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Re:ガンマン  作者: アダス
「黒い悪魔」
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黒い悪魔Ⅲ

(……俺の勘がヤバいって言ってやがる。)


その直感は、まるで胸の奥で冷たい針が突き刺さるような感覚として襲ってきた。空気のわずかな振動、遠くで崩れる観覧車の金属音、人々の悲鳴や足音。すべてが俺の中でひとつのパズルとして組み上がり、「今すぐ動け」という信号を送っている。俺の目は、少女を抱えながらも周囲をくまなく確認し、異常の兆候を瞬時に読み取る。


俺は少女を抱きしめたまま、全身の筋肉を解き放つように全力で走り出した。足音は地面に打ち付けるたびに、遊園地の空気を震わせる。後ろを振り返ると、白髪の男も同じスピードで追ってきた。彼の目は常に冷静で、しかしその奥には緊張の糸がピンと張っているのが見て取れる。周囲の危険を察知し、少女から目を離さない彼の姿勢には、ただの人間の反応を超えたプロフェッショナルな本能が宿っていた。SPとしての経験と訓練が、彼の体と神経の隅々まで張り巡らされているようだった。


観覧車の惨状を背に、俺たちは人混みをかき分けながらお化け屋敷の建物の角を曲がった。その瞬間、視界の端で黒い卵形の物体が崩れ落ちるのが見えた。その中から、まるで生き物のように蠢く人影が姿を現す。まるで影が生き物になった瞬間のような、不気味な存在感だ。血の匂い、焼けた鉄の匂い、埃と瓦礫の匂いが混ざり合い、呼吸の一つ一つを重くする。


「射てぇぇっ!!」


その声と同時に、白髪の男以外の八人のSPが、無慈悲にマシンガンを構え、遊園地に連射の轟音を響かせる。弾丸が空気を裂き、鉄やコンクリートに当たる衝撃で埃や破片が舞い上がる。俺は少女を抱きしめたまま、後ろを確認しつつ出口ゲートを目指して突き進む。瓦礫や破片を踏まないように神経を研ぎ澄まし、左右に揺れる建物やアトラクションの隙間を縫うように走った。叫び声や悲鳴が耳を刺すが、俺はそれを無視し、ただ前へと進むことだけを考えていた。


ピピピピッ!


その瞬間、スマホが鳴った。俺はすぐにポケットから取り出し、通話ボタンを押す。


『~っ!……やっと繋がった ! 』


世里奈だ。声はかすかに震えていたが、それでもこちらに呼びかける意志が伝わってくる。


『進くん、今どこにいる?』


「ただいま遊園地で爆走中っす。」


『そう……』


しかし、世里奈に最後まで言わせることなく、握っていたスマホが突如、俺の手元から弾き飛ばされた。右手に伝わる衝撃がそのまま右腕に走り、少女を抱えた俺の体は一瞬バランスを崩す。重心を支えようと踏ん張るも、地面に落ちたスマホの音が耳に刺さり、血のように心臓の鼓動が高鳴る。


「ちっ……!」


舌打ちと同時に、俺は迷わずその場からわずかに距離を取り、左腕に抱えた少女をより強く抱きしめ直す。そして腰に差していたコルト・ガバメント.45を引き抜いた。白髪の男も自然にマシンガンを構え、背後から迫る黒い影に備える。俺の視線は、弾き飛ばされたスマホが落ちた空間に集中した。すると、左から右へと蠢く黒い腕が目に入った。その先端には、俺のスマホを容易く貫通させた鋭い指先があり、鈍い金属音とともに画面の破片が飛び散る。


「うへぇ……なんだよ。」


思わず漏れた声に、冷たい恐怖と戦慄が混ざる。左に視線を移すと、路上には先ほどの黒い人影が立っていた。丸くツルツルとした顔面、鮮烈な赤い目。まるで卵頭の悪魔が人間をじっと観察しているかのようだ。悪魔の左手には、何かの肉片が握られ、血が滴っている。その光景を目の当たりにして、先ほどの八人のSPがもうこの世にいないのだと冷静に理解できた。


「……いやいや、何だよお前?」


呟きながらも、俺の視線は黒い腕に戻る。触手のように蠢くそれは、まるで意思を持ったかのように俺をじっと見据えている。戦うしかない。少女を抱えたままでは到底戦えない。瞬間、判断は即座に下された。


左腕に抱えた少女を素早く白髪の男に渡す。彼は一瞬戸惑ったように目を見開いたが、すぐに状況を理解し、少女をしっかりと抱き上げた。


「っ、お嬢様!……お前」


白髪の男は俺を見つめ、問いかけるような目を向ける。俺はわずかに肩をすくめて言う。


「先に出口まで行っといてくれよ。俺は……コイツと遊んでくる。」

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