41 鳳凰暦2020年4月18日 土曜日朝 小鬼ダンジョン前広場
朝8時からのダンジョン入りだと、他の人がいないというのはいい。今日も魔石は10個だ。放課後はおそらく、同じルートで誰かがゴブリンを倒した場合に、10個に届かなくなるのだろう。
小鬼ダンジョンの出口ゲートを出て、いつものように訓練場へ向かおうとすると、二人で立っている誰かが目に入った。その瞬間、その片割れが私――浦上姫乃に向けて手を振ってきた。
「おーい、浦上さーん、おっはよー」
設楽だった。よく見るともう一人は平坂だ。今まで、こんな時間に会ったことはなかったが、今日はいつもより早めにダンジョン入りをするのかもしれない。
「おはよう、設楽さん、それに平坂さん」
「おはよー、浦上さん。早いんだねー」
「そっちこそ」
「あはは、今日は、たまたま、かな」
「いつもは9時だよ。あ、今日も9時か。なんか、早く来ちゃったんだよね」
平坂が私の目をまっすぐに見つめてきた。
「……トムから聞いた? 今日のこと?」
「あ、ああ、聞いたわ。平坂さんも?」
「トムとは一緒にやってるから。でも、私は寮には入れないし、伝言をトムに頼んだんだよねー」
「何? 何の話?」
「今日のミーティングは、浦上さんにも来てもらうって話」
「あ、そーなんだー! 楽しみ~!」
底抜けに明るい設楽を見てから、平坂を見る。そうすると、昨日の外村とのやりとりが頭の中でぐるぐると回り出す。
「……じゃ、後で」
「あ、うん」
「またねー」
……平坂は外村を友達として考えているようにしか見えない。外村は、平坂はわかっていると言うが、本当にそうか? あんな醜いモノをぶつけられて、友達でいられる? 足を引っ張ろうとするのにそれが友達?
本当の意味で友達などいない私には、答えが出せそうになかった。そのまま気持ちがぐちゃぐちゃのまま訓練場で何度弓を引いても、私の気持ちが落ち着くことはなかった。




