私なりのけじめ
私の長年の思いが叶い幼馴染の男子、レイ・ハーストンと付き合うことになった。
彼、レイ・ハーストンは私を始めとして生徒会の女子生徒が結構アピールしているのに全くと言っても好意に気づかず、寧ろ嫌われているのでは? と明後日の方向に考えてしまうぐらいの鈍感である。
(そんな彼が私に告白してくれるなんて……まるで夢のようです……)
まさかそのレイから私が告白されるなんて思わず、その言葉を聞いた瞬間長年の思いが叶った嬉しさで泣いてしまった。彼はどういう言葉で告白しようかと考えていたらしいが私にとっては彼が自分の口で言う言葉なら何でも受け入れる準備が出来ていたというのに、レイは変な所で気を遣う。
(もう、貴方の言葉なら私は全てを受け入れるのに……でも彼が自分の意思で告白の言葉を言おうとしてくれたのは嬉しいですね……あの時の真面目な表情は今まででカッコよかったですよ)
彼と付き合えるようになって私は嬉しい。
だけど私には解決しないといけない問題がある。
(レイと付き合うようになったのですから彼女との問題は解決しないといけません。
レイが勇気を振り絞ったんですから、私も頑張らないといけませんよね……彼のお姉さんとして彼女として恥じないように)
と私は自分の中で彼女と会って決心した。
そして彼と付き合うようになってからの初めての週末……
「ーーいらっしゃいフローレンス」
「はい、おじゃまします」
私は彼氏のレイ・ハーストンの屋敷に足を運んだ。
今日、この屋敷に来たのは勿論彼氏であるレイに会いたいのもあるが、今日の一番の目的は違う。
「いらっしゃいませフローレンスさん」
とレイの後ろから彼の妹であるラウラ・ハーストンが私に向かって挨拶してきた。
「ラウラさん、こんにちわ」
私も彼女に挨拶を返す。
「レイ、いきなりでごめんなさいなのだけど……」
「ん? どうしたの?」
「少しラウラさんと話をしたいのだけど大丈夫かしら?」
そうなのである。
彼女と話がしたくて今日、ここに来た。
「ラウラと……?」
レイは不思議そうに首をかしげたが、ラウラさんは私の言葉を聞いて何かを察したのは前に出てきた。
「お兄様、少しフローレンスさんをお借りしますね」
「うん、分かった。僕は部屋で本読んでるから話が終わった呼んで」
「はい、分かりました」
とレイは自分の部屋に戻っていった。
「ねぇラウラさん場所を変えませんか?」
「構いませんよ」
「ここで大丈夫でしょうね」
私達が来たのは彼の屋敷の中庭にある小さい談笑スペースだ。
ここなら誰にも聞かれないと思ったからだ。
「えぇそうですね。
ーーところでフローレンスさん、私と話したい事とは何でしょうか?」
「では本題に入りましょうか」
と言うと私は一度深呼吸をした。
そして……
「私はレイと付き合っています」
「……」
ラウラさんは黙って私の言葉に耳を傾ける。
私が彼女と話したい事とは私の彼氏でもあり、彼女の兄でもあるレイ・ハーストンの事だ。
「貴方がレイに兄以上の感情を抱いているのは分かっていました。
それでも私は自分の気持ちに嘘は付けなかったです」
ラウラさんはレイに兄以上に感情を抱いているのは目に見えて分かる。
生徒会の他の女子生徒も同じような感情を抱いているけど、その中でも彼女はレイに私と同じぐらいの期間恋をしている。そんな彼女の気持ちを分かっていて私は彼と付き合うことにした。
「本当にごめんなさい。
許してもらえるとは思いませんが、ただ貴方にだけはこうして言わないといけない気がして……」
私は頭を下げた。
「--12年前」
「えっ?」
私はラウラさんがが突然口に出した言葉の真意が分からず顔を上げると彼女は昔を懐かしむような表情を浮かべていた。
「12年前、自分の両親が死んだことによって私はこの屋敷に引き取られラウラ・ハーストンと名乗るようになりました」
「えぇ、確かそうでしたね」
ラウラさんのご両親が事故で亡くなったことにより天涯孤独になった彼女を親戚のよしみで引き取ったのがレイのお父さんだ。あの頃は義務感で引き取ったらしいが今では溺愛している。
「あの時の私は両親を無くしたショックで落ち込んでいて誰にも心を開きませんでした。
毎日部屋に閉じこもって誰かに話しかけられても無視をしました」
私がラウラさんと会った頃はまさに誰にも心を閉ざしていた時だった。
当時の私はそれなりに世渡り上手だったが、彼女にいくら話しかけても無視された。
「……」
そして、ふと彼女は表情を緩めた。
「そんな中、お兄様は私を気遣ってかよく話しかけてくれたり、お菓子を作ってくれました。
