40 鳳凰暦2020年4月18日 土曜日朝 小鬼ダンジョン前広場
昨日の放課後は臨時でダン禁となりました。一斉下校ですから、設楽というお邪魔虫はおりますけれど、彼とも一緒に帰り、一番近くで彼を観察できるのではないかと私――平坂桃花は考えました……しかし、そう甘くはありませんでした。彼は帰りのHRには姿を見せず、そのまま帰りも見かけませんでした。よく考えてみると彼こそ今回の噂や中傷におけるいじめの被害者であり、最大の関係者です。加害者側で指導を受ける者と一緒に残されても当然だと言えます。残念ですけれど。
今日は休日なので、さすがにそれはないでしょうと思いつつ、それでも早めに行動してみました。
今、8時15分で、小鬼ダン前の広場です。誰もいません。彼もいません。まるで台風接近の時の現地のアナウンサーのセリフみたいです。ちょっと悲しくなりました。
そんなことよりも……まさか、彼は、休日も開門と同時に全力疾走、などということは、さすがにそれはありませんよね……?
でも、こうやって毎日、彼の姿を探すことが、実は現実逃避だということに、私は自分でも気づいています。今日は、うまく現実逃避ができないくらい、少し、気が重いです。
ところが……。
「あれー、平坂さん、今日は早いねー!」
設楽がやってきました。早いのはあなたです。45分前集合なのですけれど?
「ちょっと、早く起きちゃってねー」
「あー、あるよねー、そういうこと」
いえ、ないです。自己コントロールはできる方だと自負しております。
底抜けに明るい設楽に救われるような、それでいて急所を刺されるような、そういう複雑な心境に、私は設楽に気づかれぬよう、そっとため息をこぼしました。




