第1話 これが始まり
さて、僕は学生の頃に統合失調症という病気の診断を受けている。だからってなにか特別な何かをしたわけでなく、ただ、診断を受けただけだ。
それは小学生のある頃の話だった。時代も1つ戻り平成の頃だ。
——本能寺の変は……。
今は社会の時間だ。
昨日の夜にお母さんとお父さんが大ケンカしていたせいでいつもよりかなり寝る時間が遅かった。それはこのまま離婚したらどうしようと思うレベルのケンカだった。
集団登校の時もずっとそのことを考えていて不安で不安で仕方なかった。
僕は家族みんな仲良くずっといられると思っていた。
社会の授業はいつも眠気が強い。特に歴史がそうだ。先生は日本の歴史の授業が楽しそうだ。この戦国時代の織田信長が討たれた本能寺の変の話を何度もする。
「秀吉が……」「この時光秀が……」
そこから派生して毎週日曜夜8時からの歴史ドラマの俳優や史実との関係性など小学生の僕らを置いてよく語っている。
「来年の歴史ドラマは秀吉が主人公だから見ごたえあるに決まっているから、来年君たちのクラスを持っていたら語……うぅん、失礼、で明智光秀がー」
よく聞く名字で混乱する。石田? 織田? 明智? スケートの選手にも3人ともいた気がする。
カクッとあからさまにが頭を低くすると気持ちいい眠気が来た。
僕は夢を見ている……のか? ちがう、ここは現実だ。
お母さんがお父さんに『もう出てって!!』と叫んでいる。お父さんはグッと右手を挙げて『敵は!!』と返していた。
意味がわからない。でも、お父さんが家を追い出されることはしていない。それだけはわかる。
「お父さん!!」
僕は駆け寄った。お父さん……? お父さんの服装がおかしい。それだけじゃない。腰には刀を刺していて相撲の行司が持っていそうなものをふりまわしている。
「本能寺の変を起こしたのは織田信長の影武者だ!! 影武者が謀反を起こした!! それに気づいた石田三成が駆けつけたが間に合わず悪者にすり替えられて家康が秀吉に命じて明治維新とかを提案した結果、本能寺の変がおきたんだ!!」
お父さんがそう叫んでいた。頭に何か重みを感じた。
「……お父さん……?」
お父さんはそこにはいなくて、目の前にいたの先生だ。そして、山崎の戦いという明智光秀と羽柴秀吉の軍勢の戦いの話になっている。チャイムがなった。
「ということでここから楽しい時代が始まる」
先生はそれだけ残して教室を出た。さっきのまるで戦国時代でお父さんが何か言ってたみたいのはなんだったんだろう?
無意識に僕は先生を追いかけた。
「先生……織田信長を殺したのは……」
「お、歴史の話がしたいのか?」
「影武者という可能性はないでしょうか?」
ポカンと先生はしている。ニヤリとすごく楽しそうな笑いをした。
「どうしてそう思うの?」
「さっき歴史の授業のとき、お父さんが武士みたいな格好をして教えてくれました」
先生は『放課後、大切な話をしよう』と言って職員室へむかっていった。
その後、理科の授業、給食に午後の授業が終わった。先生に呼び出されて進路教室という私立中学受験を目指す児童が相談に使う部屋に案内された。
「さて、大切な話だ」
「はい」
「社会の授業の後、先生に言ったことは真実?」
「本能寺の変が影武者の謀反から始まって……」
夢の内容を語った。先生は口を挟まない。
「そうか、その……影武者が謀反を企てたとかは考えたことがなかったな。では、その説が正しいと証明できる書物や証拠はあるのだろうか?」
「ないです! でも、僕はさっきお父さんから聞きました!」
「その状況を詳しく教えてくれないか?」
さっきのお母さんの叫びから最後まで話した。先生は何も言えない。
「何も言えないということは反論する必要ないほど真実で何を言っても屁理屈になる。そういう解釈でいいでしょうか?」
いま、僕はなんて言った? 理詰めのようなことを言った。
「そうだな、ものは考えようだ。1度、影武者の説を考えてみよう」
「はい!」
「ただし、テストは教えた通りに書いてくれ。本能寺の変を起こしたのは明智光秀だと」
「なぜです? 先生は影武者説を信じてくれたのでは?」
「先生というのは複雑なもので、思想と教育論は別なんだ」
これこそが始まりなのかもしれない。その後も僕は世間で言う夢の内容こそがこの世界の真実だと思った。
第2話 気づく




