第308話 「ほにゃぁっ!?」
「れ、蓮司……何してるの……!?」
「何って……後ろから早霧の肩に頭を乗せただけだけど……」
「それが何って言ってるの……!」
公園のベンチで。
俺の膝の上に座っている早霧が、何故か小声で俺に話しかけてきた。
何か身をよじって暴れようとしているけど、ぎゅってしろって言ったのは早霧だ。
だから俺は後ろから抱きしめながら、冷静に話を続ける。
「いつも勢いに負けてるけどさ、やっぱり早霧が可愛すぎるのが悪い」
「み゛っ゛!?」
理由は分からないが早霧が小声になったので俺も声を小さくする。
ベンチの外側、早霧の右肩に顎を乗せているので、左にいる厚樹少年とアイシャには聞こえない位置だ。
なんか早霧の耳に囁くようになっているけれど、それはもう今さらなので続ける事にする。
「アイシャと同じように、早霧も甘えたいだけだもんな?」
「そ、それは……そう、だけどぉ……!」
「うん。やっぱり早霧は世界一可愛いな」
「っぅ~~っ!?」
実感する。
この子供っぽさが早霧の良さだ。
寝起きのえっちじゃないキスだって、麦茶を飲ませてキスをしてきたのだって、全部早霧が俺に甘えたいからなんだ。
だから俺は全力で、早霧を甘やかす事にする。
だってそうすれば、早霧が笑顔になってくれるからだ。
「オネエチャン、どうしたの?」
「あ、アイシャちゃん!? う、ううん何でもないよ!」
「オネエチャンもオニイチャンにギューしてもらえて嬉しー?」
「う、うん……嬉しい……よぉ……?」
俺が頭を乗せている反対側からアイシャの声がする。
うんうん。
早霧は防御力が弱いので、攻められると恥ずかしがって中々素直にならないけど、やっぱり嬉しいんだと分かったのでアイシャに感謝だ。
「俺も嬉しいよ」
「み゛ゃ゛っ゛!?」
ちょうど早霧がアイシャの方を向いているので、モロに耳へ囁く形になったけど。
そう言えば早霧はくすぐりに死ぬほど弱かったっけか。
「早霧が俺に頼って、甘えてくれるのが本当に嬉しい」
「う、うぅぅ……!」
「もっと甘えてくれても良いんだぞ?」
「ほにゃぁっ!?」
ちょうどいい角度だったので。
俺の頭を早霧の顔に預けるように、傾けてみた。
白くサラサラの髪越しに触れ合う、熱っぽい頬。
また熱中症にならないか心配だ。
「早霧に何かあったら俺は耐えられないからさ」
「何かある……! い、今! 何かあるけどぉ……!?」
ジタバタと早霧がもがく。
でもこれも照れ隠しだと分かっているので後ろからのハグは続ける。
そう言えばシチュエーションは違うけれど、子供の時に初めてほっぺたにキスをしたのも後ろから抱きしめてたっけか……?
「…………」
「え、えっ? 何で、急に、黙ったの……?」
「子供の時のキスをさ、思い出してた」
「何で今っ!?」
「え? だって、今日、お祭りの日だし……」
「そ、それはそうだけどぉ……!?」
こんな偶然あるんだと思った。
今が高校二年生だから、約六年前の夏休み。
ずぶ濡れで雨宿りした神社の中で、お互いの身体を温めながらした初々しいキス。
当時小学五年生だった俺達が、今は小学五年生の厚樹少年達と仲良くなっている。
本当に縁結びの神様がいるのかもしれないと思った。
「はぁ……好きだぁ……」
「ぅぁぅぁぅぁぁぁぅ……!」
そして今までの思い出が全部フラッシュバックする。
これがエモいというものなのだろうか。
早霧の事がもっと愛おしくなった俺は、もっと強く、ぎゅっと早霧を後ろから抱きしめる。
その間早霧は俺の腕の中で、身をよじりながら、もがきにもがき続けていた。




