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男女比が狂った世界に転移したレズはどうしたらいいですか?  作者: シキ


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20/28

18話 なんでもするって言ったよね_1


 体育祭が終わって次の月曜日は、一日振替休日がある。

 今週末は文化祭が迫っているから、振替休日は体育祭の疲れを取るための貴重な一日。

 とはいっても世間は月曜日。お母さんも普通に仕事に行ってしまい、特に予定もない私は家で怠惰に過ごしていた。

 テレビを見たり、本を読んだり、ちょっとだけ勉強してみたりと時間を潰しているうちに、お昼が近くなる。


「たまにはコンビニでお昼買おうかな……」


 いつもは冷蔵庫にあるもので適当に作るところだけど、簡単な服に着替えて私は家を出た。

 この世界にもコンビニは普通にある。しかしこの女性過多の世界、その中身は結構変わっていたりする。

特徴的なのは、スペースの一部分がプチプラコスメコーナーになっていたり、女性がよく使うものが広く展開されていること。

 その代わり、カップ麺とかスナック菓子とか、ちょっと不健康そうなイメージのもののスペースが削られている。ないことはないけれど、カップ麺も低カロリー! とかコラーゲン入り! みたいな女性目線の商品が多くて、メガ盛り! とかにんにく! とか男性っぽいものは数点しかない。

 そんな新商品が頻繁に入れ替わるものだから、たまに行ってみるとけっこうおもしろい商品があったりする。この世界にきてすでに半年経っている私は、前の世界との差を素直に楽しめるようになっていた。

 一番近いのは、前の世界にもあった7と書かれたコンビニ。その店先に、知った顔が一人立っていた。


「詩帆ちゃん? なにしてるの?」


 話しかけるとビクリと身体を跳ねさせる。


「あ、奏さん……えっと、あっと!」


 なぜだかあたふたしている詩帆ちゃん。その様子は私から見るといつものことで、詩帆ちゃんの頭が整理されるまで待つことにする。けれどその合間にコンビニの扉が開いて、もう一人知った人が出てきた。


「あ、莉々ちゃん」

「あれ? 琴宮さん? なんで?」


 それはついこの間私とリレーのアンカーを変わった斗真莉々(とうまりり)ちゃんだった。


「っていうか詩帆、今琴宮さんのこと名前で呼んでなかった?」

「…………あっ!!!」


 さっ、と青ざめる詩帆ちゃん。まぁ私も普通に話しかけちゃったのが悪かったけど、それにしても正直すぎる反応だった。




「ふーん、じゃあ琴宮さんはもともと詩帆とは知り合いだったんだ……あ、私も奏ちゃんって呼んでいーい?」

「うん、いいよ。私も莉々って呼ぼうかな?」

「オッケー!」


 詩帆ちゃんとは家が近いのもあって、時々話すようになった。そんな適当な言い訳を、斗真さん……いや、莉々は普通に信じた。


「『奏ちゃん』?私もまだ呼んだことないのに……?」


 私と莉々が話す横で詩帆ちゃんはそんなことを言っている。別に詩帆ちゃんも好きに呼んでくれていいんだけど。

 莉々は外見だけ見るとカースト上位の雰囲気を漂わせている。それなのにカースト下位にいるのは、本人がカーストとかを気にするタイプじゃないから。

 莉々を一言で表すと『天然』だ。クラスではよく些細な失敗をしてるし、勉強もあまり得意じゃないみたいで、授業中先生に当てられても答えられないことが多い。それどころか堂々と寝ている時もあって、かなり大物感がある。どうやって進学校の百合が原に入ったのかがとても不思議。

