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次期会長

放課後……僕達はいつものように生徒会室に会議をしていた。


「さて皆さん、今日の議題は次期生徒会長の事です」


「あぁ~もうそんな時期なんだねぇ~」


とチャスが呟くと他の皆も同じような反応をしていた。


「そうですね、そろそろ会長の任期満了が近いですし、次期生徒会長の話が出てきてもおかしくないです」


中等部では生徒会長は中等部3年が終わるまでが任期だが、高等部の場合は夏に入る前にある程度候補を絞っておく。最近は色々と問題が立て続けに起きていたので全然時間の感覚が無かった。


「そっか……次誰なんだろ?」


どうせ僕には関係ないことだろうと少し気を抜いて聞こうと思ったのだがフローレンスの口から驚愕の言葉が発せられた。


「今日は次期生徒会長をここで任命したいと思います!!」


「早っ!? というか急すぎなーー」


「次期生徒会長はレイ・ハーストンにします!!」


「「異議なし!!」


フローレンスが元気よく言うと、他の面々も声を合わせてそれに賛同した。


「おい待てぇいーー!!」


僕は思わず立ち上がり大声で叫んだ。


(いくら何でも話が早すぎない!? というか僕以外の面々が全員知っているみたいなんだけど!?)


その証拠に僕がこんなに驚いているのにアルを始めとしてだれも驚いていない。

……チャスやアルに至ってはニヤニヤしている。


(この2人絶対何か知ってるな……!! あとで覚えておけよ……!!)


「どうしたのかしらレイ?」


最近、結構な頻度で見ているフローレンスのきょとん顔。


「いやいやそんなきょとんとした表情しないでよ!?

その表情したいの僕なんだから!!」


「何か間違いでも?」


「間違いというか疑問しかないって!!

てかさ僕以外の面々が全員知っている感じなのはなんでさ!!」


他のみんなの表情を見る感じだと何か僕以外で話をして決めていたに違いない。


(前々から何かみんなで話しているなぁと思っていたのだがまさかこのことか?)


「じゃあそれは私が説明しましょう」


「……お願いします」


僕は少し嫌な予感をしながらフローレンスの話を聞くことにした。

前まではフローレンスの説明は理路整然としていて説得力があったのだが現在のややポンコツの面が出てくる彼女だと不安でしかない。


「まずレイには中等部で生徒会長を務めた実績があります」


「あぁ、あのフローレンスにいきなり投げられた会長職ね。やりましたよ、そりゃ」


今でも忘れないいきなりフローレンスからかなり強引に引き継がされた中等部の会長職。ラウラや他の優秀な役員のおかげで何とか乗り切ったがもう二度と会長職をやりたくないと思った出来事である。


(……それをまた僕にやらせるつもりか、彼女は)


「それを最後までやり切った実績に加えて、高等部に上がっても生徒会役員を務めた事が良い感じに働いていますね、うんうん、嬉しいです」


と1人で納得して頷くフローレンス。


「フローレンスは何で1人で言って頷いているのかな?

僕は全く理解出来てないからね?」


「言われてみれば坊ちゃんって長い間生徒会いるよな……中等部からだろ?」


「うん、フローレンスに誘われてなのと成績が欲しいからね」


「うわ……生徒会やっている理由がしょうもな」


「うるさい、問題児であまり成績がよくない僕はこうでもしないと無事に卒業できるか心配なんだよ」


この生徒会の面々は僕を除くメンバーはみんな成績が良い。

フローレンスやラウラは勿論だが、アルやチャスも意外と成績が良いのが少しイラっとくる。


「お兄様は文句を言いながらも生徒会役員を中等部、高等部合わせて5年務めた実績は紛れもない事実です。妹として誇らしいです」


「じゃあラウラやろーー」


「あっ、私まだ4年なので」


と手をこちらに出してきて“ノー”の意思を示すラウラ。


「逃げたね……はぁ……ところでフローレンスはさっき“まず”って言っていたけど他にもあるの?」


「よく聞いてくれましたね!!」


僕がその様に言うと彼女は目をキラキラさせてきた。

……この瞬間、僕は地雷を踏んだことを後悔した。


「あぁ……やっちゃった……」


「次にですね、いつも何事にも頑張る姿です!! 自分は不得意な分野でも一切手を抜かないで全力で行う姿が会長に相応しいと思うのです!! 会長は常に生徒の模範にならないといけないので大切です!!」


