第二十二話 心象
「さあ、もう一度かかって来い!」
俺は変わらず『重力』を喰らいながらアモンと戦いを繰り返していた。組み手が始まってから変わったことが二つある。一つは『重力』の出力が下がっていること。間近で乃亜特製の閃光弾を見たんだ。しばらくの間の視力を奪えたんだろう。アスタロトは能力自体は維持しているものの、明らかに出力は弱体化している。
もう一つは、アモンについてだ。アスタロトを狙った時と今の強さが全然違う。こいつの強さ……一体何がストッパーになってるんだ?気になるな。ここでストッパーを破壊してみせる。
「気に入らないな」
「ん、何が?」
「お前は別に良い。自分に出来ることを考えてやる。それは強き能力者だ。サポート役も大事だからな」
「俺が気に入らないのはお前の方だ。アモン」
「何か私が気に触ることでも?」
「先ほどの火球。あれは一体なんだ?あれが全力じゃないのか?何故手を抜く」
「いや、今だって手なんか抜いてないですよ」
「馬鹿にするな。俺はそこらの奴よりは能力に詳しいんだ。お前の様子を見るに能力の副作用が強いようにも見えない。全力でやれ」
すると、アモンはイライラしながら、
「あなたに何が分かる!これは私の問題だ。下手に口を出さないでください!」
「分かるさ。人間の身体では能力を最大限に引き出せないんだろ?」
「な、何でそのことを……」
アモンとの戦いには違和感があった。攻撃の度に鋭い獣のような視線を感じたことだ。これは、動物などに変化するタイプの能力者によく見られる特徴であり、アモンからもそれを感じることができた。
「全て受け止めてやる。全力を出してみろ」
「アモン、私も、見てみたい。あなたの、全力」
「お、回復したか?」
「ん、眩しかった」
「ああ、悪かったな」
「どんな見た目でもそれはお前自身の能力だ。お前自身の力だ。それを否定したりはしない…だから全力でやろうぜ」
「……アスタロトちゃん、今から見せるのは私の本当の姿。誰よりも醜い姿。しっかり見届けて」
そう言った直後、アモンの身体中が膨張していった。そして、三メートル程になり膨張が止まった。色々な動物が融合したような見た目で猿のように毛が生えている。何よりの特徴は、全身に炎を纏っていることだろう。炎が翼の形になり、安定し始めた頃にアモンの目が開いた。
「これが私。軽蔑するならしてください。あなたのような男に何を言われようが今更…」
「ようやく強そうになったじゃんか。今の方がかっこいいぞ」
「ん、私は、可愛いと思う。もふもふしてる、から」
俺とアスタロトがそう言うとアモンは突然泣き始めた。
アモンが泣き止んだ頃、俺は戦闘の構えをした。
「落ち着いたか?やろうぜ!最後までな」
「私はあなたと言う人間を見誤っていた。あなたは美しい人だった。それに倣い、私も全力で行かせてもらいます」
俺は光の槍を作り出してアモンの前に突き立てる。さあ、どう来る?
「はぁぁぁ!」
「チッ」
突撃かよ!しかもこの俊敏さは、アスタロトだな!
「面白い、一撃で終わらせる!」
「こちらこそ!」
俺は真正面から来るアモンに槍を貫通させた。だが、アモンの動きで槍は途中で折れ、逆にアモンから来た拳を防げなかった。
「「ぐはっ」」
両者共に倒れ込み能力は解除される。
「ん、これは、引き分け」
アスタロトによる遊びは、両者戦闘不能により、引き分けとして幕を下ろした。




