僕は鬼畜じゃない
6話ぐらいの短い話です。どうぞよろしくお願いいたします。
僕は、教訓のあるタイプの怪談が嫌いだ。
超自然的なものを前提としてストーリーに組み込んでくるくせに、幽霊がいない世界での行動を改めさせてくるなんておかしな話だ。大体、愚か者を怖がらせて美談を作るなんて作者は横暴だとは思わないのだろうか。
というか、僕は、怪談が嫌いだ。整合性が合わないところを全部、幽霊だとか呪いのせいだとかって、馬鹿馬鹿しい。フィクションを一滴でもたらせば、その話からは現実味が失われる。ネタが毎日世の中から消費されていく中、もがき続けているミステリー作家を見習ってほしいものだ。
大体、幽霊なんているわけn……
「ねえ幸太郎。早く死体探しに行こうって言ってんじゃん!」
おいこら、まだ僕の紹介のターンだったろうが。押し入れの内側からふすまが叩かれ、少女の喚き声が響く。
こいつは藤原美月。一週間前にうちの押し入れから急に出てきたと思ったら、「僕はここに住むことにする」とか言って居候するクソガキだ。何度追い出してもどこからか部屋に入ってきて、押し入れを占拠する。今日は、北斗の拳をも想起させるような太い字で
「男人禁制」なんて書いて、僕が押し入れに近づくことすら許さない。
「幸太郎ー。ごはーん。」
押し入れからのそのそと出てきた少女の腹にすぐさま蹴りを入れる。穀潰し兼、ほら吹きを生かしておくほど、僕の家計に余裕はないのである。だが、それだけで幼気な少女をいきなり蹴るほど僕は鬼畜なわけでもない。少しふっ飛んだ体を追いかけてみると、けろっとした様子で文句を言ってきた。
「急に蹴るなっていってるだろ!まったく怪我でもしたらどうするんだ。」
せめて痛がるそぶりでもしてから言ってほしいものだ。
美月は、痛みを感じない|。というかダメージ自体がないのだろう。
本人曰く、誰にも見られていなければ壁を通り抜けることもできるらしい。
藤原美月は自称幽霊である|。




