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【完結】スマホを持たない二人は電話ボックスで出逢った -グラハム・ベルの功罪-  作者: ネームレス


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第24話 6月9日 火曜日⑧

 「拓海くん。これ見て」

 

 「なんですか?」

 

 秋山さんが画面を上にスクロールさせると、どこかの誰かが運営している「このラーメンがヤバい。(このヤバ)」というブログのタイトルが見えた。

 

 「このヤバ、よ。拓海くん知らない?」

 

 僕は知らなけれど、そこそこ有名なグルメブロガーが書いてるものらしいことはわかった。

 僕も、まあまあネットには詳しいけれどグルメ系はちょっと専門外だ。

 「このヤバ」って、すでに省略されている部分もタイトルの一部なんだ。

 読者数がスゴイことになっていた。

 

 最近は「YouTuber」やSNS系の「インフルエンサー」の影響力もすごいけどブログの影響力もいまだにすごいみたいだ。

 「このヤバ」には、ちょうどこの店、「ラーメン大納言」のことが書かれていた。

 

 それは店のいちばん人気のメニューの味噌バターチャーシュー麺についての記事で総合評価もある。

 星が三つあってその中のふたつが黄色、三っつめは半分が黄色で半分が灰色。

 二・五点って感じかな?

 

 つまり僕がアルバイトをしている「ラーメン大納言」の店全体の評価は星二・五ってことになる。

 なかなか高得点のラーメン店ということだろう。

 

 「この人いつ大納言(うち)きたんだろうね?」

 

 「ですね。でもS町は今、化石関連の観光客が多いですから」

 

 「ふつうの客に混ざってこんなことやってるのよね?」

 

 秋山さんは指でスマホの画面をスクロールさせてブログの記事を上下にいったりきたりしている。

 

 「覆面調査員みたいなブロガーですね?」

 

 僕の声は僕のうしろで野菜を切っている大将に聞こえたかもしれない。

 まな板の上でトントンと鳴っていた音が急に止まった。

 

 「覆面調査員ってあのミシュランみたいな?」

 

 秋山さんはそう声を上げたあと、小さく「え」か「お」のどちらかわからない言葉をもらした。

 

 「ミシュランだぁ。バカか。()の光より油のテカリよ。町の中華なめんなってんだ」

 

 大将にもやっぱり僕らの会話が届いてたみたいだ。

 しかも大将もこのブログのこと知ってたのか? 秋山さんがスマホで教えたのかもしれない? まあ、いつもと違う客層がきてる時点で気づいたかもしれないし。

 

 今、大納言のテレビは相撲中継を一度中断させて入る十分間ニュースになった。

 大将はそんなニュースなんてまったく気にせず、また、まな板の上で長ネギを切りはじめた。


 ――大手ショッピングサイトで個人情報が流出したとして、現在緊急メンテナンスをおこなってる模様です。流出したとされる個人情報の数は二十万件以上にのぼり――。


 でも流出したものは二度と止められない。


 「あ、うちもここ使ってる。情報漏れたかも。ヤバす」


 さっきの女子三人組のうちのひとりがテレビを見ながら言った。

 けれど事の重大さをまったく理解していないようだった。

 なぜならその会話はそこで終わってしまい三人組の中でもいちばん背の高い娘がベージュの長財布を出して会計の相談をはじめたからだ。  

 すでにみんなテレビから視線を逸らしていた。 


 個人情報漏洩の危険性をあまりに軽く見すぎだろう。

 でも、それを学校では重大なことだと教えてくれない。

 話題にあがったとしてもまるまる一、二時間、の授業を使って勉強するなんてことはない。

 

 「使えるポンイントカードがあったら全部使っちゃおう」

 

 「泥棒一族が自分で警察行くわけなんてないんだし」

 

 「だよね~」

 

 秋山さんはルパンと義賊の話をしている女子たちの中でいちばん背が高い娘が持っているベージュの財布をチラチラと見ている。

 敏感に反応しているのはその財布の端で揺れている「L」というアルファベットのロゴのキーホルダーだ。

 秋山さんは声をひそめた。

 

 「あれって。私がつぎに応援しようとしてるLude(ルード)ってアイドルグループのロゴなのよ」

 

 ルード? へーそういうことか。

 でも、僕と同じくらいの女子ならネクストブレイク(つぎ)のアイドルには詳しいんじゃないかな?

 

 「デビュー前なのに全国展開のドラッグストアとももうタイアップしてるんだよね」

 

 僕は秋山さんと話しながらも食器洗いを再開した。

 泡立ったスポンジでコップの縁を念入りに洗っていく。

 あの娘もそういうアイドルに興味があるんだろうか? ああ、このコップを洗うのも二回目だった。

 僕は手の甲で水を出しコップをすすいだ。


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