まぁお父様に言われたからというのがあるかもしれませんが、それでもお兄様は私の人生に一筋の光を差し込んでくれたんです」
「……」
「あの時のお兄様の行動が無かったら今の私、“ラウラ・ハーストン”は絶対存在しないで今も部屋から出る事が出来てなかったと断言できます」
「ラウラさん……」
「私はお兄様に沢山の事を教えてもらいました。
ーー人に優しくすることを
ーー人を肩書で差別しないことを
ーー努力し続ける事を
他にも沢山の事を教えてもらいました。
そんな方に恋心を抱かないわけがないですよね?」
「……」
私は彼女の口から発せられる真っ直ぐな気持ちに私は何も言えなくなる。レイは自分の事を過少評価しているが彼は色々な人物にかなりの影響を与えているのに気づいてない。
「正直、お兄様がフローレンスさんをを選んだと分かった瞬間は貴方がとても憎かったです。親しかった貴方だからこそ正直許せなかったです」
「私は……」
何か言おうと口を開いた瞬間、ラウラさんは何かを吹っ切れたような表情になった。
「でも私はお兄様が幸せならいいんです。
お兄様がご自身を理解してくださる人がいて幸せなら私はそれで幸せなんです」
「ラウラさん……」
「フローレンスさんはお兄様を理解してくださる方だと私は思います。
だって貴方はお兄様が魔法を使えないって知っていてもいつも通り接していました」
「だって私はレイにはそれ以上に良いところがあることを知っていますから……」
それに魔法を使えないというだけで彼の存在意義は無くならない。
それどころか私や生徒会のみんなには彼が必要だ。
「だから私はそんな貴方にだからお兄様を任せたいのです
ーー誰よりもお兄様を理解してくれるフローレンスさんに」
「ラウラさん……」
彼女の真っ直ぐな思いを受けて私は思わず少し泣きそうになった。
こんな出来た妹に好かれるレイは幸せ者なんだろうと思う。
「ってなんでフローレンスさんが泣きそうなんですか……本来なら私が泣きたいんですけど……」
というラウラさんの目元から少し涙がこぼれている。
「ご、ごめんなさい……ラウラさんの真っ直ぐな気持ちが……」
「もう……しょうがないですね……」
というとラウラさんは私を抱きしめてきた。
確かに本来ならラウラさんが泣きたいはずだろう。
それなのに私が泣いて、それを宥めるラウラさんという奇妙な光景が出来上がっている。
「フローレンスさん、お兄様をお願いしますね」
「うん……えぇ……分かりました」
ラウラさんに慰めてもらいようやく涙が引いた頃……
「ごめんなさいラウラさん……」
「いいですよ、よく私もお兄様に同じことをしてきましたからね」
「同じこと……?」
「え、えぇ……そうですけど……」
「ズルいです!!」
「へっ?」
「レイに抱きしめてもらって慰めてもらうなんてズルいです!!」
「え、えぇ……」
ラウラさんが呆れた表情を浮かべていた。
だがそれ以上に私には重要な事がある。
「私だって抱きしめて慰めてもらいたいのにーー!!」
レイに抱きしめて慰めてもらうなんて私が個人的に“やってもらいたい事ランキング”の上位にあるイベントなのにラウラさんが既にやってもらっていたことに私は驚きを隠せない。
(おのれ……ラウラさん……一歩先を行かれましたか……!!)
「こ、これが前にお兄様がボソッと言っていた“ポンコツ化”という状態ですか……精神年齢大分下がってますね……」
「ズルい!! ズルい!! ズルい!!」
「私が悪いんですか……これ?
ーーというか私だってフローレンスさんがズルいって言いたいです!!
私だってお兄様とデートしたいですよ!!」
「でも私も慰めてもらいたいです!!
それぐらいいいじゃないですか!!」
「だったら私だってお兄様とデートしたっていいですよね?」
「それは駄目です!!
だって私の彼氏なんですから!!」
「だったら私は妹です!!
妹が兄と外に遊びに行くのは普通です!!」
「さっき“デート”ってご自身で言ってましたよね!?
そこだけ都合よく言葉を言い換えないでください!!」
「ーーあっ、2人ともここにいたんだ」
と私達が振り向くとそこには3人分のお茶とお菓子を乗せたお盆を持っているレイが立っていた。
多分話が長くなっていたのを心配になって見に来たのだろう。
「レイ!!」
「お兄様!!」
「え、えっ……な、何かな?」
私とラウラさんに詰め寄られたレイはたじろぐ。
「私の方が正しいですよね!?」
「何を言っているんですか私の方が正しいです!!」
「ごめん……話の流れが全然読めないんだけど……」
「「理解してください!!」」
「理不尽すぎる!?」





