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大英雄の大罪人  作者: 親の顔よりみた小指
第三幕 悪魔との接触
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第二十話 開花

「はぁはぁはぁっ、フー、な、何あの人、本当に人なの?こ、これのどこが鬼ごっこなの」

 はぁ、能力の使いすぎで頭がクラクラする。今でも遠くから師匠の声が聞こえる。『滑走』の全力使用で何とか一度は振り切れたけど、こんなのを毎回なんかしたら多分私が先に死ぬ。これが死地ですか?強引すぎます、師匠。


 時は三十分前まで遡る。


「お、鬼ごっこ、ですか?」

「そうだ、それが俺の考えた中で今のお前に最適な鍛錬だと思う」

「そ、それで本当に能力の知覚なんて出来るんでしょうか?」

「人間は追い詰められた時の方がイメージ力が大きくなる。危機をどう避け、どう生き延びるかを瞬時に考えなければいけないからだ。」

「そ、それと鬼ごっこにどう繋がりが?」

 ルシファーはニヤリと笑い、

「俺は能力をフル稼働、つまり全力でお前のことを追いかける。お前は何としてでも逃げろ。これで言いたいことは伝わったか?」


「俺が手を叩いたら開始だ!十数えたら俺も追いかけるからな!早く逃げろよ!」


 バンッ!

 始まった。……師匠の能力が何も分からない以上下手な行動には出れない。ここは素直に全力で逃げる!

「八、九、十……いくぞ」


「なっ!」

「どうした?思ったより早かったか?」

 嘘でしょ……これでも全力で逃げたのに。いや、まだ!

「発動…『滑走』!」

「は?お前、天使じゃなかったのか?」

 驚いてる間に私は『滑走』で全力で逃げた。とにかく隠れる場所!


 そうして今に至る


「はぁはぁ、あ、あれ?師匠は?」

 まさか、見失った?今の一瞬で?

「よう」

「なっ、はやっ!」

 師匠はいつの間にか私の後ろにいた。師匠から出される圧倒的な殺意に私は全く動けずにいた。


「そこで気持ちが一歩引いている。それがお前の弱さだ」

「で、でも、私はここまで逃げてこれましたよ?」

「お前がここまで来るのに何を使った?それは本当に『天使』覚醒の手助けになる行為か?」

「で、でも、いつかは」

「天華、努力が報われると思うなよ?能力ってのはな、どれだけ努力を重ねようが最終的に一番強いのは上に行きたい熱を持ってる奴だ。いつかは報われる?違う。それじゃ能力者は強くなれない」


「ね、熱……ですか」

「ああ、お前にとっての熱は何だ?強くなりたい理由は何だ?それを常に心の中に留めおけ」

 私にとっての熱……研究所からここまで出会った方々、美蘭先生、乃亜さん達、それに明さん。

「師匠、もう一度やりましょう」

「もう信念は掴めたか?」

「はい!」


「能力の開花への第一歩を掴んだところで悪いが……身体が気持ちに追いついてないんでな。今すぐにはやらん」

「そ、そんな!まだ行けます!」

「じゃあ少しその辺を走ってみろ、それで分かるだろ」


「はぁはぁ、あぐっ、足がっ」

「能力の使いすぎだ。一旦休め」

「そんなっ、ここで終わりだなんて……」

 師匠は一度後ろを向いて私をおぶりながら、

「その目さえあればお前は強くなれる。今は焦りすぎるな」

 と言って拠点の方までゆっくりと飛び始めたのだった。

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