第309話 「ごろにゃ~ん!」
早霧を甘やかしすぎた。
愛しさが爆発した俺にも原因があるけれど、今となっては反省している。
高校生になって薄れかけていた早霧の本質、つまり寂しがり屋と甘えん坊。
そんな早霧を、俺が後ろから抱きしめて甘い言葉を囁きまくっていれば――。
「ごろにゃ~ん!」
――早霧が、猫になった。
正確には猫の物真似をして、ベンチの上に座る俺に膝枕をされている。
俺の膝やふとももに綺麗な白髪を擦り付けながら、ベンチの上で身を丸めて時々猫パンチで引っかいてきていた。
成長途中のホワイトタイガーを撫でれば、同じ気持ちを味わえるかもしれない。
「にゃん、にゃんっ!」
「おぉ、よしよし……」
「にゃ~ん!」
どうしよう、これ。
幼児退行とは違った意味で対処の使用が無かった。
いやこれならまだ幼児退行の方が人間の言葉が通じるのでマシかもしれない。
そもそも俺は大前提で早霧に甘々なので、そんな早霧が俺に甘えてきたらどうしようもなくなるんだ。
完全に、詰んでしまった。
「アツキ! ニャーニャー!」
「うんうん。可愛いよアイシャ」
「ニャーン!」
隣を見れば、早霧の真似をしたアイシャも厚樹少年の膝枕を堪能しながら頭を撫でられていた。
二人とも、俺達と比べると幼いので微笑ましく思う。
それにしても厚樹少年、慣れ過ぎじゃないか……?
「蓮司お兄さん……この後、どうすれば良いんでしょう?」
「耐えだ」
「た、耐え……? えっ、耐えるだけですか……!?」
「あぁ……」
訂正、慣れてなかった。
ただ自分の出来る事を精一杯やってるだけだった。
男二人、隣り合って座ったベンチで頷き合う。
その下では大きな金色の猫と凄く大きな白猫がゴロゴロしていた。
「ところで厚樹少年、猫は好きか?」
「えっ? ね、猫ですか……? アイシャが好きなので、僕も好きですけど……」
「なら良かった……」
「えっ? 何で今それを聞いたんです?」
早霧が用意してくれたプレゼント、二人とも喜んでくれそうで良かった。
決して俺達の膝の上で猫になっている美少女疑似姉妹の事を聞いたんじゃないぞ?
「ごろごろごろごろ……」
「おお、よしよし……」
俺の膝の上で喉をごろごろ鳴らす早霧を菩薩のような気持ちで撫でる。
喉を鳴らすのが下手くそなせいで普通に口で「ごろごろごろごろ……」と喋っていたのは聞かなかった事にしよう。
「早霧は可愛いなぁ……」
「にゃんにゃんにゃ~ん!」
紆余曲折あったけれど早霧が上機嫌だし、アイシャも早霧の真似をして厚樹少年に甘えているのでオールオッケーだ。
「に、兄さん……?」
「お、大人の恋! 大人の恋よ! あ、アタシ達にはまだ早いわ!?」
「で、でも……あっくんとアッちゃんもやってるよぉ……!?」
また、訂正する。
何もオッケーじゃなかった。
菩薩のような笑顔で早霧から顔を上げると、そこには公園に入ってきたばかりの、太一真里菜美玖という幸せ三角関係小学生トリオが。
全員顔を真っ赤にしながら、俺達を見つめていたんだ。




