仕方なさそうにほうっと息を吐くと言った。


「どうなっても知りませんよ?」

「もとより覚悟の上です!」


 そうして月の都第二次防衛戦が行われることとなった。


 ーーー


 月の都の防衛ラインに、再び永戸と神癒奈達は立つ。しかし今度は都の防衛の兵はなく、されたとしても都そのものに魔法防護壁が張られた程度だ。


「分かってますね、相手は魔想体を所持してる危険な敵です。目標は、魔想体の迅速な確保を、味方の増援はきますが少数での戦いになります。ここが四課の正念場ですよ!」


 遠くから火がゆらめくのを見て、神癒奈はそう言う。すると補充要員できたクレスは双眼鏡を覗きながら言った。


「あんなバカみたいな数を相手にするのか。固定式機関砲を持ち込んで正解だったな、でもこの人数でやれるのか?」

「やるしかありません、私の国を守る為に」


 そう言ってるとメルトも一言言う。


「私は防壁の強化に努めます。都全体は覆えませんが、正面からだけならば、防壁をもう一枚張れます」

「助かる、ところで玉藻、そっちも何か増援を要請してたよな? 誰か来るのか?」

「わからぬ、動ける奴があるのかどうかすら」


 そう言ってると、転移ゲートが開き、永戸達にとって懐かしい顔ぶれがやってきた。


「きりちゃん参上っす!」

「ただいま現着しました…大隊長、指示を」

「ふんっ、数が多くて魔想体まであると聞いて来てみれば、雑魚どもの集まりじゃない、こんなのに第二支部は本部まで要請したわけ?」

「桐枝! エイル! リオーネ!」


 頼れるメンバーが来てくれて、永戸は喜ぶ。


「ひさしぶりね、永戸、アンタも相変わらず苦労してるわね」


 リオーネ、正確な名前はリオーネ・グランディス・アンヴァーシュ・ハルト・ナーシサス。月の国と関係のある龍の国の王女で、本部の四課の隊員にして資金源となっている。尊大な正確だが、巨大な竜の姿をとって戦うことの出来る今回にうってつけのメンバーだ。


「永戸先輩と神癒奈先輩が困ってると聞いて、飛んできちゃいました! 光の力、今こそ見せる時っす!」


 門崎かんざき 桐枝きりえ、日本から来た異世界転生者で、光の力を操る能力者だ、本部での四課での立ち位置は若い方だが、部隊の清涼剤として皆を和ませたりしている。だが剣の実力者で、これまで数々の敵を葬って来た。


「相手が魔想体を持ってると聞いて、先輩達の助けにならないかと思って来ました…少し怖いですが」


 エイル・ネルティーア、本部四課のアラクネの隊員で、鋼鉄をも溶かす猛毒使いだ。彼女には専用の装備が与えられており、彼女が着るスーツは、大火力を詰め込んだパワードスーツとなっている。

 この三名が来てくれた。彼女達は永戸が本部に存在していた頃に仲間だった者たちで、今も時々連絡を取り合っては仲良くしている。戦力としては申し分ない、すると、フローレアがテンション爆上げで三人に詰め寄った。


「うおおおお! 本部の四課メンバー!? 本物の英雄達が揃い踏みでありますなぁ! あとでサインをもらってもよろしいでありますか⁉︎」

「あっははは、サインだなんてきりちゃん求められるの初めてっすね、まぁいいっすよ」

「いいわよ、ついでに、イベント用子供向けパッチもあげるわ」

「サインですか、いいですよ、なんだか少し照れますが」


 なごやかーにしてる四人だが、グオオオオ! と高らかに叫ぶ声が聞こえると、全員戦闘態勢に入った。


「分かってると思うが、今回の目的は魔想体の回収も兼ねてここを守り抜くことだ、全員、死ぬ気で戦えよ」

『応っ!』


 永戸の言葉で第二支部と本部の四課が構える。それを見た南雲は少し驚くが、遅れて構えた。


「皆さん、この国を守りますよ!」


 そうして、月の都第二次防衛戦は幕を開けた。

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