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次なる段階

「まだっすか? 」 


 嵯峨特有の自虐的な笑みがこぼれる。画像通信でもないのに頭を下げる佐官を見てクリスも噴出すのを我慢するのが精一杯だった。


「嵯峨中佐。来たまえ。それと記者の方は…… 」 


「なんなら別室を用意して茶ぐらい出してやんなよ。わざわざ地球のアメリカからいらっしゃってるんだからさ 」 


 『アメリカ 』と言う言葉を強調して見せる嵯峨。そして隣に寄せられた四輪駆動車の後部座席に乗り込んですぐに腕組みをしながらクリスに目をやる。その緩んだ表情にクリスは呆然としていた。


「それじゃあ、君。記者の方を案内してくれ 」 


 苛立っている佐官と目が合った小柄な下士官がクリスの案内役に指定された。嵯峨を乗せた車が本部のビルへと向かう。義務感からか恐怖からか黙っている共和軍の伍長のあとに続いて歩くクリス。視線をシンのほうに向ければ、パイロットスーツ姿のシンが同じように基地警備兵に囲まれながら本部に向かって歩き出していた。


「地球……アメリカからとはずいぶん遠くからいらっしゃいましたね 」 


 皮肉の効いた言葉を言ったつもりだろうか、クリスは頬を引きつらせる伍長を見ながらそう思った。彼らの同盟軍であるアメリカの記者が敵である北兼軍閥の首魁と行動を共にしている。この伍長でなくても面白くは無いだろう。カービン銃を背負っている彼は時々不安そうな視線を基地の隣の検問所に向けている。今のところ難民も警備兵も動くようには見えない。だが、クリスは何度と無く同じような光景を目にしてきた経験から、その沈黙が日没まで持つものではないことはわかっていた。


 共和軍支持の右派民兵組織や北天人民軍が組織した東モスレム解放同盟。そして、北兼軍閥の息の入った王党派ゲリラ。彼らがこの混乱を利用しないほうがおかしい。嵯峨の余裕のある態度も、基地守備隊の将校たちの暗い表情も、彼らが次の状況をどう読んでいるかという証明になった。

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