 少し明るめのふんわりした髪色に、長めのポニーテール。表情がコロコロと変わるところはなんだか大型犬を連想させる。八重歯が特徴的な元気ドジっ子高校生って感じ。


「ほ、ほら、莉々。口元ついてるよ」

「あれ、詩帆ありがと」


 ホットスナックをパクついていた莉々の口元を、詩帆ちゃんがウェットティッシュで拭いている。

 話を聞くに二人は幼馴染で、今日も二人で遊んでいたらしい。二人の様子を見ていると幼馴染というか世話役って感じもするけど。

 莉々の隣にいる詩帆ちゃんは、なんだかいつもよりしっかりものに見える。私と二人でいる時は大抵おどおどしているのに、なんだかそのギャップが面白い。


「そういえば、奏ちゃんはなにか買うんだったの?」

「あ、そうだった。お昼買おうと思ってたんだった」


 ついコンビニの前で立ち話をしてしまって忘れていた。気づくとお腹もかなり減っている。


「そっかー。ねぇ詩帆、今日この後特に予定なかったよね? 奏ちゃんと遊ぶのはどう?」

「それ、奏さんに聞くことでしょ……奏さんはきっと忙しいから」

「いや、別にいいよ。近いしうち来る?」

「いっいいの⁉」


 提案したのは莉々のはずなのに、私の返事には詩帆ちゃんが喰いついてきた。


「別にいいよ、今日お母さんもいないし」

「じゃあパーティしよ! パーティ! ホットスナックだけじゃ足りないと思ってたんだ!」


 と莉々は嬉しそうにコンビニへ戻っていく。パーティね、楽しそう。


「あの、奏さん。本当に迷惑じゃない?」

「大丈夫、私も今日は予定なかったから。それに」


 詩帆ちゃんの耳元に口を寄せる。


「ちょっといいこと思いついたから、詩帆ちゃんは楽しみにしてて」


 それは私と詩帆ちゃんだけに伝わる会話。案の定すぐに詩帆ちゃんの耳は赤くなっていた。


「で、でも、莉々がいるし……」

「うん、だからこそ楽しいことだよ。とりあえずお腹も空いたしまずはお昼にしよっか」


 ぐるぐると考えている詩帆ちゃんを連れて、私も莉々の後にコンビニへと入っていった。




 冷凍のピザ、何種類かのサラダ、お菓子の盛り合わせ、ジュースのペットボトル。

 私の家、ダイニングテーブルの上はまさしくパーティ! という感じになっていた。

 全部コンビニだからカロリー的には良くはないけれど、たまにはいっかと思いながらピザを手に取る。正面にはぱくぱく食べる莉々と少し緊張しながら手を進める詩帆ちゃんを見ていた。


「二人は小さいころから友達なの?」

「そーだよ! 幼稚園が一緒だったんだ!」

「昔から莉々は見てて危なっかしくて……つい心配になって」

「なんとなく分かる」

「そーかなー? そんなことないと思うけど」


 といいながらも、莉々はぽろぽろとピザの破片をお皿の外に零して、詩帆ちゃんがそれを慌てて拭いている。昔からそうしていたんだろうなって感じが丸わかりだった。


「……莉々は運がいいのか悪いのか分からないところがあるの。よく遅刻しそうになってるけど実際に遅刻したことはないし。限定のケーキを食べに行ったときも、電車が事故で遅れたけど、最後の一つが残っていたり。車のブレーキが故障して轢かれそうになった時も、ぎりぎり莉々の手前でスリップして怪我はしなかったり……そんなことばっかり」

「さすがに最後のは危ないと思うけど……莉々はなにかに守られてたりするのかな」

「びっくりした!」


 当の本人はなんにも気にしていない風にそう言うものだから、そのびっくり加減はあんまり伝わってこない。


「あの時は死んじゃうかと思った……」

「詩帆漏らしてたしねぇ」

「りっ莉々! 奏さんの前で言わないでよぉ! 幼稚園の時だから仕方ないでしょ!」

「へー……そうなんだ。ねぇ、詩帆ちゃんの面白い話まだあるの? 聞きたいな」

「あるよー! えっとね、小学6年の時だったかな……?」

「え、待って待って! 奏さんも聞かないで!」


 詩帆ちゃんは莉々といるとよく話す。それは私が菜月とエマと話している時の空気感となんとなく似ていて、見ているだけでつい楽しくなってしまう。

 慌てる詩帆ちゃんが面白くて、どうにかして莉々から話を聞き出そうとした。




 テーブルの上が大方片付いた頃、残ったお菓子をつまみながらなんとなく気になったことを莉々に聞いてみる。


「そういえば幸太郎君のことはどう思ってる?」


 と、莉々は持っていたお菓子をポリポリと口に収めてから、眉をひそめて考え出した。


「ムムム……」

「たぶん莉々は好きとか、恋とか、分かってないと思う」


 あぁ、そういう感じ……。


「幸太郎君とはあんまりお話してないからよくわかんないけど、いい匂いするよねっ!」

 莉々が悩んでだしたのはそんな答えだった。隣にいる詩帆ちゃんがため息をつく。

「莉々、犬じゃないんだから」

「なにをー、私はちゃんと人だよ!」

「普通は男の子にいい匂いするとか言わないよ……それ絶対本人の前で言わないでね、男の子によってはセクハラで捕まっちゃうから」


 詩帆ちゃんの言う通り、悪い男の子に当たれば本当に逮捕される危険性がある。幸太郎君は大丈夫そうな気もするけど。


「そういえば思ったけど、奏ちゃんもいい匂いするよねっ」

「私?」

「うん、なんか花みたいな……フローラルな感じ? でもちょっと特徴的な気がする! なんか気になっちゃうような?」

「柔軟剤かな? 詩帆ちゃんも気になる?」


 私は気になったことなかったけど、強い匂いなら柔軟剤変えてみてもいいかなと思って聞くと、詩帆ちゃんも少し考えながら言う。


「花みたいなのは、私もわかるかも……。わ、私は好き、だけど」

「んー……ならいいのかな」

「うん! いい匂いだから大丈夫!」


 よくわからないけど大丈夫らしい。お洗濯が一緒ならお母さんも同じ匂いするのかな? 詩帆ちゃんが好きっていうなら、変えなくてもいいかなって思うけど……。でもちょっと気になるから菜月とエマにも聞いてみよ。

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