神田渚沙
和彦教授がいない今、彼の使っていた研究書斎を和彦教授の代わりである私は私物化とし、使っていた神田渚沙は悩まされていた。それも全部あの八ノ瀬和彦と言う男のせいだ。あの男は何をやらかしたのかこのK大学付属病院でリスクグループ4のバイオハザードを起こした。起こしたと言っても研究室内での話だったためそこまで表ざたにならずには済んだ。しかしだ、彼はリスクグループ4の細菌をバイオセーフティーレベル4の実験室で実験をしなかったのだ。更にその細菌はどうやら彼自身が何の報告も無しに持ち込んだ物らしい。
和彦教授がいない今、代わりとなる私がこの問題の報告書を作らなければならなくなった。その点で言えば私は貧乏くじを引かされたわけだ。同じ教授である彼を非難するわけではないが自分が起こした問題を他人にやらせるのはどうも褒められるものではないだろう。それにしてもだ、和彦教授はなんの前触れもなく姿を消した、一般的には行方不明になっているが彼は確かに姿を消した。そうでなければ説明がつかないのだ。
「さて、鳥籠から出た鳥はどこまで飛べるのかな。しかし、鳥籠には必ず羽が見つかるはずだが」
そう独り言を呟く癖を気にせず机に並べられた状態であった本のページを捲りながら見ていた。机に並べてあるままの本は全て和彦教授が消えてからそのままの状態のため彼が消えたなんらかのヒントがあるかと思い見てみるがどれも不思議な本であった。何故なら、細菌学を専攻としている教授が太陽系やら惑星やらはたまた銀河について載ってある本であった。これらの本は全てこのK大学付属病院の本ではないということは確かだ。だとすれば個人の本を持ち込んだのだろうか。
すると机の上にと置いてあった携帯が音を鳴らした。私は掛けていた眼鏡を外し、携帯を手に取り耳にと当てた。
「はい、神田渚沙です。誰でしょうか?」
『僕だ、ランベルだ。例の別荘区跡についてなんだがやはり隕石が落下していたらしい』
どうやら相手はランベルであった。そうとなれば他人行事な喋り方は意味もないと思いいつも通りの口調で、いつも通りの声で答えた。
「そうか、どのくらい前の事だ。隕石が落下したのは」
そう私は聞くと携帯の奥でページをめくるような紙の音が聞こえてきた。そして暫くするとランベルの声が再び聞こえてきた。
『だいたい六年前だね。今から六年前に新聞で隕石が落下したことについて記載されていたから六年前で当たってる筈だ』
「流石はミスカトニック大学だ。まさかそんな情報まであるとは」
ミスカトニック大学、アメリカのマサチューセッツ州にあるアメリカが誇る大学だ。私も大学時代の時はそこに入学していたからこそ分かるが、ミスカトニック大学の蔵書の数はそこらの大学どころかどの大学を比べても比べ物にならない程に多い。中には何百年は勿論、何千年前もの本がある。当然ながらそこら辺になってくると閲覧許可が必要となってくる。私も何度か閲覧許可を貰い重要な書類や蔵書を見て見はしたものの最後まで読破することは叶わなかった。
『ただ単に本が集まりやすいだけですよ。それではまた何かあれば言ってください』
そうランベルは言うと私の返事を聞かずに電話を切ってしまった。切れてしまったのは仕方ない、それにこれ以上はミスカトニック大学の者たちには邪魔はされたくない。