「あ、うん……」


「それにそれに人を身分や肩書で差別しないところもポイント高めです!! 会長は常に平等で人に接しないといけないのでレイの心がけはとても大切なのです!!」


「ふ、フローレンス?」


彼女のマシンガントークに推され気味の僕。

フローレンスは感情が高ぶると早口になる。


「それにですね、それにですね!! まだあるんですよ!!」


「あ、あれ……途中から“レイを会長に推す”から“レイの良いところを上げる”に変わってないかね、これ」


「あっ、チャスも思ったか? 俺もそう思い始めたんだよな~。

ーーまぁ面白いからいいけどな!!」


「それね!! 激しく同意するぜい!!」


「「いえぃーー!!」


と息ぴったりにハイタッチをする2人。


「というか2人見てないでフローレンスを止めてよ……」


このままだと僕がだけが恥ずかしい思いをしてしまうのでどうにかして彼女を止めたい。

……いや止めないといけない。


「真面目に仕事をしている際のキリッとした表情も!! 困った際にあたふたと慌てている顔も!! 書類を見て眠たそうにしている顔も全てがいいのです!!」


「……顔って会長に相応しいのに関係なくないかな?」


「--おほん、会長。そろそろ真面目に話をしませんか?」


暴走気味のフローレンスを生徒会唯一の良心であるラウラが止めた。


(……ラウラ以外、まともな人がいないのがこの生徒会なんだけど、みんな能力は高いから厄介なんだよね……無論僕も含めてだけどさ)


「あっ、ラウラ……助かる……」


「別にお兄様のためではないです。

ーーただ早く帰りたいからです」


「あっ……はい……ですよね……」


ラウラに結構ストレートに言われて落ち込む僕。

最近、彼女の僕に対する態度がどんどん酷くなっていく。

……お兄様少し泣きそうです。


「そうですか……もう少しレイの良いところを語りたかったのですが……まぁいいとしましょう

ーーあっ、レイはあとで付き合ってくださいね」


「えっ、僕は引き続きなの……まぁいいや……」


「それにレイ、会長職になるとケープがもらえるんですよ!!」


「ケープ……? そんなのあったけ?」


「えぇ、ありましたよ。フローレンスさんの前の会長さんは着ていました。一応この学校の生徒会長は専用のケープを学園側から授与される決まりとなっています」


「そうなんですか……あれ、でもフローレンスは付けてないよね?」


僕の記憶上、フローレンスがケープを着ているところを見た事がない。


「私にとっては邪魔だったので家にあります、今でも新品同然です」


笑顔でそう言うフローレンス。

新品同然ってことは殆ど使わなかったという事だろう。


「……自分にとって邪魔だったものを普通さ人に勧めるかな?」


「私にとっては邪魔だったとしてもレイにとっては必要な物かもしれません。

ーーそれに貴方カッコいいの好きですよね? だったら会長職に就くべきです!!」


「ちょっと待ってくださいね……たしかケープの絵がどこかに……

ーーあっ、ありました。後輩クン、これです」


とアリーヌ先輩にが棚から探してきた絵を見ると、そこには黒い布に金色のファーと金色の鎖がついており確かにカッコいいものだ。


「カッコいいですね……確かに着てみたいかもですね」


「なら会長になりましょう!!」


「はぁ……理論が分からない……でも」


「でも?」


「会長職やるよ、僕」


「ケープを着たいからですか?」


ポンコツ気味のフローレンス。

というかさっきから若干だが“ポンコツ化”してきているのに他の皆は気づいていないのだろうか。


「んな訳ないでしょフローレンス……ただ頑張ってみようと思っただけ」


「ほう、さっきまで“やりたくない”って言っていたのにどんな心境の変化だ坊ちゃん?」


僕の発言に対して口角を上げたアルが尋ねてきた。


「前にさ、“どうやったらフローレンスの隣に相応しくなるかな”って考えた事があってさ、最近色々と僕なりに頑張っていたんだよ。その中でも同じ役職をやって上手くやれれば少しは近づけるかなってさ」


一応、完璧超人のフローレンスに比べて僕はいたって平々凡々というか体力以外は平均より下なのでどうやったら彼女の隣に相応しくなれるか分からない。だったら彼女が行った事を僕もやってみようと思った。

……まぁ上手くやれるか分からないけど。


「レイ……」


「ほうほう……彼女さんの事を愛してますなぁ……“新”会長」


チャスはニヤニヤしながらこっちを見てくる。他のみんなも似たような感じの表情を浮かべながら見てくるが僕は呆れながらもいつもの苦笑いを浮かべた。


「まぁ僕なりに頑張ってみるさ

ーーってことで会長、副会長レイ・ハーストン会長就任の勧めお受けします」


「はい……頑張ってくださいねレイ」


と僕は次期生徒会長になることになった。




生徒会の人事は後日にして、その日は解散となった。

その日の帰り道……


「ねぇレイ」


「何かなフローレンス?」


「頑張ってくださいね生徒会長、私応援してますから」


「うん、ありがとう。僕なりに頑張ってみる」


隣の愛しい彼女のためにこれから頑張っていこうと思う僕であった。

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